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富士通研究所、多拠点間の円滑な共創活動を実現する技術を開発

 株式会社富士通研究所は4日、2015年に開発した部屋全体をデジタル化するUI技術(以下、空間UI技術)を拡張し、多拠点間の円滑な共創活動を実現する技術を開発したと発表した。

 富士通研究所が2015年に開発した空間UI技術は、1つの拠点内における複数の大画面と端末を連携したコラボレーションを可能にし、多人数でのデータ共有を効率的に行うことを可能にするもの。

 従来の空間UI技術では、多拠点を繋いでデータ共有する場合は、主にクラウドにデータを置いて多拠点から接続するため、データの編集操作や意見交換が繰り返される共創活動においては、外部ネットワークの遅延により操作感に影響が出るなど、円滑なコミュニケーションができないといった課題があった。

 今回開発した技術では、データをクラウドではなく各拠点ローカルに持ち、ネットワークの遅延状況に応じて、コンテンツを動かした際の軌跡など不要なデータを削除して必要な差分データのみを同期する分散データ共有技術により、円滑な多拠点間のデータ操作を実現した。

 実験では、多拠点間のデータ共有における遅延は技術適用前に比べ約9割短縮され、3拠点で最大2.1秒、6拠点で最大3.1秒で同期され、ローカルのデータ共有は拠点が増えても一定(0.3秒以下)となった。これにより、拠点接続数にローカルのレスポンスが左右されず、同期時間もローカルのコラボレーションを妨げることがなく十分に高速なため、技術の実用性が確認できたとしている。

分散データ共有技術

 また、どの拠点からも自由にアクセスする際に発生する操作競合を避けるため、遠隔側の操作状況が分かるアウェアネス伝搬技術を開発。アウェアネス伝搬技術では、相手先が操作しているコンテンツをフラッシュ表示したり、相手先の人の影を表示することなどで、遠隔側の状況を知らせるもので、操作者に対して、相手先で操作中のコンテンツへの操作を自粛するように気付きを与える。

 この技術を用いて、2拠点で共同で写真や手書き付箋を分類するタスクを行う実験を行った結果、技術を適用しない場合と比較して50%の操作競合(操作競合:本技術適用なし22回、適用あり11回)を抑制、作業効率を約26%改善(操作回数:本技術適用なし329回、適用あり241回)できることを確認し、多拠点間の共創活動における効率を改善したとしている。

アウェアネス伝搬技術

 富士通研究所では、これらの技術により、拠点間の操作競合を抑制しながら円滑な同時操作を実現でき、ものづくりの現場では課題共有と意思決定の迅速化だけでなく、通常オフィスにおけるアイデア発想を集合することなく行えるなど、ワークスタイルの変革が実現できると説明。また、教育現場では、学校間交流による遠隔アクティブラーニングなど、新しい授業のスタイルを実現できるとしている。

 富士通研究所は今後、これらの技術を社内に展開し、発想支援の有効性を検証する実証実験を進め、2018年度中の実用化を目指す。