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企業における変革の実現を支援する――、デルとEMCジャパンが「Dell EMC Forum 2016 Tokyo」開催

両社統合によるメリットや最新の製品・ソリューションを紹介

 デル株式会社およびEMCジャパン株式会社は16日、ANAインターコンチネンタルホテル東京において、プライベートイベント「Dell EMC Forum 2016 Tokyo」を開催している。

 2016年9月7日に、米Dellによる米EMCの買収が完了し、米Dell Technologiesがスタートして以降、国内初の大型イベントで、「LET THE TRANSFORMATION BEGIN-テクノロジーによる変革の開始」をテーマに、デルおよびEMCジャパンの最新テクノロジーを統合した新製品などを紹介した。

 基調講演の冒頭に、デルの平手智行社長と、EMCジャパンの大塚俊彦社長が、2人そろって登壇。米国においては、9月から、新たにDell Technologiesとしての新体制がスタートしたことを報告した。

デルの平手智行社長(右)とEMCジャパンの大塚俊彦社長(左)が、2人そろって登壇した

 デルの平手社長は、「いま、世の中は、デジタルトランスフォーメーションのまっただなかにある。そして、これまでに経験したことがないパラダイムシフトが起こっている。これはすべての企業にとって千載一遇のチャンスであるとともに、脅威でもある。この流れをどう乗り越えるか、これをどう活用するかが鍵である。この変革の流れは誰にも止めることはできない。できることは変革の波の先頭に立つことである」との現状認識を説明。

 その上で、「Dell Technologiesは、デジタルトランスフォーメーションを支援する企業。EMCを中心としたファミリー企業として、変革のスピードを加速し、変革を実現することを支援する」と述べた。

デル 代表取締役社長の平手智行氏

 また、「DellはPCを中核としてスタートした企業であるが、いまでは、サーバーではトップシェアを獲得し、ネットワーク、セキュリティなどにもポートフォリオを拡大している。EMCを統合し、売上高で7兆4000億円を達成し、世界3番目のIT企業となっている。そして、2013年に非上場化し、すべての投資を顧客のために使いたいと考えている点が他社との大きな違いである」などとした。

Dell Technologiesは世界最大の非上場ハイテク企業だという

 一方、EMCジャパンの大塚社長は、「Dell EMCのシナジーによって生まれる価値を最大化したい。幅広い製品ポートフォリオ、優れたパートナーシップ、ワールドクラスのサプライチェーン、継続的な研究開発投資が強みがある。そして、ITトランスフォーメーションを実現するためのポートフォリオを持っている企業であり、それらの多くがトップシェアであり、市場からも高い評価を得ている」と述べている。

EMCジャパン 代表取締役社長の大塚俊彦氏

デジタルトランスフォーメーションの時代が訪れている

 今回の基調講演の主役は、米Dell Technologies Dell EMC シニアバイスプレジデントのブライアン・ギャラガー氏である。

Dell EMC シニアバイスプレジデントのブライアン・ギャラガー氏

 同氏は米EMCにおいて、30年以上にわたり、ストレージ製品の開発に携わってきた経緯がある。

 ギャラガー氏は、「デジタルトランスフォーメーションの時代が訪れている。それは大きな変革であるが、その一方で、ワクワクする時代、エキサイティングな時代が訪れているともいえる。テクノロジーが生活や働き方を急速に変化させており、その変化は多くのチャンスをもたらし、すべての業界を変えることになる」と切り出した。

 そして、「この背景にあるのは、ムーアの法則がいまでも生きているという点だ。18カ月で性能が2倍になるということは、5年では性能が10倍になるということだ。つまり、15年後には、10×10×10で、1000倍の性能向上が図られることになる」と発言。

10×10×10で、1000倍の性能向上が図られる

 さらに、「4000社の経営トップに聞くと、48%の企業において、3年後に自分の業界がどうなっているのかわからないと回答し、92%の企業がデジタルをビジネスに活用することは、成功には不可欠であると考えているが、実際には、なかなかデジタルトランスフォーメーションに踏み出せていない企業が多い。これを実現するためには、人材、セキュリティ、ITという3つの領域に変化を求める必要がある」という点を指摘する。

