ヘルスケア・医療で続く個人データ問題 Googleの「Project Nightingale」

 Googleが数千万の米国人の個人健康データを集めていると、Wall Street Journalが報じた。次の巨大市場として期待を集めている医療・ヘルスケア分野の取り組みだが、その個人データの扱いに問題があるというものだ。Googleは法的な問題はないと主張しているが、巨大データ企業への不信は根強い。同時に先端医療の課題も見えてくる。

個人の健康状態や病歴にアクセス

 Wall Street Journalの11月11日の第一報によると、Googleは昨年末、医療サービス大手のAscensionと契約して、数千万人分のヘルスケア情報をクラウドに保管。Googleの関係者がアクセスできるようなっているという。Ascensionはキリスト教系の非営利企業で、米国内で150の病院と50超の高齢者施設を含む約2600の施設を運営している。

 これは「Project Nightingale」と呼ばれる“秘密”のプロジェクトに基づくもので、Wall Street Journalが入手した内部文書によると、データには個人の名前と生年月日に加え、健康状態、検査結果、医師の診断、入院記録などが含まれている。また関係者によると、データにアクセス可能なGoogle関係者は約150人で、このことは、患者はもとより、Ascensionの医師や看護師にも知らされていなかったという。

 GoogleとAscensionは同日、それぞれ記事を追う格好で提携を発表。Google Cloud Platformを利用したAscensionのインフラ近代化、G Suiteツールの利用によるコミュニケーション強化、医療・ヘルスケアでの人工知能/機械学習アプリケーションの研究、で協力すると述べている。

 そして、データの管理では、「HIPAA」(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)を順守しており、法的な問題はないと説明した。データはAscensionが管理し、Googleは「開発に協力する」という立場だ。

 Google Cloud産業製品・ソリューション・プレジデントのTariq Shaukat氏はブログで「データの管理はヘルスケア業界の標準に従って厳格に行われており、目的外の利用も、Googleのコンシューマーデータと組み合わせることもできない」と強調。また「Nightingale」という名称についても、積極的な臨床展開でない初期のテストであるためで、“極秘”プロジェクトではないと説明した。

 メディアにコメントを求められた専門家は、いずれも「違法とまでは言えない」と解説している。だが、それでも非難の声はやまない。