ニュース

シスコ、2017年度の事業テーマは“フルスピードで変革を”

日本独自のソリューション展開を強化しデジタル変革を加速

 シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は12日、2017年度(2017年7月期)の事業戦略に関する説明会を開催した。2017年度は、“フルスピードで変革を(Innovation at Full Speed)”を事業テーマに掲げ、日本独自の統合ソリューション展開によって、顧客企業のデジタル変革を加速していく方針を明らかにした。

 説明会に登壇した、シスコ 代表執行役員社長の鈴木みゆき氏は、まず2016年度の事業概況を振り返り、重点戦略として取り組んでいる「日本市場により根ざした事業展開」、「お客様のデジタルビジネス支援」、「統合ソリューションビジネス強化」の3つの施策について現状と成果を説明した。

 「日本市場により根ざした事業展開」では、国内独自で立ち上げた中小企業向け「Cisco Startシリーズ」が好調に推移しており、「この1年で国内SOHOルータ市場のシェアは16%に拡大し、『Cisco Startシリーズ』の販売パートナーも1757社にまで増加した。導入企業も増えており、製造、小売、医療分野など各方面でユーザー事例が挙がってきている」という。

シスコ 代表執行役員社長の鈴木みゆき氏

 「お客様のデジタルビジネス支援」では、「IoT分野で複数の日本メーカーとパートナーシップ契約を結び、ソリューション構築を進めており、実際にサービス提供できる段階まできている」とし、昨年度のデジタルビジネス支援の実績として、FANUC、ヤマザキマザック、横河ソリューションサービスの3社の導入事例を紹介した。

 そして、「統合ソリューションビジネス強化」については、「課題解決型のソリューションを提案するべく、従来まで製品とサービスに分かれていた営業部隊を一体化した。これによって、シンプルな“One Cisco”の体制で顧客やパートナー企業を支援できるようになり、新規案件の獲得にもつながっている」と述べた。

 こうしたビジネス状況を踏まえて、鈴木氏は、2017年度の事業テーマを“フルスピードで変革を(Innovation at Full Speed)”に設定したと発表。重点戦略である「日本市場により根ざした事業展開」、「お客様のデジタルビジネス支援」、「統合ソリューションビジネス強化」の3つの施策を継続しながら、「顧客とパートナー企業とともに、今まで以上にイノベーションを加速していく」との方針を示した。

シスコの2017年度の重点戦略

 2017年度における「日本市場により根ざした事業展開」としては、「日本市場に適した製品、ソリューションを開発・提供していくとともに、政府が進める働き方改革を支援する。また、エコパートナーシップと東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた投資を拡大していく」考え。

 特に日本市場向け製品・ソリューションでは、オンプレミス向けに「Cisco Startシリーズ」、クラウド向けに「Cisco Meraki」を展開し、中堅中小企業向けのソリューションを包括的に提供する。

 「今後、『Cisco Startシリーズ』の製品ラインアップをさらに拡充する。また、『Cisco Meraki』については、今年末にダッシュボード画面を日本語化する予定で、これを機に拡販に力を注いでいく」としている。

日本市場向け製品、ソリューションの開発・提供

 「お客様のデジタルビジネス支援」の取り組みについては、重点分野として「IoTとデジタル化」、「クラウド」、「セキュリティ」、「次世代サービスプロバイダー」の4つを挙げ、各分野の担当役員が具体的な施策を発表した。

 「IoTとデジタル化」に向けた施策は、シスコ 専務執行役員 戦略ソリューション・事業開発 兼 東京2020オリンピック・パラリンピック推進本部担当の鈴木和洋氏が説明。

 「『IoTとデジタル化』では、製造業と公共の2つの分野を大きなターゲットに設定している。製造業については、多くの有力企業とパートナーシップを結んでおり、工場をIT化する“Connected Factory”から、ビッグデータ分析や稼働ダッシュボードなどを提供する“Connected Enterprise”のフェーズに入っている。今後はこの先のフェーズとして、サプライチェーンの自動化やコラボレーションを実現する“Supply Chain Orchestration”を提案していく。さらに将来的には、MaaS(Machine as a Service)による“New Business Model”の提供を目指す」。