3年後に自分の業界がどうなっているのかわからない、と回答した企業の経営トップが48%にものぼる

 また、「真のデジタル人材を獲得し、ユーザー体験をモダナイズし、エッジでの意思決定により革新を促進すること、これまでとは異なるビジネス主導型のセキュリティを導入し、ビジネス価値を促進すること、そして、これまではITシステムによってビジネスを稼働させることが中心であったが、これからはビジネスを稼働させるだけでなく、加速させることが大切になる。これからは、従来型ITを稼働させながら、クラウドネイティブの環境を稼働させなくてはならない。2つのアーキテクチャと、2つの運用方法が必要であり、この環境は何年にも渡って共存していくことになる。そのためには、Dell Technologiesのような企業との戦略的パートナーシップが求められている」と述べた。

クラウドネイティブアプリケーションへの投資

製品の活用事例を説明

 ギャラガー氏は、サーバー、ストレージ、コンバージドインフラストラクチャ、フラッシュストレージ、SDS(Software Defined Storage:ソフトウェア定義型ストレージ)、データ保護、仮想化といった数多くの分野において、トップシェアの製品を持っていることを紹介。さらに、これらの領域においても継続的な新製品を投入していることを示した。

 トップシェアを持つ製品の導入事例や活用事例として紹介したのが、IDCフロンティアと東芝だ。

 IDCフロンティア プラットフォームエンジニアリング部クラウドグループグループリーダー兼チーフクラウドアーキテクトの菊石謙介氏は、2014年10月からサービスを提供している「IDCFクラウド」について説明。

 「2015年11月からオールフラッシュクラウドのサービスを開始し、2016年からは新規ゾーンではすべてオールフラッシュとしている。ここに導入しているのが、XtremIOである。IOPSでは約40倍、スループットでは5倍の性能を実現し、顧客からも高い評価を得ている。XtremIOを採用したのは、インライン重複排除およびリアルタイム圧縮を実現すること、デマンドにあわせた性能のスケールアウトを可能にしていること、EMCジャパンのエンジニアによる事前の徹底的な検証が行われたことが挙げられる。超高速の環境を当たり前にし、当社にとってのYear of All Flashを実現した。今後は、データセントリックなプラットフォームへの進化を果たしていく。これまでも以上に強固な関係を続けたい」と述べた。

IDCフロンティア プラットフォームエンジニアリング部クラウドグループグループリーダー兼チーフクラウドアーキテクトの菊石謙介氏
オールフラッシュにより超高速クラウドを実現

 また、東芝 執行役常務 インダストリアルICTソリューション社副社長の下辻成佳氏は、DSSDを活用した同社のIoTソリューションであるSPINEXについて説明。

 「NANDの生産拠点における歩留まり解析による効率化を図るために、SPINEXを利用している。ここでは、AIを活用して、コンピューティング環境が自動的に問題点を洗い出し、問題解決を提案するといった活用を行っている。東芝は、50年前からAIに取り組んでおり、その成果が活用されている。15nmの生産プロセスによるNANDメモリの生産においては、センサーからは800万のデータを一括に取り込み、分析する必要がある。EMCと議論するなかで、大量のデータを、複数のノード間で共有しなくてはいけない場合や、スケーラビリティが求められる際には、DSSDが効果を発揮することがわかった」などとした。

東芝 執行役常務 インダストリアルICTソリューション社副社長の下辻成佳氏

統合による製品の進化

 Dell Technologiesでは、EMCとの統合成果のひとつとして、DSSDをはじめとする新たな製品群を発表しているが、Dell Technologies エマージングテクノロジー部門DSSD担当のジョン・マックール シニアバイスプレジデントは、「ITを取り巻く環境は、新たなタイプやソースを持ったデータが増大しているほか、より複雑なアルゴリズムを活用したり、新たなアプリケーションデータアーキテクチャによる複雑な分析が求められている。また、バッチ処理からリアルタイム処理への変化や、継続的な分析とユーザー利用がある。DSSDによって、ラックスケールのフラッシュを実現し、コンピューティングとストレージが個別にスケールし、最新の分析ワークロードを最適化できる」などと述べた。

