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キヤノンMJが中期・長期の経営計画を発表、2020年に売上高8000億円目指す

 キヤノンマーケティングジャパン株式会社(キヤノンMJ)は、2020年を最終年度とする「長期経営構想フェーズIII」を発表。さらに、その実行計画と位置づける2018年を最終年度とした「2016年~2018年中期経営計画」を発表した。

 長期経営構想フェーズIIIでは、2020年に売上高で8000億円、営業利益で400億円を目指す。売上高の年平均成長率は4.4%増、2020年の営業利益率は5.0%となる。

 キヤノンMJの坂田正弘社長は、「2015年度を最終年度とした長期経営構想フェーズIIでは、デジタルカメラにおいては収益性の高い製品にシフトしたり、ITソリューション、ビジネスソリューションの収益改善の効果もあった。2012年度からは売上高が横ばいであったが、収益を伸ばすことができた。だが、売り上げを伸ばさずに収益を伸ばすのには限界がある。2016年度以降は、売り上げを伸ばすことが大切である」とした。

キヤノンMJ 代表取締役社長の坂田正弘氏(2015年の記者会見より)

最初は投資先行フェース、2018年度以降に向けた投資をしっかりと

 長期経営構想フェーズIIでは、売上高8500億円、営業利益425億円を目指したが、2015年度実績は、売上高が6460億円、営業利益は266億円にとどまった。

 「グループ内には、B2B、B2Cにおよぶ多くのリソース、強みを持っているが、これをグループ横断として十分に生かし切れていない。また、大きな成長が見込めない既存事業の構造改革が道半ばであり、新たなサービス事業や成長領域へのリソースシフトが進んでいない。また、ビジネスプロセスが改善止まりであり、今後は効率よく、筋肉質で、市場の変化に柔軟に対応できる、軽い体制にしていく必要がある。営業会社としては粗利率が高い方だが、その一方で販管比率が高くコストがかかっている。その点も見直していく必要がある」と、現在の課題について指摘した。

 そして、長期経営構想フェーズIIIでは、「既存領域にもしっかりと取り組む一方で、成長領域をいかに伸ばしていくかがテーマになる。成長領域においては、最初は投資先行のフェーズになるため、2017年までの成長には物足りない感じもあるだろうが、これは2018年度以降に向けた投資になる」とした。

 収益向上領域とするMFPやLBP、カメラ、インクジェットプリンタなどにおいては、主要製品シェアナンバーワンの実現および維持、販売・サービス改革による生産性向上に取り組む一方、キヤノン成長領域であるネットワークカメラやプロダクションプリンティングでは、事業領域の拡大などに取り組む。また、独自成長領域では、全事業でのITソリューションの強化、拡充のほか、受託開発型からソリューション提案型SIerへの転換、セキュリティやアウトソーシングなどによるクロスインダストリーソリューションの拡大などに取り組む姿勢を示した。

 2015年実績では、キヤノン成長領域および独自成長領域の構成比は37%だが、2020年にはこれを50%にまで引き上げる考えも示した。

 さらに、ITソリューションや外部製品保守などの独自サービスビジネスの売上高を2015年の1437億円から、2020年には2000億円にまで拡大。構成比を22%から25%に引き上げる。また、販管比率を2015年度の32%から、2020年度には30%にまで引き下げる方針を示した。

 2020年に向けたグループミッションとして、「先進的な“イメージング&IT”ソリューションにより社会課題の解決に貢献する」を掲げ、グループビジョンとして「お客様を深く理解し、お客様とともに発展するキヤノンMJグループ」を掲げた。

 「これまでの主要製品×チャネルのフレームワークから、市場・顧客×ソリューションによるお客さま中心の新たなフレームワークに転換する。これまでは箱売りの会社というイメージでみられていたが、お客さまの課題を見つけだし、それを解決する提案を行い、必ず成果を出していく会社になっていきたい」と述べた。

 また、「お客様の真のパートナーへ」、「キヤノン収益向上領域の高収益基盤の維持」、「キヤノン成長領域のコア事業化(ソリューション力強化と協業促進)」、「グループ総力によるITソリューションビジネスの拡大」、「事業構造変革・プロセス変革の強力な推進(経営基盤の整備と強化)」、「社員が活き活きと輝く企業グループへ」の6つの基本方針を掲げた。

2018年度に売上高7250億円、営業利益350億円を見込む

 2016年~2018年中期経営計画においては、2018年度の売上高は7250億円、営業利益は350億円、経常利益は360億円、当期純利益は230億円を見込む。

 セグメント別には、2018年度におけるビジネスソリューションの売上高が3681億円、営業利益が135億円。売上高の年平均成長率は4.0%。ITソリューションの売上高が1687億円、営業利益が67億円。売上高の年平均成長率は6.1%。イメージングシステムの売上高が1831億円、営業利益が135億円。売上高の年平均成長率は0.8%。産業・医療の売上高が336億円、営業利益は9億円を見込む。売上高の年平均成長率は7.3%となる。

 キヤノン収益向上領域では、ドキュメントビジネスにおいては、「中堅市場の戦力強化、MFPシェア拡大」、「関連ソリューション商材の拡販(ITアウトソーシング・ドキュメント/セキュリティソリューション)」、「LBPの重点業種攻略推進(流通・小売り、病院・調剤、官公庁)」に取り組むほか、イメージングシステムでは、「ステップアップ戦略の推進(エントリー層の拡大と写真愛好家の育成)」、「ミドル機、ミラーレス機、交換レンズの商品力強化」、「インクジェットプリンタのホーム市場における収益維持」に取り組む。また、CRM強化によるロイヤルカスタマ化、ビッグデータ活用による潜在顧客へのアプローチ、B2BおよびB2CにおけるECチャネルの販売拡大、リモート点検・予兆モニタリングなどによるサービス生産性の向上に取り組む方針も示した。

