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NEC、生後2時間の新生児の指紋認証に成功、出生登録などの法的身分証明の提供に向けケニアで実証実施

 日本電気株式会社(以下、NEC)は20日、新興国における新生児の生体認証基盤の実現に向け、ケニア共和国で生後1年未満の新生児・乳児を対象とした指紋撮像・認証技術の実証実験を行い、生後2時間を含む出生当日の新生児におけるエラー率0.3%での指紋認証に成功したと発表した。

 実証実験は、長崎大学熱帯医学研究所との共同研究として、現地の長崎大学ケニア拠点とともに実施した。

出生日の新生児指紋撮像作業風景と指紋撮像機

 NECでは、世界では1年間に新生児260万人を含む5歳以下の子供560万人が命を落としており、その大半の死因は、予防や治療で回避できる病気とされていると説明。こうした問題の解決には、新生児期の出生証明・登録による本人の同定手段が必要で、特に地域によっては出産後6時間未満で病院を退院する母子への出生証明書の発行や退院時の本人確認ができることや、子供を病気から守るため、生後14週までのワクチン接種の際の本人確認や接種の記録ができることが重要だとしている。

 こうした対策を実現するには、生後6時間未満の新生児の生体情報の確実な採取法と照合法の確立が求められており、NECでは新生児用の指紋撮像技術など、出生後数時間の新生児にも負担の少ない方法を採用。これらの技術と、2016年から継続的に行っている調査結果の蓄積により、生後2時間の新生児から指紋を撮像する手法を開発し、エラー率0.3%という高精度による認証に成功したという。

 出生直後の新生児の指紋を採取するためには、20μm未満の谷線幅を撮像する必要があるが、今回、高分解能を持つ10μmの撮像素子を搭載した高解像度イメージセンサーを採用するとともに、紋様を強調する特殊ガラスを組み合わせることで、20μm程度の谷線部紋様に対し、高精細な画像撮像を可能にした。

 また、撮像時における新生児の指の動きによるブレを解消するために、フレームレートをこれまでの2fpsから7fpsへに高速化し、ブレ防止機能をセンサー部に持たせた。また、作業者が、対象者のやわらかい指を必要以上に撮像面へ押し付けないための形状と撮影対象の指の撮像方向を統一するためのガイドなど、新生児用の特殊なデザインを採用した。

 NECでは、新生児への法的な身分証明の提供は、国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標16「平和と公平をすべての人に」の具体的な目標として掲げられている、「2030年までにすべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する(ターゲット16.9)」として採択されていると説明。今後は、今回の技術について、新興国の新生児における生体認証基盤や国民IDシステムでの利用に向け、実用化を目指すとしている。