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国内IT市場でシェア倍増目指す――、デルとEMCジャパンの「5本の矢」戦略

2月1日で機能統合は完了、法人格は維持へ

 デル株式会社とEMCジャパン株式会社は1日、同日からスタートする両社の新年度にあわせて、国内での事業方針を発表した。

 会見には、デルの平手智行社長と、EMCジャパンの大塚俊彦社長が出席。「国内IT市場シェア倍増計画-2×2(ツーバイツー戦略)」を打ち出し、「デルおよびEMCが持つ海外主要諸国と同じシェアにまで引き上げたい。これは、大きく飛躍する目標であり、それに挑戦していくことになる」(EMCジャパンの大塚社長)とした。

国内IT市場シェア倍増計画-2×2(ツーバイツー戦略)

 具体的には、「欧米やアジアでのサーバーのシェアは約20%。だが、日本では11%にとどまる。ストレージは主要国では35%のシェアだが、日本では15%。伸びしろは大きい」(デルの平手社長)とした。

デルの平手智行社長(右)とEMCジャパンの大塚俊彦社長(左)

シェア倍増に向けた「5本の矢」

 また、EMCジャパンの大塚社長は、「デルとEMCの製品ポートフォリオは倍増し、市場カバレッジも倍増する。両社の製品を、一体となって市場に提供していくことができる。シェア倍増に向けて、『5本の矢』の戦略を打っていく。キーワードはパートナーシップ」とした。

国内IT市場シェア倍増計画の鍵は、パートナーシップだという

 5本の矢として大塚社長が掲げたのは以下の通り。

・業界一幅広いエンド・トゥ・エンドの製品、サービスポートフォリオを持ち、機能統合による一貫したオペレーションを推進することができる「デル/EMCのパートナーシップによるワンカンパニー」
・デジタルトランスフォーメーションを実現するコンサルティングアプローチや、ハイタッチ営業の大幅強化による「顧客に信頼されるテクノロジーパートナー」
・地域ごとのパートナーシップ強化やサービス/サポートの拡充による付加価値提供を行う「SI/リセラーとのパートナーシップによる全国カバレッジ強化」
・日本初と日本発を実現するコ・イノベーションや、IoTや組み込みソリューション、HEMSなどを通じて、産業別の取り組みを推進する「ITの戦略的活用を推進する企業とのパートナーシップ」
・セキュアハイブリッドクラウドソリューションの提供を目指す「通信キャリア・クラウドプロバイダーとの戦略的パートナーシップ」

 「デルとEMCジャパンが持つ広範なソリューションを、より価値がある形で顧客に提供する。国内において、顧客のデジタルトラスフォーメーションを推進し、シェア倍増を目指す」(EMCジャパンの大塚社長)と意気込む。

EMCジャパンの大塚俊彦社長

2月1日で機能統合は完了

 一方、2016年9月8日にDell Technologiesが発足してから、約5カ月間にわたる2社の統合について説明。デルの平手智行社長は、「日本においては、2月1日で機能統合は完了した。2月1日からワンカンパニーで推進している」と宣言。「基本姿勢は、米国以外の法人格は存続し、時間をかけて統合していくことになる。各国の状況や顧客ニーズの違いを勘案したものであり、顧客に対する価値提供の継続性を第一に、機能統合を優先している」とした。

デルの平手智行社長

 すでに、メールアドレスの統合や、倉庫の共用を行っているほか、製品ポートフォリオの整合性などを図っていることなどに言及。

 「両社のパートナーのうち、約8割が共同パートナーであり、それにあわせて、パートナー制度を統合し、一層のメリットを提供できる仕組みを構築した。2月1日付けで、パートナー支援組織を統合。戦略はワンチームとして動き始めており、パートナーや顧客の窓口を一本化している。この1年で、デルのパートナー事業部門は5倍に拡大しており、日本の商習慣にあった仕組みに取り組んでおり、パートナーからも高い評価を得ている。パートナーでの取り扱いは、品目によっては1.5倍から2倍になっている」とした。

 また、「社内では、営業インセンティブや人事評価制度の統一、EMCジャパンが12月決算であったものを、デルの1月末の決算期に移行するといったことも行った。組織については、2つの組織をあわせ、重なりがないようにした」と述べている。

製品ポートフォリオは再編も両社の法人格は維持

 製品ポートフォリオの再編については、「デルは技術ラボに力を注いでおり、その成果として、PowerEdgeを搭載したコンバージドインフラストラクチャが、統合から2カ月で投入することができた」(デル・平手社長)、「開発部門の機能統合も行っており、コンバージドプラットフォームやストレージ部門では、デルとEMCの開発者が統合されており、両社のシナジーを追求できる体制が整っている」(EMCジャパン・大塚社長)と述べたほか、「両社が著しく重複していたソフトウェア事業などは売却している。デルの(iSCSIストレージ)EqualLogicについては、現状を維持していくことになる」(デル・平手社長)と述べた。

両社の製品ポートフォリオ

 ただ法人格については、日本においても当面存続させる考えで、「所管という点では、担当領域を分け合った形にしている。製品やサービスごとに担当領域を分担。エンド・トゥ・エンドの幅広い製品を両社でマトリックスマネジメントしていく。すべての顧客、パートナーに対して、ワンボイスで価値を提供することを重視している」(デル・平手社長)。

 デルでは、大手法人、官公庁、地域、コンシューマ、チャネルパートナーを担当。EMCジャパンは、業種別大手法人、グローバル企業、アライアンス、OEM事業を担当する。また、製品領域では、デルがサーバー、ネットワーク、クライアントPC、ワークステーションを担当。EMCジャパンはストレージ、データ保護、SDS、RSA、Virtustreamを担当する。コンバージド・インフラストラクチャーは両社で担当することになる。

 また、「コンサルティングサービスを強化していくのはグローバル共通の課題であり、日本では3000人の社員のうち、約4割がサービスを提供していく人員になる。クラウドやデータセンターの活用、デジタルトランスフォーメーションに関するコンサルティングサービスを強化していく」(EMCジャパンの大塚社長)とした。

各社の担当領域
顧客サポートのフレームワーク

 なお、平手社長は、日本法人の統合時期は未定としたが、「法人格が分かれていたとしても、いずれもマイケル・デルの会社であることには変わらない。統一したビジョンのもとで事業が推進できる」と説明。オフィスの統合については、「現在は2本社制としており、場所も点在しているが、関連する部門同士の統合を開始している。オフィスそのものも統合する方向にしていきたい。検討中である」とした。

 さらに、平手社長は、デルテクノロジーズの基本姿勢についてあらためて説明。「デジタルトランスフォーメーション」、「ワークスタイルトランスフォーメーション」、「セキュリティ」の3つの方針を掲げており、全世界14万人の社員が、全世界180カ国で事業を展開しており、740億ドルの売上高を誇ることを強調。さらに、「デル、EMCジャパンともに、日本において、堅調に業績を伸ばしている。顧客満足度、パートナー満足度も高い評価があり、向上させている。パートナービジネスも拡大している。クライアント、サーバー、ストレージ、オールフラッシュ、コンバージドインフラストラクチャといった領域でシェアを伸ばしている。両社において、日本は最優先投資国と位置づけており、投資が継続的に進められている」などとした。