 「従業員100人以下と、1000人以上の領域は強いが、100~1000人の中堅市場においてはシェアが低い。ここに力を注いでいきたい」としたほか、「ミラーレスは3番手のシェア。まだまだ市場拡大の余地がある。この分野でも、一眼レフカメラ、コンパクトデジカメと同様にトップシェアを目指す。さらにインクジェットプリンタも、SOHOという市場をとらえれば、市場が縮小するとは考えていない。ここにも力を注いでいく」とした。

 キヤノン成長領域においては、ネットワークカメラを重点製品に位置づけ、2018年度までに年平均成長率で37%増を見込んでいる。アクシス・マイルストーンとの連携強化により、製品およびソリューションのラインアップ強化、電材ルートなどへのチャネル拡大、クラウド活用やアライアンスによる多種多様なソリューションを提供する。

 またプロダクションプリンティングでは、商業印刷分野へ本格展開するとともに、物販中心から統合型ソリューションモデルへと転換を図ることで、2018年度までに年平均成長率11%増を見込む。業務用映像機器では、4Kおよび8K技術の強みを生かし、映像制作、技術サービスなどコンテンツ関連事業にも参入。ワンストップの総合映像商社を目指すという。同分野における2018年度までの年平均成長率は21%増を見込む。

ITソリューションビジネスの拡大を図る

 独自成長領域においては、ITソリューションビジネスの拡大が中心になる。

 2020年度までに、ITソリューションの売上高で2000億円(2015年度実績で1412億円)、その他セグメントでのITソリューション関連で800億円(同583億円)、セグメント間の売り上げを差し引きして、グループITソリューション全体で2500億円(同1709億円)とする。これにより、グループITソリューション売上比率を2015年度の26%から、31%に引き上げる。

 坂田社長は、「ITソリューションには、ITソリューションそのものが主体にやっていく事業と、ほかのセグメントと連携していくものがある。ITソリューションについては、スクラッチ開発の体制から、当社が持つ業種向けシステムの開発ノウハウなどを生かして、SIサービスのソリューション型ビジネスへと展開。さらにこれを横展開していくほか、SOLTAGEによるクラウドビジネスの強化、ネットワークカメラやESETによるセキュリティのトータル提案、コア業務にリソースを集中したというユーザー企業からのアウトソーシングの受注などにも取り組む」とし、「富士ゼロックスやリコーと同じことをやっていても差別化にはならない。ITソリューションにおけるこれだけの陣容を持っているのはキヤノングループでもほかにはない。ITソリューションとほかのセグメントとの連携を強みにしたい」と語った。

 また、医画像ビジネス、電子カルテビジネス、ヘルスケアビジネスと連携した医療ソリューションの展開、3Dプリンタと連動させた3Dソリューションの提案なども加速させる考えを示した。

 同社では、2018年度までの3カ年で、データセンター増強に85億円、社内IT投資に85億円、レンタルビジネスへの投資に250億円のほか、戦略的投資としてM&A関連費用として400億円を計画している。

2015年度は減収に

 一方、2015年度(2015年1~12月)の売上高は前年比2.0%減の6460億円、営業利益は6.2%増の266億円、経常利益は5.6%増の280億円、当期純利益は2.2%減の156億円となった。

 セグメント別では、ビジネスソリューションの売上高が1.0%減の3268億円、営業利益が8億円増の90億円。ITソリューションの売上高が5.1%減の1412億円、営業利益が10億円増の41億円。イメージングシステムの売上高が3.6%減の1787億円、営業利益が4億円減の138億円。産業・医療の売上高が3.1%減の271億円、営業損失は2億円回復したものの7億円の赤字となった。

 ビジネスソリューションでは、マイナンバー関連でセキュリティ関連製品が増加。ITソリューションでは、西東京データセンターによる大型受注を獲得。金融、医療向け案件が伸長したという。

 「ITソリューションは、ビジネスPCの反動減、それに伴う周辺機器やソフトウェアの減少などで80億円のマイナスがあった。また、流通を行うだけの採算性の悪い製品領域の見直しのほか、一昨年からITソリューショングループの16社の再編に向けた取り組みを行っており、2017年を目標にキヤノンITソリューションズとキヤノンソフトウェアを完全統合することになる。こうした取り組みも影響している」などとした。

 また、2016年度通期業績見通しは、売上高は前年比2%増の6600億円、営業利益は1%増の270億円、経常利益は1%増の282億円、当期純利益は13%増の177億円とした。

 セグメント別では、ビジネスソリューションの売上高が2%増の3341億円、営業利益が2億円増の92億円。ITソリューションの売上高が3%増の1458億円、営業利益が3億円増の44億円。イメージングシステムの売上高が1%増の1803億円、営業利益が5億円減の133億円。産業・医療の売上高が2%減の267億円、営業損失は5億円増とするものの3億円の赤字を見込む。

 ビジネスソリューションでは主要ハードウェアに加えて、ネットワークカメラがけん引すると予測。ITソリューションでは、金融、製造、文教などが堅調に推移すると予測。SIサービスおよびデータセンターなどのITインフラサービスの拡大を見込んでいるという。また、イメージングシステムでは、レンズ交換式デジタルカメラの回復を見込む一方、ミラーレスカメラを中心としたカメラ市場をけん引するための積極的な販促施策の実施、インクカートリッジの減少により減益を見込んでいる。

大河原 克行