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NECがデジタル教材プラットフォームとChromebookを発表、「文教向け端末シェア4割を目指す」

 日本電気株式会社(以下、NEC)は5日、教育向けクラウドプラットフォームとして、「Open Platform for Education」を2020年4月から提供すると発表した。学校でのデジタル教科書利用が2020年度から可能になることから、離島などでも利用できる、クラウドを活用した教材配信基盤を提供するという。

 具体的には、教育系出版社などの学習向けコンテンツ事業者、自治体、学校、塾、家庭をつなぐプラットフォームと位置付けており、教材などの学習者向けコンテンツと、教員向けの授業支援ツールを用意する。

 また新たに、文教向け端末「NEC Chromebook Y1」も販売開始する。「当社は文教向け端末市場で4割のシェアを持っている。プラットフォームから端末までトータルで提供できる強みを生かし、デジタル教科書の時代でも端末シェア4割を目指す」(NEC 第一官公ソリューション事業部 小中等・教育産業マーケット担当 部長の田端太嗣氏)方針だ。

NEC 第一官公ソリューション事業部 小中等・教育産業マーケット担当 部長の田端太嗣氏

 NECではPC-98の時代から、小学校、中学校、高校などの文教マーケットでの事業経験と、現在では4割と端末分野で高いシェアを持っている(同社調べ)ことを生かし、全国どこからでも利用できる教育向けクラウドプラットフォームビジネスを進める。

 将来的には、教育向けコンテンツ事業者、販売会社、新たに教育事業に参入するEdTech企業、学校や地域、さらには家庭、塾などとも連携を目指す考えを示した。

NEC教育プラットフォームの特徴

 Open Platform for Educationを中心とした、NECの教育市場向けソリューションの特徴は次の4点となる。

NECの教育市場向けソリューションの特徴
小中高向け教育コンテンツの提供

 教科書は専門販売事業者を通じて販売されることから、Open Platform for Educationでは、教科書販売で実績がある株式会社日教販と協業し、小学校、中学校、高校向け教育コンテンツを提供する。さらに、教育系出版社、プラットフォーム各社との連携を協議中で、辞書、プログラミング授業、英語学習、各種ドリルなど、幅広いニーズに対応したコンテンツを提供する。

株式会社日教販との協業による幅広いコンテンツ提供
教育ダッシュボードとSSO機能を提供

 教育現場では、さまざまなコンテンツを利用するたびにログイン作業があると作業が煩雑となることから、Open Platform for Educationでは、NECの持つ認証技術を活用し、学習用ポータルサイトからシングルサインオン(SSO)で各コンテンツを利用可能とする。

 子どもたちの学習履歴などは、学習データを一元化した「教育ダッシュボード」から確認することが可能。個人の学習進捗状況、到達目標に対しての差異などを確認することが可能で、将来的には保護者とも連携していくことを目指す。

SSO連携
教育ダッシュボード
教育市場向けにChromebook製品を提供

 Open Platform for Educationは、Windowsでの利用にも対応しているが、海外の教育市場では高いシェアを持つChromebook製品として、NECでも「NEC Chromebook Y1」の提供を開始する。

 タッチパネルを搭載した11.6型端末で、約10時間稼働を実現する。モニター部分は360度回転に対応し、PCとしての利用だけでなく、タブレットとしての利用も可能。NECの端末提供実績を生かしたサポートサービスを提供するとしている。

NEC Chromebook Y1の特長
NEC Chromebook Y1
グループ学習実施時における可視化を実現する「協働学習支援サービス」

 アクティブラーニングに対応した「協働学習支援サービス」をOpen Platform for Educationを通じて利用可能とすることで、グループ学習実施時における可視化を実現。発話をマルチデバイスで収集し、音声をAIで分析することにより、聞き取りにくい同時に複数の場所で行われている会話をひろって、教員にフィードバックする。

 また感情を色分けで表示することで、子どもたちの状況を把握。グループ別学習状況や、個人の状態を把握することにつなげていく。

協働学習支援サービス

 NECでは、2018年12月から、京都で実証実験「未来型教育 京都モデル実証事業」を実施し、AIを活用した協働学習にラーニングアナリティクスを掛け合わせた。子どもの一人一人を伸ばすために、学習データの分析と活用を実現することが狙いで、予習状況、最適なグループ編成、発言を褒められる経験、学習への意欲増加といったループ実現を進めている。

 今回提供する協働学習支援サービスは、ここで獲得したノウハウがベース。「子どもが良いことを言うと褒められるようにすることで、やる気が起こるサイクルを作るなど、学習支援を行うことが狙い」(田端氏)だと説明する。

 またSociety5.0で掲げられている人材育成として、「子どもの様子をできるだけICTでフォローすることにより、教員にとっても働きやすい環境を作り、子どもたちも前向きに勉強ができる環境を作りたい」(田端氏)と説明している。

未来型教育 京都モデル実証事業
子どもたちの“やる気スイッチ”を発見し伸ばす教育を目指す

 なおOpen Platform for Educationでは、単純なプラットフォーム利用は無料での提供となるが、その後、連携するシステムによっては一部有料利用となることを想定しているとのこと。その先には、従来のような有料での教育システム提供も見据える。

 Chromebookを利用する場合にはWi-Fi環境の整備が不可欠となるが、「公立学校現場のWi-Fi整備率は(現時点で)4割程度といわれるものの、文部科学省では100%まで整備していきたいという目標を表明されている。インターネット回線の太い、細いの差はあるが、学校でもインターネット利用は可能。Chromebookは米国では6~7割のシェアで、全世界では5割のシェアがあると言われる。日本ですぐにそこまでいくのは難しいとは思うが、今後は日本でもシェア拡大となるのではないか」(田端氏)と述べ、ある程度先を見越しての投入であると説明した。