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Drupal開発元の米Acquiaが会見、「日本でもエンタープライズCMSベンダーとして1位を目指す」

 オープンソースのエンタープライズ向けCMS「Drupal」を開発する米Acquia社は、2018年12月に日本法人としてアクイアジャパン合同会社(Acquia Japan)を設立した。この日本法人、およびAcquia社全体の事業に関する記者説明会が、3月13日に開催された。

 米Acquia社CEOのマイク・サリバン(Michael Sullivan)氏と、同社 アジア・パシフィック・ジャパン ジェネラルマネージャーのクリス・ギブス(Chris Gibbs)氏、アクイアジャパンのセールスマネージャーの上田善行氏が出席。Drupal単体にとどまらず、Drupalを中核としたデジタル体験プラットフォーム「Acquia Experience Platform」について説明した。

企業の必要とするものはWebコンテンツ管理から顧客体験に

 サリバン氏は、Acquia全体の事業について説明した。同社では社員数900人以上が世界15カ所のオフィスで働く。その1つとして東京オフィスが開設された。

 Acquiaは4000社以上の顧客を抱える。2018年は、総売上2億ドル以上、成長率33%(受注ベース)、既存顧客の売上成長率43%だった。北米以外での成長率も100%以上だったという。

Acquia社CEOのマイク・サリバン氏
2018年の業績

 CMSのDrupalは、同社が中心となって開発している。100万以上のWebサイトで稼働し、エンタープライズCMSとしては最大のマーケットシェアを持つという。

 このDrupalを中核として同社がクラウドサービスとして提供するのが、「Acquia Experience Platform」だ。

 背景としてサリバン氏は、企業の必要とするものが「Webコンテンツ管理」から「顧客体験」に変化していると説明した。かつてはWebサイトが中心で、Webブラウザに向けて全員同じコンテンツを配信していた。

 現在(そして未来)においては、クロスチャネルで、ソーシャルメディアや音声、チャットボットなど、あらゆる画面やデバイスに体験を届ける必要がある。さらにパーソナライズや、ほかのエンタープライズとの統合なども求められる。

 「われわれのプラットフォームはこれらに対応している。一連の製品によってデジタルエクスペリエンスの構築、運用、スケーリング、最適化などができる」とサリバン氏は語った。

Drupalの実績
企業に必要なものが「Webコンテンツ管理」から「顧客体験」に変化

 一連のプラットフォームは、Drupalのディストリビューションである「Acquia Lightning」を中心に、その下のインフラサービス「エクスペリエンスファクトリー」と、Acquia Lightningの上のマーケッター向けサービス「マーケティングハブ」に分けられる。これらはAWS上で動いている。

 サリバン氏は最後に、メディアやテクノロジー企業にとどまらず、公共セクターや小売、医薬、金融など、さまざまな分野で著名企業がAcquiaのソリューションを利用していることを紹介した。

Acquia Experience Platform
さまざまな分野の著名企業が利用

「日本でもエンタープライズCMSで1位にする」

 日本でのビジネスについてはギブス氏が説明した。

 ギブス氏はまず日本市場について、エンタープライズと同時に政府機関にも注力していくと語った。Acquiaは米国政府のクラウド調達基準FedRAMPの認証を受けている。

 また、日本市場で前年度比100%成長を計画しているという。成長の牽引力は、Drupalの採用を倍にすることと、Drupalのトレーニングや認定資料のローカライズをしていくことだ。「日本でも1~2年以内に、エンタープライズCMSベンダーとして1位になる」とギブス氏は語った。

 さらに、「日本オフィスをアジア地域のヘッドクォーターにしていく」とギブス氏。そのための施策として、日本の技術とサポートのチームを2倍にしていくという。

 日本のパートナーである、CI&T、Annai、電通アイソバー、ジェネロ、関電システムソリューションズらともいい関係にあることもギブス氏は強調した。日本ローカルのDrupalコミュニティも拡大していくという。

Acquia社 アジア・パシフィック・ジャパン ジェネラルマネージャーのクリス・ギブス氏
日本市場戦略。「日本でも1~2年以内に、エンタープライズCMSベンダーとして1位になる」
日本への投資。技術とサポートのチームを2倍にしていく
日本のパートナー

マルチデバイスやマルチサイトを活用した事例

 上田氏は、世界や日本でのAcquia採用事例などについて紹介した。

 Acquiaプラットフォームの特徴として、まずAPIファーストによるマルチチャンネルな顧客体験の事例としては、日本のMUJI(良品計画)やオリジンワイヤレスが紹介された。また、マルチサイトという特徴については、アステラス製薬や商船三井、三菱重工の例が紹介された。

 世界の例でみると、まずニューヨーク地下鉄システム(MTA)では、デジタルサイネージやスマートウォッチなどの多様なデバイスに情報を発信している。NASDAQでは3000サイトを一元管理している。Johnson & Johnsonでは、48ブランド以上の750サイト以上を一元管理している。

 日本のアステラス製薬では、DrupalとAcquia Cloud Site Factoryを使い、多言語40サイトを2年間で構築したという。また、海上輸送のオーシャンネットワークエクスプレスジャパン(ONEジャパン)では、Drupal + Acquia Cloud Site Factoryを使い、多言語30サイトを14カ月で構築したと説明した。

 上田氏はAcquia Experience Platformについて、マーケッター、運用管理者、開発者の三者三様の課題を解決すると説明。そして、「デジタル成熟度に応じたソリューションを選べる」ことをメリットとして強調した。

アクイアジャパンのセールスマネージャーの上田善行氏
ニューヨーク地下鉄システム(MTA)の事例。多様なデバイスに情報を発信
NASDAQの事例。3000サイトを一元管理
Johnson & Johnsonの事例。48ブランド以上の750サイト以上を一元管理
アステラス製薬の事例。多言語40サイトを構築
ONEジャパンの事例。多言語30サイトを構築
マーケッター、運用管理者、開発者の三者三様の課題を解決
デジタル成熟度に応じたソリューションを選べる