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NTT、仮想化ネットワーク上のホワイトボックススイッチでTbps級の転送機能を実現

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)は28日、ネットワークスイッチのうち、ソフトウェアを自由に選択・開発できるホワイトボックススイッチを用いて、キャリアネットワーク向け転送機能を実現したと発表した。これにより、キャリア(通信事業者)が提供するTbps級の仮想化ネットワークを、汎用的な通信装置のみで構築できる可能性を示したとしている。

 NTTでは、2015年に策定した「NetroSphere(ネトロスフィア)構想」に基づき、ネットワークの構成装置の汎用化および部品化を推進することで、多様なサービスを迅速かつ高信頼、低コストに提供していくことを目指している。その一環として、高機能な専用機器を用いるのではなく、機能がシンプルな汎用製品を活用することで、ネットワーク構成装置の汎用化を進めるMSF(Multi-Service Fabric)の取り組みを進めている。

 MSFは、ネットワークを構成する各機能について独立に発展可能とするため、各機能をシンプル化した転送機能部(ハードウェア)と、ネットワーク制御部(ソフトウェア)に分離/再定義するネットワークの構成方式。転送機能部は汎用的なネットワークスイッチを最大活用してシンプル化を目指し、ネットワーク制御部はソフトウェアによる柔軟な機能実現を目指す。

 MSFでは、主にデータセンターで活用されている汎用スイッチを用いて、キャリアのネットワークの仮想化(ネットワークスライスの構成)を目指しているが、そのためには「MPLS技術を用いた転送機能」が必要となる。しかし、MPLSによる転送機能は、多くの汎用スイッチのハードウェア側に備わっているものの、ソフトウェア(ネットワークOS)側でその機能を提供しているのは、一部のルーターベンダーのみとなっていた。

 そこでNTTは、ネットワークOS相当のソフトウェアを開発し、ホワイトボックススイッチ上に実装することで、ハードウェアが本来持つ性能を生かす形でMPLS転送機能を実現した。

 このソフトウェアは、他のMPLSルーターとの間でネットワークの経路情報を交換して最適な経路を生成する技術と、MPLS転送に対応したインターフェースを通して生成した経路をハードウェアに書込む技術の2つにより、MPLS転送を実現する。ソフトウェアの各機能は、OSSなどオープンな技術のみで構成され、ソフトウェアの内部構造までも「ホワイトボックス化」する。また同時に、ハードウェアの性能を最大限引き出すアーキテクチャーを採用しているため、ホワイトボックススイッチ上でキャリアグレードの大容量転送(1Tbps/数万経路超)を実現したという。

 この成果により、「汎用スイッチをキャリアネットワークに適用する可能性」が示されることで、装置ベンダーが新しい市場(キャリアネットワーク向け汎用スイッチ)を開拓できるようになり、汎用スイッチの低コスト化が見込まれるとともに、ベンダー間競争による機能追加の活性化が見込まれると説明。一方、キャリアは、ネットワーク構成装置の選択肢の大幅な拡大とともに、キャリア自身でネットワークOS自体に手を入れることも可能となっていき、これによりNetroSphere構想およびMSFが目指すネットワークの汎用化・部品化が促進されるとしている。

 NTTでは今後、NetroSphere構想の実現に向けた各種の検証を行うための実証環境(テストベッド)であるNetroSpherePITをはじめ、実験環境での試験運用やさらなる機能拡充などの検討を通じて技術確立を図りつつ、幅広いパートナーと連携し、これまで以上にオープンに取り組んでいくとしている。