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富士通、材料設計におけるAIの有用性を実証、高イオン伝導率を有する全固体リチウムイオン電池用固体電解質の開発を効率化

 富士通株式会社は16日、理化学研究所 革新知能統合研究センター(AIPセンター)理研AIP-富士通連携センター(連携センター長:杉山将)において、AIPセンター分子情報科学チームらとともに、材料設計におけるAIの有用性を実証したと発表した。

 理研AIP-富士通連携センターでは、「想定外を想定するAI」をテーマとして研究開発を行っている。その1テーマとして、材料シミュレーション、実験、AIの密接な連携を通して材料開発における課題を解決し、開発期間を数分の一に短縮すること、さらには容易には思いつかない組成や結晶構造をもつ新たな高機能材料を発見することなどを目指している。

 今回、AI手法の一つであるベイズ推定法と組み合わせることで、材料シミュレーションの手法で計算負荷が非常に大きい第一原理計算の計算回数を数十分の一に抑制。株式会社富士通研究所で実績のある全固体リチウムイオン電池における固体電解質の候補材料の一つで、3種類のリチウム含有酸素酸塩から合成される化合物について、高いリチウムイオン伝導率を実現するための最適組成を現実的な時間内で予測することに、この材料としては初めて成功した。

 さらに、化合物の合成と分析を実際に行い、予測された組成付近で他の組成よりも高いリチウムイオン伝導率が実現されることを確認した。これにより、計算負荷の大きい第一原理計算からのデータが比較的少数しか得られていなくても、AI手法と組み合わせることで、最適な材料組成を効率的に見つけ出し、材料開発を大幅に加速できることが実証されたとしている。

 富士通では今後、材料開発におけるAIの高度利用を促進し、さまざまな材料に対して適用可能なマテリアルズ・インフォマティクス技術を確立していくとともに、それらの技術の適用を通じて、新材料開発の効率化に貢献するとしている。