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シスコ、データセンター内のすべての通信データを可視化して分析する「Tetration Analytics」

 シスコシステムズ合同会社(シスコ)は8日、データセンター内でやり取りされる、すべてのパケット、フロー、帯域利用などをリアルタイムに可視化し、リアルタイムで分析可能なプラットフォーム「Cisco Tetration Analytics」を発表した。

 Tetration Analyticsでは、次のような機能を実現することができる。

・データセンター全体およびクラウド内で相互に依存関係にあるアプリケーションを把握
・アプリケーションポリシーの適用支援(ポリシーの適用効果を実装前に検証する)
・収集したテレメトリ―情報の長期保存によるフォレンジックス(フォレンジクス検索エンジンにより数十億のフローの検索も1秒以内で完了)
・アプリケーション動作の継続的な監視によるリアルタイムな異常検知

 Tetration Analyticsは、ハードウェアおよびソフトウェア(ホスト)センサーが、データセンター内にあるすべてのテレメトリ―情報をラインレートで収集し、ビッグデータプラットフォーム上でリアルタイムに分析することで、インフラ管理に必要な知見を提供する。また、収集したテレメトリ―情報は長期間蓄積され、システムで何らかの問題が発生した場合に備えて、フォレンジックスの機能を実現する。

 また、Tetration Analyticsのデータは、外部アプリケーションでも利用できるようAPIが用意されている。

Tetration Analyticsのアーキテクチャ

 ハードウェアセンサーは、同社のネットワークスイッチ「Nexus 9000シリーズ」(Cisco Nexus 9200-X、Cisco Nexus 9300-EX)をベースとしたアプライアンスで提供される。必要なソフトウェアはNexus 9000シリーズのASICに組み込まれており、全ポートからのフローデータをラインレートで収集する。1台のTetrationアプライアンスで1秒間に最大100万のユニークフローを監視できるという。なお、すでにNexus 9000シリーズを導入している場合には、新たなハードウェアを購入することなく、導入済みのNexus 9000シリーズをハードウェアセンサーにすることが可能。また、今後は対応するハードウェアを増やしていく予定とのこと。

 ソフトウェアセンサーとしては、LinuxとWindowsをサポートしており、監視対象となるサーバーにインストールすることで、プロセスレベルでの監視が可能になるという。

 米Cisco Systems バイスプレジデント Insieme事業部門 プロダクトマーケティングのラジーヴ・バドワージ氏は、現在のデータセンターが抱える課題について、「アプリケーションの展開が迅速化したことによりアプリケーションの依存関係を把握することが困難になっている。また、クラウドの普及などによってデータセンターがブラックボックス化し、可視性が失われている。たとえば、アプリケーションのパフォーマンスが低下した際にもボトルネックをすぐに特定することが難しい」と述べた。

 さらに「スケールアウトによって通信が増大し、防御すべき"面"が拡大している」ことについても言及し、「データセンター内のすべてのテレメトリ―情報を収集して、瞬時に分析する仕組みが求められている」とも話している。

米Cisco Systems バイスプレジデント Insieme事業部門 プロダクトマーケティングのラジーヴ・バドワージ氏

 また、他社の監視および分析のツールと比較した際の優位性について、バドワージ氏は「他社製品の多くはサーバーを中心に情報を収集している。それに対してTetration Analyticsは、End to Endで、データセンター内のすべてのテレメトリ―情報を、パフォーマンスに影響を与えることなく収集して分析できる。ここまで一貫して情報を収集できる製品はほかにない。ゼロ・トラスト・ネットワークの環境を実現するためには、サーバーのみならず、すべての情報を監視する仕組みが必要」とし、Tetration Analyticsの有用性をアピールした。

 シスコでは、日本市場におけるTetration Analyticsのターゲットとして、金融サービス、政府・官公庁、サービスプロバイダなどを中心に展開する予定であるという。現在のところ価格は明らかにされていないが、販売開始時期に改めてアナウンスされる見込み。日本国内での販売開始は、8月を予定している。

 また、今回が初のリリースとなるTetration Analyticsは、オンプレミスに導入するアプライアンスでのみの提供だが、今後はクラウドサービスでの展開も検討してるという。バドワージ氏も「多くのお客様からクラウドでの提供をリクエストされている」と述べ、ており、現状のオンプレミスのアプライアンスのみでは導入しにくい企業であっても、今後の動向に注目する必要がありそうだ。