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KDDI、生産設備の故障予兆を検知する工場IoTソリューションを提供
機械学習を活用した分析モデルによる予兆検知も実現
2018年6月18日 11:00
KDDI株式会社は15日、法人ユーザー向けに、工場の生産設備の状態を可視化し、故障予兆を検知するサービス「KDDI IoTクラウド ~工場パッケージ~」を、8月上旬より提供開始すると発表した。同サービスでは、株式会社ARISE analyticsが開発した故障予兆検知アプリケーション「ARISE Intelligent Factory - ARISE Predictive Maintenance」を使用し、機械学習を活用した分析モデルによる故障予兆検知を実現している。同日に行われた説明会では、新サービスの概要および日本トーカンパッケージ株式会社の導入事例について紹介した。
KDDIでは、通信モジュール回線での約15年にわたる実績をベースに、M2M/IoT分野にも積極的に取り組んでおり、クラウドから通信ネットワーク、センサー・デバイスまで、あらゆるレイヤーをカバーしたIoTソリューションをワンストップで提供している。今回の「KDDI IoTクラウド ~工場パッケージ~」は、その新たなラインアップとして、製造業における工場IoTの導入を支援するソリューションとなる。
KDDI ビジネスIoT企画部 部長の原田圭吾氏は、新サービスを提供する背景について、「現在、製造業全般でIoTへの関心が高く、導入にも前向きで、市場規模も大きいと推測されている。その中で、当社の製造業の顧客からは、『点検工数を削減したい』、『生産設備の可視化によって故障予兆をとらえたい』、『工場内はWi-Fiが混信しており、安定した通信方法に変更したい』といった工場IoTに対するニーズが挙がっていた。これらのニーズをすべて満たすソリューションとして、新たに『KDDI IoTクラウド ~工場パッケージ~』をリリースする」としている。
「KDDI IoTクラウド ~工場パッケージ~」では、工場内の装置にセンサーを取りつけ、工場の生産設備の状態をデータとしてクラウド上に収集・蓄積し、それらのデータを分析することで故障予兆の検知からアラート通知までをKDDIがワンストップで提供する。センサーは、「レベルセンサー」「流量センサー」「電流センサー」「温度センサー」「振動センサー」の取りつけが可能で、生産設備のさまざまな状態を可視化することができる。
「例えば、機器運転における故障予兆では、電流センサーが負荷電流の発生を検知、振動センサーが加速度・速度値から振動の上昇を検知、そして温度センサーが温度の上昇を検知し、作業者が設定したしきい値を超えた場合にアラート通知する。これにより、設備の異常を早期に発見することができる」(原田氏)という。
サービスメニューは、工場の生産設備の可視化から故障予兆の検知、アラート通知を行う「基本セット」に加えて、機械学習による分析モデルを活用した「簡易分析オプション」と「高度分析(AI)オプション」を用意している。この分析オプションに使用しているのが、ARISE analyticsが開発した故障予兆検知アプリケーション「ARISE Intelligent Factory - ARISE Predictive Maintenance」だ。
ARISE analytics サイエンスディビジョン データサイエンティストの堀越康博氏は、「ARISE Intelligent Factory - ARISE Predictive Maintenance」の特長について、「このアプリケーションは、故障予兆検知のための機械学習機能を提供するもので、数社でのPoCで得られた知見をソリューションとして実装している。故障データのサンプルがなくても、定常状態のデータから故障の予測モデルを構築し、予兆となりうる異常を判定する。さらに、アラート通知に対して、故障有無の確認結果をフィードバックすることで、予測モデルを自動更新し、故障検知の精度を継続的に向上させる」と説明。「今後は、製造業向けに故障予兆検知以外の価値提供を行っていく予定で、交通・運輸、小売り、接客業務、教育領域など、他業種への参入も進めていく」との考えを示した。
各オプションの具体的なサービス内容としては、「簡易分析オプション」では、「ARISE Intelligent Factory - ARISE Predictive Maintenance」の分析エンジンにより、センサーから取得した情報をもとに分析モデルを自動で作成。複数作成された分析モデルの中から、データ分析者が最適な分析モデルを選定し、分析モデルによって異常と判定された場合はアラートを通知することで、設備の故障予兆の早期発見を支援する。
「高度分析(AI)オプション」では、「簡易分析オプション」に加えて、自動作成された分析モデルをAIが継続して最適化を行う。顧客のフィードバックをもとに分析モデルを更新し、設備の故障予兆精度を向上する。
なお、説明会では、「KDDI IoTクラウド ~工場パッケージ~」を先行導入した日本トーカンパッケージの事例も紹介された。同社では、段ボールシートの製造工程において、生産設備の故障が多発し、作業遅延が発生していたことから、異常検知や故障予兆検知の可能性に着目し、「KDDI IoTクラウド ~工場パッケージ~」を導入。現在、実証実験を行っているという。
日本トーカンパッケージ 生産技術部 設備保全グループリーダーの佐藤康博氏は、「『KDDI IoTクラウド ~工場パッケージ~』は、センサーデータの収集や分析・予測、データ蓄積・可視化の機能を備えていることに加えて、センサーの選定から設置工事、回線手配まで含めてKDDIからワンストップで提供される点が導入のポイントとなった。導入後は、生産設備の状態がグラフで可視化できたことで、アイドリングの状態や待機状態の無駄が発見可能になった。また、工場と連携した迅速な対応をさらに強めることができたほか、工場内で何が起きているのか、クラウドを通じてわかるようになった」と、導入効果について述べた。
「KDDI IoTクラウド ~工場パッケージ~」の「基本セット」の月額料金(税別)は、振動センサーが6400円/個、温度センサーが20円/m、電流センサーが600円/個、流量センサーが4400円/個、レベルセンサーが6700円/個、ロガーが5000円/個、クラウド使用料が5万円/ID、3万円/ロガー、保守が2万3120円。「簡易分析オプション」は、「基本セット」のクラウド使用料に加えて、5万円/ID、2万円/ロガー。「高度分析(AI)オプション」は、「基本セット」のクラウド使用料に加えて、15万円/ID、2万円/ロガー。最低契約期間は2年。保守費用は、センサーの数や種類によって変動する。