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マイクロソフト、国内でも積極的にOSSに取り組んでいくことをアピール
OSSに対応する20名体制の専任部隊も新設
2017年11月20日 11:38
日本マイクロソフト株式会社は17日、日本におけるAzure OSS(オープンソースソフトウェア)戦略を説明するメディア向けラウンドテーブルを開催した。
これは、米Microsoftが15日(米国時間)にニューヨークで開催した開発者向け年次イベント「Microsoft Connect();2017」を受けたもの。ここ数年、MicrosoftはOSSに積極的に取り組んできたが、特にサティア・ナデラ氏がCEOに就任した2014年以降この流れは加速している。その背景、成果を、日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 業務執行役員 本部長 浅野智氏は、次のように説明した。
「デジタルトランスフォーメーションを進めるにあたり、多くの企業がオープンなテクノロジーを採用したいと考えている。ある調査では、ビジネス意思決定者の41%はOSS利用を重要な事象と認識しており、特にクラウドの統合戦略において65%はOSSおよびオープン APIを導入する意向を示している。さらに、オープンソースはカルチャー面での変革も加速させており、65%のDevOps Early Adopterは商業ベースまたはコミュニティベースのOSSソリューションを選択しているという結果が出ている。多くのお客さまが積極的にオープンなテクノロジーの採用を検討している現状において、Microsoftがいつまでも自社のテクノロジーにだけこだわり続ければ、お客さまに価値を提供していくことはできなくなってしまう」(浅野氏)。
浅野氏が示した調査結果を裏付けるように、Azure上で動作している仮想マシン(VM)の40%以上はLinux VMであり、さらにこの数字が増えていくとMicrosoftでは予測している。もちろん、Microsoft自身も全社規模でOSSの利用を推進している。9700のオープンソースコンポーネントを利用し、6000名がオープンソース関連プロジェクトに従事しているほか、3000のオープンソースプロジェクトがリリースされているという。
クラウドのOSSに対するMicrosoftの製品アプローチには、「Enable」「Integrate」「Release」「Contribute」のカテゴリがあると浅野氏は説明する。
最初の「Enable」とは、場所に制限されることのないプラットフォームのことで、オンプレミス環境で動作していた既存のアプリを容易にクラウドに移行できるなど既存の投資に価値を追加する環境を提供する。
「Integrate」では、OSSの主要エコシステムを構築することで開発と分析を統合し、アジャイルな開発スタイルを確立する。
「Release」とは、Microsoftの製品リリースのこと。先日発表されたSQL Server 2017がWindows ServerだけではなくLinuxにも対応したように、今後のMicrosoftの製品はOSSに積極的に対応していくことになる。
最後の「Contribute」はコミュニティへの貢献を意味し、OSS対応のために開発したアプリケーションやサンプルコードを、積極的にコミュニティに公開していくという。
「すでにMicrosoftはさまざまなコミュニティに、多くの貢献をしている。実は、GitHubでOSSに貢献した企業としては、Facebookやdockerを抜いて1位になっている」(浅野氏)。
コミュニティへの積極的な参加の例として、今回注目されたのはMariaDB FoundationにプラチナメンバーとしてMicrosoftが参加したことが挙げられる。Connect();2017では、「Azure Database for MariaDB」のプレビューが近く提供されることが発表された。MySQLの後継ともいえるRDBMSのMariaDBを、Azureからフルマネージドで利用できるようになることは多くの企業にとって朗報と言えるだろう。
すでにAzureではMySQLやPostgreSQLがサポートされているが、OSSのRDBMSに新たな選択肢が追加されたことになる。また、NoSQLのデータベースにも新たな発表があり、Azure Cosmos DBは既存のMongo DBに加えて、Apache Cassandraへのサポート(Apache Cassandra API)が追加された。
さらに情報分析基盤の機能強化として、Apache Sparkベースのアナリティクスプラットフォームである「Azure Databricks」のプレビューも提供される。Azure SQL Data Warehouse、Azure Storage、Azure Cosmos DB、Azure Active Directory、Power BIとネイティブに統合され、アナリティクスや機械学習の強力な基盤として提供されるという。
このほか、Connect();2017で発表された主な内容としては、「Azure IoT Edge」のプレビュー提供が開始され、IoTのエッジとしてAI、先進的アナリティクス、機械学習が利用できるようになったことや、「Azure Machine Learning」がアップデートされ、AI がクラウドから IoT エッジのデバイスに至るまであらゆる場所で利用できるようになったことも紹介された。
また、「Azure SQL Database Machine Learning」のプレビュー提供が開始され、SQL Database 内におけるRモデルのサポートにより、シームレスにAzure Machine Learning 内でモデルの構築と学習が可能となり、Azure SQL Database上で高速な予測を行うことができるようになった。
「Visual Studio Tools for AI」でも、Visual Studioのフレームワークと言語によるあらゆる生産性向上機能を活用してAIモデルの活用が可能になっている。
なお、.NETのアップデートによって、.NETの開発者が自分のアプリケーションでAIモデルを活用することがより容易になったという。
一方で、日本国内におけるOSSへの取り組みについて、浅野氏は「まずは製造業や金融など5つの重点業種においてビッグデータやAI活用の大型のユースケースを増やしていくことで、世の中にOSSの成功を知ってもらいたい」と述べている。
OSSに対応する20名体制の専任部隊も新設し、ユーザー企業と一緒に行動するほか、本社開発チームとのダイレクトエンゲージも行っていく。ちなみに、この部隊はOSSの技術に詳しい人材と、ビジネスのIT活用に詳しい人材が所属する混合チームであり、今後さらに人数を増やしていく予定であるという。
国内におけるOSSコミュニティへの貢献としては、構築ナレッジのホワイトペーパー化や横展開、OSSの各領域に対するスペシャリストの育成なども行っていく。さらにレディネスやマーケティング活動として、年間200回以上のイベント、セミナー、トレーニングの開催や、100社以上のパートナー企業とPOCの支援を行うとしている。