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ヘルスケア・医療で続く個人データ問題 Googleの「Project Nightingale」

ヘルスケア分野でデータ問題続々

 GAFAのような巨大テクノロジー企業が個人データを利用することへの不信感はますます高まっている。Googleは11月はじめ、YouTubeの子供向けターゲット広告での個人情報利用を巡って問われた「COPPA」(児童オンラインプライバシー法)違反で、1億7000万ドルの制裁金を支払うことになったばかりだ。そして、焦点はヘルスケア分野に移ってきている。

 Googleは昨年、Geisinger HealthのCEOで医療業界の著名人であるDavid Feinberg氏をヘルスケア部門Google Healthのトップに迎え、この分野での動きを活発化させている。つい最近も、フィットネス向けスマートデバイスのFitbitを21億ドルで買収すると発表した。

 Google Healthは、AIを活用して医療、ケアを改善する目標を掲げており、Feinberg氏は検索サービスからマップ、Android OS、AIなど、Google全体にまたがるヘルスケアのコーディネートを担当しているという。だが、その展開の過程では“きしみ”が出ているようだ。

 囲碁AI「AlphaGo」で有名なAlphabetのAI開発子会社DeepMindのヘルスケア部門は昨年11月、再編でGoogle Healthに吸収されたが、その際、運用していた腎臓病患者向けアプリ「Stream」のデータ移行が物議を醸した。

 アプリは「NHS」(英国民保健サービス)とDeepMindが共同で運用していたが、開始の際に説明した「患者データは決してGoogleアカウントや製品、サービスにリンクしない」という約束を破るものだと利用者が反発したのだ。

 また米国では今年6月、患者データの扱いを巡って集団訴訟も起きている。Googleとシカゴ大学メディカルセンターが、数十万人の患者の記録を共有したことが連邦プライバシー法に違反するとして訴えられた。

 原告側は、元データの日付を削除せずに共有したため匿名化が不十分で、いわゆる“名寄せ”などで個人を特定できる状態になっていたと主張している。これに対しGoogleと病院はHIPAAのガイドラインに準拠していると反論。さらに病院側は11月上旬、原告が金銭的損害を受けたものではないとして、却下するよう申し立てている。

 Ascensionの問題は、まさにこうした中で起こった。Wall Street Journalは続報として、米保健福祉省公民権局が調査を開始したと伝えている。