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産業分野での5G活用は高解像画像/映像の転送用途から? ~IDC Japan調査

 IDC Japan株式会社は28日、5G(第5世代移動通信システム)の産業向け画像/映像IoT市場に関する分析を発表した。それによると、産業分野における5Gの最大のユースケースのひとつが、4K/8Kなどの高精細画像/映像の伝送であることが分かったという。

 5Gでは、高速大容量、超高信頼低遅延、多数端末接続などの実現が期待されているが、中でも、4G(LTE)からの最も大きな進化のひとつは「アップリンク(上り)の高速化」とされており、これを最も生かすことができる産業分野の用途として、高精細カメラやイメージセンサーで取得した画像/映像データのアップロードが挙げられている。

 IDC Japanでは、こうして、大容量データのクラウド送信に対するハードルが下がることで、データ分析/活用のさらなる高度化が期待されると指摘。具体的な利用例としては、「4K/8K高精細映像コンテンツのリアルタイム配信」、「機械学習による画像認識」、「3Dモデリングによる新たな価値提供のユースケース」において5Gの活用が進むと分析した。

 一方で、5Gの本格普及には、通信モジュールの低価格化や基地局の配備などが必要となるため、サービス提供開始からは数年を要するのではないかとも指摘。また、企業などにおいて5Gの需要が増加するには、解像度の高い画像/映像アプリケーションの利用拡大や、センサーで取得した画像をAIで分析するなど、イノベーションの進展が必要になるのではないかとしている。

 こうしたことを踏まえ、IDC Japanでは、早期に5Gの導入が進む産業分野の条件として、1)生産性を高めるための設備投資に積極的である、2)画像/映像活用の取り組みが成熟している、3)特定企業の管理責任下で変革に取り組むことができる、といった3つを挙げた。

 このうち1)については、製造業における製品検査のためのマシンビジョンを始め、すでにイメージセンサーを活用した生産性向上や自動化に投資をしてきた産業分野の企業が、さらなる生産性向上に向けて5GやAIなどが積極的に導入すると予測。

 2)では、イベントのリアルタイム中継、パブリックビューイング、高精細VR、コンテンツ配信など、新たな映像価値提供への取り組みが進むのではないかと予測した。

 また3)については、5Gは今後、車両、ロボット、ドローンなど、自律移動する機器に多く搭載されるものの、これらの自律移動機器の普及は、その安全性に関する法制度整備の影響を受けると分析している。

 このほか5Gは、全国への基地局の面的展開に加えて、イベント会場や企業構内など、その場の需要に応じたスポット展開も進むと予測した。

 後者については、MNO(Mobile Network Operator)による5G通信サービスと、MNO以外による「ローカル5G」(エリア限定免許による5G)の構築/運用が競合するケースも多いと、IDC Japanでは予測している。

カメラ/イメージセンサー市場における5Gの活用(出典:IDC Japan)