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ビジネス変革のためにクラウドERPが求められている――、インフォア

大規模組立製造業向けSaaS型クラウドERPの新製品も発表

 インフォアジャパン株式会社(以下、インフォア)は15日、「クラウドERPの最新動向」をテーマにしたプレスセミナーを開催した。セミナーでは、同社の国内外での導入支援の知見を元に、実際の実例を交えながら、製造業を中心としたクラウドERPの現状や、採用・実装におけるポイントについて紹介した。また、日本市場におけるクラウドERPの製品戦略にも触れ、大規模組立製造業向けSaaS型クラウドERPの新製品「Infor CloudSuite Industrial Machinery」を、同日より提供開始することを発表した。

 セミナーの冒頭であいさつに立った、インフォアの新造宗三郎代表取締役社長は、日本市場のビジネス戦略について、「現在、日本市場では、グローバル戦略の中で、『業界特化ソリューションの浸透』、『グローバルビジネス展開を支援』、『クラウドソリューションの推進』の3つを重点施策として展開している」と説明する。

インフォアの新造宗三郎代表取締役社長

 また、「この成果として、昨年度は、製造業向けERPなど業界特化ソリューションが堅調に推移し、前年度比30%成長を達成した。受注案件の25%が新規顧客だった。また、グローバルビジネス展開では、既存顧客の新拠点・複数拠点展開の案件が25%を占めた。そして、クラウドソリューションについては、既存顧客の新たなグローバルERP、および新規顧客の基幹システムとして、導入が広がりつつある」と、昨年度の好調な実績を踏まえて、引き続き日本市場でのビジネス戦略を加速させていく方針を示した。

インフォアのビジネス戦略
インフォアの2017年度の実績

 続いて、米Infor バイスプレジデント&北アジア地域担当マネージング・ディレクターのグラハム・マッコーラフ氏が、グローバルにおけるビジネス状況とクラウドERPの導入事例を紹介した。「当社は現在、従業員が1万5000人を超え、世界41か所に拠点を構えている。顧客数は、世界のさまざまな業種で9万社以上に拡大している。この1年間のビジネス概況としては、193の新製品、9179の新機能、1147の新しいインテグレーションを開発した。また、1159人の開発者が入社し、R&Dに8億ドル超もの投資を行っている」と、イノベーションに向けたR&Dに力を注いでいると強調した。

Infor バイスプレジデント&北アジア地域担当マネージング・ディレクターのグラハム・マッコーラフ氏

 クラウドERPの導入事例としては、ファストファッションを展開する香港のTAL Apparelを紹介。「同社は、2009年からInfor M3 V7.1を活用してきたが、『オンプレミスのERPでは将来的なITインフラの拡張要件を満たせない』、『よりファッション業界に特化したERPが必要』、『オンプレミスERPの移行コストが増大』、『非常に高額なハードウェア保守費用』といった課題から、クラウドEPRの導入を決定した」という。「導入にあたっては、Lift&Shiftにより、計画的にオンプレミスからSaaSへの移行を実現。SaaSプラットフォームによって、ハードウェア更新費を200万ドル、年間保守費用を約30万ドル削減した」と、大きな導入成果を挙げていると説明した。

 なお、この事例では、インフォアのクラウドソリューションとして、ファッション業界に特化したクラウドERP「Infor CloudSuite Fashion」、統合プラットフォーム「Infor ION」、コマース・プラットフォーム「GT Nexus」を導入。さらに、Lift&Shiftによる移行の半年後には、ワークフォース管理ソリューションの「Infor Workforce Management」を追加導入している。

 次に、日本市場におけるクラウドERPの動向について、インフォア エンタープライズクラウドソリューションアーキテクトの河西学氏が説明。「日本では、ERPをクラウド化する動機として、『コスト削減』、『セキュリティの確保』、『BCP対策』の3つを挙げる企業が多い。しかし、ビジネスの現場の視点からは、『グローバル化』、『新たなユーザーエクスペリエンス(インターフェイス)の採用』、『分析・リアルタイム性の確保』の3つが本当の動機であると感じている」と、ビジネスの本質的な変革のためにクラウドERP化が求められているのだと指摘する。

 また「特に、製造業では、海外拠点や国ごとの二重処理の防止、システム開発・運用の共有化、予測精度の向上や実績管理などを目的に、データ連携のリアルタイム性確保がクラウドERP化のポイントになっている。また、ERPの完全なクラウド化や移行は困難であるため、既存環境と併存しつつ、走りながら考え、実施できる柔軟なクラウドプラットフォームが不可欠になる」との考えを述べた。

インフォア エンタープライズクラウドソリューションアーキテクトの河西学氏

 こうした市場背景の中で、同社では、製造業を始め、自動車、ファッション、食品飲料など、業種特化型のクラウドERPソリューションを展開。今回、新たに大規模組立製造業向けのSaaS型クラウドERP「Infor CloudSuite Industrial Machinery」を加え、6月15日から提供開始すると発表した。新製品では、産業用機械や大型設備機器分野などに強みをもつ大規模組立製造業向けの機能をクラウド上で統合。グローバル企業に必須となるマルチサイト機能、財務・管理会計、サプライチェーン、生産管理、プロジェクト管理、製品設計、品質管理など、製造業で必要な機能を網羅している。

 さらにオプションとして、サプライヤ連携、コンフィグレーション管理などを用意。サプライヤや代理店を含むグローバル全体のさまざまな経営情報の可視化、ビジネススピードの向上とコンプライアンスの強化を支援する。また、ほかの業界特化型クラウドERPと同様に、業界特化のアナリティクス機能や特定目的向けミドルウェア「Infor ION」、ソーシャル・コラボレーション・エンジン「Infor Ming.le」を備え、これらを組み合わせることで、あらゆる場所でのリアルタイムなデータ活用や、社内外のコミュニケーション円滑化も可能となる。税別価格は約150万円から。

 すでに、国内の企業が先行導入を進めており、「日本を含めたAPAC全域で、オンプレミスの『Infor LN』から、クラウドの『Infor CloudSuite Industrial Machinery』へ完全移行を実施した。グローバル化の促進を目指し、データをAPACで集約化することで、分析・リアルタイム性の確保を実現した」(河西氏)としている。