 「一方、公共分野では、京都府との協業展開やスポーツ&エンターテインメントでの実績をベースに、共通プラットフォームを開発し、様々なデジタルサービスを複数のシティ、タウンに提供していく」と、製造業と公共分野にフォーカスしてデジタル化を推進していくという。

シスコ 専務執行役員 戦略ソリューション・事業開発 兼 東京2020オリンピック・パラリンピック推進本部担当の鈴木和洋氏

 次に、「クラウド」と「セキュリティ」に向けた施策について、シスコ 執行役員 最高技術責任者(CTO)兼 イノベーションセンター担当の濱田義之氏が説明した。まず、今年度の「クラウド」の取り組みとして、“クラウド技術の提供”と“クラウドで提供するサービス”の2つをテーマに掲げ、「現在、多くの企業では、多様化するハイブリッドクラウド環境の運用管理が最重要課題となっている。この課題に対して、シスコの次世代データセンターアーキテクチャによって、ハイブリッドクラウドのオーケストレーションと管理を包括したソリューションを提供する。クラウドサービスについては、ハイブリッドクラウドからIoT、セキュリティ、クラウド管理、コラボレーションまで、幅広いサービスを展開しているが、今年度は次世代コラボレーションサービス『Cisco Spark』が新たに加わる。来年上半期には国内にインフラを構築し、国内でのサービス提供を目指す」との計画を明らかにした。

シスコ 執行役員 最高技術責任者(CTO)兼 イノベーションセンター担当の濱田義之氏

 「セキュリティ」については、デジタルビジネスのセキュリティ対策として、“可視性・インテリジェンス・クラウドセキュリティ・遡及的・自動化”の5つの要素が重要になると指摘。

 「この中のクラウドセキュリティについて、年内には『OpenDNSサービス』を国内で提供する。これにより、名前解決でのセキュリティを実現し、場所を問わず、すべてのデバイスを保護することが可能となる。さらに、内部対策の強化として、クラウド上でビジネスアプリを安全に利用できる『CloudLockプラットフォーム』をポートフォリオに加えており、来年上半期の国内リリースを予定している」と、クラウドセキュリティのラインアップを拡充すると説明した。

 「次世代サービスプロバイダー」に向けた施策は、シスコ 副社長 NTTグループ事業統括の井上雅雄氏が発表した。

 「全世界のIPトラフィックは、年間ゼタバイトの時代に突入し、今後4年で2.3ゼタバイトまで増大すると見込まれている。その中で日本は、ネットワークの高速化がさらに進み、2020年には96.8Mbpsに達すると予想されている。また、2020年にIPトラフィックの72%がモバイルまたはWiFiで占められるという予測もある」と、日本特有のネットワークトレンドについて言及。

 「今後、国内のサービスプロバイダーは、ネットワークに要求される容量、スケーラビリティ、品質が一気に高まり、管理やオペレーションがさらに複雑化することが懸念される。この課題に対して当社では、仮想化、自動化、アナリティクス、オープン&プログラマブルをキーワードに、次世代の『サービスプロバイダー ネットワーク アーキテクチャ』への変革を促進していく。そして、サービスプロバイダーと共同で、IoTやスマートシティに積極的に取り組み、地方創生という大きなテーマにチャレンジしていく」との考えを述べた。

シスコ 副社長 NTTグループ事業統括の井上雅雄氏

 最後に、鈴木みゆき氏が再び登壇し、2017年度における「統合ソリューションビジネス強化」の取り組みについて説明した。

 「昨年度に一本化した営業体制をベースに、今年度は統合ソリューションビジネスをさらに加速する。単にハードだけを提供する会社ではなく、サービスを提供する会社へとシフトし、顧客企業のデジタル変革を支援していく。具体的には、サブスクリプションモデルやソフトウェアをバンドルしたソリューションの販売を強化するとともに、業界別の細かなニーズに対応し、日本独自のソリューションを提供する。これにより、顧客企業の従業員のエクスペリエンス、生産性向上、セキュリティの確保を統合的に支援していく」と、日本独自のソリューション提案に力を注いでいくことを強調した。

【お詫びと訂正】文中、濱田義之氏と井上雅雄氏のお名前が入れ替わっておりました。お詫びして訂正いたします。