Dell Technologies エマージングテクノロジー部門DSSD担当のジョン・マックールシニアバイスプレジデント

 再び登壇したギャラガー氏は、スケールアウトストレージのIsilonが、オールフラッシュ化により、10倍のスループットや10倍のディスク密度を実現し、モダンデータレイクの実現に最適化していること、PowerEdgeを搭載したElastic Cloud Storage(ECS)では約60%のTCOを削減したことなどのほか、VCE VxRailやVCE VxRackによるハイパーコンバージド・インフラ(HCI)の進化、VirtustreamによるモダンITの実現などについても言及した。

 ギャラガー氏は、「顧客が求める理想的なパートナーは、あらゆる課題に対応できる企業である。だからこそ、マイケル・デル(会長 兼CEO)は、DellとEMCを統合した。Dellは、サプライチェーンを持ち、ハイボリュームでサービスを提供していることで知られる企業。それに対して、EMCは、最高のデータセンターテクノロジーを提供し、厳しい要件にも対応することができるテクノロジーの企業である。この統合は、1+1よりも大きなものになる。そして、重要とされるすべてのIT領域において、1位になっているプロダクトを持つことができた。さらに、すべてのサービスを一本化し、3万5000人のサービスプロフェッショナルが顧客をサポートできる。戦略的な連携によって、世界最高の能力を提供でき、それをしっかりとサポート可能な体制がある。あらゆる国のあらゆる業界、あらゆる企業に対して提供していくことができる」と語った。

あらゆるレベルで価値を提供する

デジタル変革はピンチでありチャンスである

 最後に登壇したデル 最高技術責任者CTOの黒田晴彦氏は、「これまでは、ビジネスのためにITを活用したが、今は人工知能をはじめとするテクノロジーを理解した上で、ビジネスを考える形に変わってきている。これがデジタル変革である。デジタル変革はピンチであり、チャンスである。乗り切るしかない」と発言。

 「世の中では、多くのセンサー情報が使われている。これを活用するためのハードウェアが必要である。しかも、ITの上にビジネスが乗っているのであれば、そのハードウェァは止めることができない。そうした環境に対して、Dell EMCでは、どんな形でハードウェアを提供するのか。それは、全世界で安定したサポート環境を実現するグローバルコマンドセンターをはじめとするグローバルスケールや、多様なソフトウェアの稼働を検証して提供するオープン&エコシステム、GE流とトヨタ流の仕組みを融合させた取り組みによる日々の実行と改善、顧客の声を聞けば必ず成功するという姿勢をベースにして、顧客との対話に取り組んでいる」などとした。

デル 最高技術責任者CTOの黒田晴彦氏

 また、インテル インダストリー事業本部クラウド・スペシャリストの土屋建氏は、「インテルは過去50年間に渡ってムーアの法則を実現してきた。いま、インテルは、PCを主軸においた企業から、クラウドや数十億台のネット対応のデバイスを提供する会社へと進化。クラウド&データセンター、メモリ、各種デバイスを結んだ戦略的サイクルといった観点から、デジタルトランスフォーメーションを支えている」などと発言。

 Software Defined Infrastructure(SDI:ソフトウェア定義型インフラ)や、Dell EMCのDSS9000で採用しているラックスケールデザイン(RSD)についても説明したほか、Xeon E5-2600 v4の特徴を紹介し、4年前にXeonに比べて、仮想化スループットが最大3.4倍になっていることなどを示した。

 土屋氏は、「今後もDell EMCと一緒になって、顧客のデジタルトランスフォーメーションを支えたい」と述べた。

インテル インダストリー事業本部クラウド・スペシャリストの土屋建氏