ニュース

日本IBM、SalesforceのCRMソリューションを提供する専任チーム発足

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、米Salesforce.comのCRMビジネスを手がける専門部隊を日本法人に新設し、7月から専任スタッフを置いて取り組む。米IBMが買収した米国企業Bluewolfのソリューションを活用するとともに、IBMのWatson、SalesforceのEinsteinを活用したAIソリューションを提供していく。

IBMのWatson、SalesforceのEinsteinを活用

 2017年3月、IBMはSalesforce.comと戦略的提携を発表しており、今回の発表もその提携に基づいたもの。日本法人に7月1日付けで「Bluewolf専門チーム」を新設した。「スタート時点では数十人のスタッフからスタートし、5年後の2020年には1000人規模の人員としたい」(日本IBM 執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部 戦略コンサルティング&デザイン統括の池田和明氏)。

日本IBM 執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部 戦略コンサルティング&デザイン統括の池田和明氏

Bluewolfのビジネスを日本でも展開

 日本IBMでは、IBMixの略称である日本IBMのIBM Interactive Experience事業内に、Bluewolf専門チームを設置する。

 「Salesforceが提供するSaaSソリューションは日本でも大きく伸長しており、ほぼ年率30%成長となっている。この伸びは日本IBMとしても理解しており、米国で成果があがっているBluewolfのノウハウを日本で展開する価値があると判断した。当初は日本IBMのサービスビジネス部門のメンバーの集まりにBluewolfのメンバーがインストラクターとして参加し、トレーニングプログラムを提供してもらうことでノウハウを共有する予定だ」(日本IBM パートナー グローバル・ビジネス・サービス事業本部マーケティング コマース&セールスフォース リーダーの浅野智也氏)。

日本IBM パートナー グローバル・ビジネス・サービス事業本部マーケティング コマース&セールスフォース リーダーの浅野智也氏
IBM内のセールスフォースビジネスに携わる部門の組織図

 BluewolfはIBMが2016年5月に買収したSalesforceのパートナー企業で、1200社以上の顧客に導入実績を持っている。特に、IBMユーザーがSalesforceのソリューションを導入する際のインテグレーションに定評があるという。

 IBM傘下となったことで、既存のIBMのシステム資産を持つユーザーがSalesforceのソリューションを導入する際、両方のシステムとの連携を行う人材をそろえて対応していく。

 これまでBluewolfの日本でのビジネスはほとんどなく、その理由を「資金やリソースが限られたベンチャー企業であり、英語圏での事業展開を優先してきた。そのため日本では事業展開してこなかった。IBM傘下となったことで、日本で事業展開ができることになった」(Bluewolf Managing DirectorのGreg Kaplan氏)と説明している。

Bluewolf Managing DirectorのGreg Kaplan氏

 ほかのSalesforceパートナー企業との差別点として、1)Salesforceのプラットフォームを活用する中で、ビジネスの成果に基づいたアプローチの徹底、2)Bluewolfのテクノロジーを活用することで、導入期間を半分に削減することに成功した実績、3)顧客体験にフォーカスした、デザインシンキングに基づいた戦略的サービスの提供、という特徴があると説明している。

 得意な業種としてはヘルスケア、製造業、小売業、自動車産業、金融を挙げた。

Bluewolfのアプローチ
Bluewolfの得意業種

セールスフォース日本法人とも協力

 セールスフォース・ドットコムの常務執行役員 アライアンス本部長の手島主税氏は、「BluewolfとSalesforce.comは長年にわたり戦略的なパートナーシップを組んできた。今回、日本IBMとの協力によって日本市場にも参入することが決定したのは大変喜ばしいこと。戦略的なエコシステムを具現化するための支援を、Salesforce.comの日本法人としても積極的に行っていきたい」と述べ、Bluewolf日本市場参入を歓迎している。

 具体的には、企業が持っているデータをもっと経営に生かしていくためにどうすればよいのか、企業がこれまでは把握できていなかった顧客の動向をいかに把握するのか、経営スピードをいかに上げるか、という課題解決のために、デジタルイノベーションプログラムの提供、迅速なプロトタイプの作成、アプリケーション提供プログラムの活用、ソリューション導入後の定着を支援する活動などを、協力して行っていく。

セールスフォース・ドットコムの常務執行役員 アライアンス本部長の手島主税氏
セールスフォース・ドットコムが考えるIBMとのエコシステム

 IBMとSalesforce.comの協業では、IBM WatsonとSalesforce Einsteinの連携によるAI活用の強化、IBMが買収した気象情報を提供するThe Weather Companyが持つ気象情報/気象データに関するソリューションのAI活用、Salesforce向けに特化した統合製品のリリース、さらにBluewolf専門チームをIBM内に設立することなどが計画されている。

IBMとSalesforce.comの提携内容

 会場で紹介されたデモでは、富裕層向けの資産管理事業を展開する担当者が、IBM Watsonを活用した外部データから、顧客が持っている株式の価格が下がりそうだと予測。さらにSalesforce Einsteinでその顧客との面談日程を抽出し、面談の日程を前倒しにすることで、早期の協議をするべきだとアドバイスする。

 もう一つのデモでは、General Motors(GM)が提供しているカーナビをプラットフォームに、カーナビでさまざまなアプリを利用するサービスを紹介。ドラッグストアアプリでは、高齢者は常備薬を持っていることが多いことから、それをあらかじめ登録し、購入した薬が切れる前に状況をアドバイスする。

 また、薬局の近くを通りかかった場合には、「この機会に購入しませんか?」とアナウンスすることも可能。このサービスのバックエンドでもWatson、Einsteinが動き、ドライバーが車内で過ごす時間を快適なものとすることが狙いとなっている。

デモで紹介されたGMのカーナビを使ったソリューション