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OTとITの組み合わせで社会の変革に貢献――、日立・東原社長が社会イノベーション事業の成果をアピール
Hitachi Social Innovation Forum 2017 TOKYOレポート
2017年11月1日 12:26
株式会社日立製作所(以下、日立)は11月1日・2日、東京・有楽町の東京国際フォーラムにて、日立グループとして世界最大規模のプライベートイベントとなる「Hitachi Social Innovation Forum 2017 TOKYO」を開催している。
今回で19回目を迎える同イベントは、「社会の未来を変えるアイデアがここに」をテーマに、基調講演やビジネスセッション、セミナー、展示などにより、同社の社会イノベーション事業の取り組みによる、現在から少し先の未来へ向けた提案などを行うものになった。
また、同社が、北米、欧州、アジアなどの世界各地域で開催している自主イベントのフラグシップイベントにも位置づけており、これらのイベントを通じて、合計で3万7000人以上の来場者数を見込んでいるという。
会期初日の9時30分から行われた基調講演では、日立の東原敏昭社長が、「世界の変化をリードする社会イノベーション」と題し、顧客やパートナーとの協創を通じて、第4次産業革命などによる世界の変革を日立がリードしていく姿などについて話した。
社会課題の解決を行う社会イノベーション事業
日立の東原社長は、「世界は不確実な世界に突入し、そのなかで持続可能性が模索されている。企業にも大きな責任が生まれている。世界では、サスティナブル・デベロップメント・ゴールが設定され、日本では、Society 5.0に取り組んでいる。Society 5.0では、経済的豊かさを求めるだけでなく、社会的課題を解決することを目指している。ここで重要なのはデジタルトランスフォーメーションである」と切り出す。
そして、「デジタルを活用することで、従来では気がつくことができなかった解決策を導きだし、価値を生み、未来につなげていくことができる。大切なのは、これを人々が本当に活用できるかどうかである。日立には、生活家電や大規模コンピュータ、ストレージ、社会インフラシステムがあるだけでなく、最先端のデジタル技術がある。社会イノベーション事業によって、社会の変化や人々の生活を支えることができる」と、現在の注力している社会イノベーション事業に言及。
「日立は、1910年に、鉱山を支えるモーターの開発によって創業し、それ以来、『優れた自主技術、製品の開発を通じて社会に貢献する』ことを企業理念としたきた。これはいまも変わらない。100年以上の歴史を持つOT(Operational Technology:運用技術)と、デジタル技術のITを組み合わせ、IoT時代における社会課題の解決を行うのが当社の社会イノベーション事業である」とした。
具体的な事例として、東急電鉄との協業で提供している「駅視-vision」を紹介した。駅構内の混雑状況をリアルタイムで見える化し、利用者の混雑回避と、移動のストレスを軽減することに貢献しているという。
また、名札型センサーから得られるデータをもとに、働く人の幸福感向上に有効なアドバイスをAIが行うソリューションを開発。日立社内において、26部署600人を対象に実証実験を行った結果、組織活性度を高め、受注額は27%上昇した事例を示した。
さらに、福岡市において、地域包括ケア情報プラットフォームを利用し、住民の健康促進や医療費削減に貢献している例に言及したほか、2017年度中には高速道路でのレベル3の実証実験を予定している、自動運転システムへの取り組みを紹介している。
コペンハーゲンの地下鉄では、センサーから人流データを解析し、ホームで待っている乗客数に応じて、最適なタイミングで電車が駅に到着できるようにしているという。「従来は定時運行が価値であったが、トータルの待ち時間を減らすことや、エネルギーの削減にもつなげるという新たな価値を提供できる。鉄道技術のOTと、データを分析するITの組み合わせで社会変革に貢献している事例」とした。
イノベーションの源泉は“協創”
さらに東原社長は、「協創がイノベーションの源泉である」とし、新たな価値を創造する基盤となる「Lumada」について説明。「この1年でLumadaを進化させてきた。パートナーとの連携やアセットのデータ活用を図り、顧客のアウトカム(成果)を最大化できる」と述べた。
ここでは、協創手法/ツールである「NEXPERIENCE」において、顧客とともに、きざしをとらえて未来を描く「ビジョンデザイン」、コンサルタント、デザイナー、エンジニアなど異分野の専門家により、利用者が求める価値を追求する「Exアプローチ」を紹介。Exアプローチでは、三井不動産における活用事例を示した。
またLumadaのIoTプラットフォームを2017年9月に体系化し、Ver2.0としたことを紹介。アセットをデジタル上に表現し、最適化を支援できる機能を提供したことや、画像解析などさまざまな機能を持ったAIを活用していること、人と共存するロボティクスの導入事例のほか、オープンプラットフォームとして提供していることも強調した。
「2016年の顧客協創造空間での議論件数は年間200件、プロトタイプの実証件数は104件にのぼった。日立は、Lumadaを活用することで、社会イノベーションパートナーとして、バリューチェーンの上流から下流までカバーすることができる」と訴えた。
そのほか、オークマとの協創により、新工場での生産進ちょく、設備稼働データの活用などを通じてプロセス全体を革新し、生産性を2倍に高めることに成功した事例や、米国トラック大手のPenskeとの協創では、20万台を超える車両を管理し、車両の稼働率を向上している事例を挙げた。
また2017年春に、日立グループがラムサムウェアによる被害を受けたことを反省し、日立グループ内の情報セキュリティガバナンスを強化。イスラエルのセキュリティ企業であるCyberGymと連携し、大みか工場内に施設を設置。2017年8月から、サイバー訓練サービスを提供している例も紹介した。
また、グローバル人材の採用や働き方改革を推進していること、優秀な社員や成功した社員の人材データを活用し、ピープルアナリティクスに取り組んでいること、2017年9月には、日立データシステムがHitachi Vantaraに生まれ変わり、シリコンバレーを基点に世界中の企業の課題解決を支援する体制が整ったこと、大学との協創を積極的に進めていることなどにも言及した。
「イノベーションを成功させるのは人である。社員一人一人のイノベーティブな活動が、社会の変革につながる」(東原社長)。
最後に東原社長は、「日立にはOT、ITだけでなく、デジタルトランスフォーメーションをリードする人材がそろっている。みなさんとの協創により、多くのアイデアを結集し、社会イノベーションで変革をリードしていく。日立はみなさんと一緒に希望あふれる未来を作っていきたい。日立はイノベーションパートナーとして、社会イノベーションの実現に挑戦していく。未来はオープンだ、アイデアで変えられる。日立に期待してほしい」と締めくくった。
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そのほか、Hitachi Social Innovation Forum 2017 TOKYOでは、特別講演として、ピュリツァー賞受賞作家であり、科学者でもあるジャレド・ダイアモンド氏が「伝統と未来をつなぐ。~現代社会への提言~」と題した講演を行うほか、国立情報学研究所 社会共有知研究センター長の新井紀子氏、米Barnard College総長のシアン・バイロック氏、早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄氏がそれぞれ講演する。
またビジネスセッションでは、日立が注力する電力・エネルギー分野、産業・流通・水分野、アーバン分野、金融・公共ヘルスケア分野など、7つのテーマについて議論。顧客の経営課題を解決するソリューションや、それらの事例を紹介する60以上のセミナーも開催した。
展示会場では、「ENERGY」、「INDUSTRY」、「URBAN DEVELOPMENT」、「FINANCIAL」、「HEALTHCARE」、「Connected by Lumada」、「SECURITY」、「WORKSTYLE INNOVATION」の8つのゾーンに分類し、20テーマ以上の展示を行っている。