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“あの”三澤智光氏が語るIBMクラウド事業、「日本IBMは、いいポジションで戦える」
SoftLayerとBluemixを主軸として事業推進
2016年7月7日 12:56
日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は7日、2016年度のクラウド事業戦略について発表した。
日本オラクルで執行役副社長としてクラウド事業を統括してきた三澤智光氏が、7月1日付で日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長に就任。新たな立場で初の会見となった。
三澤氏が登壇すると記者席から失笑が漏れるなか、「みなさんも大変な違和感があるでしょうし、私もまだ慣れない新入社員です」と語りながら、「IBMはなにをする会社かということを勉強してみた。米IBMの会長であるジニー・ロメッティが言っているのは、IBMはコグニティブソリューションとクラウドプラットフォームの会社ということ、これは、腹落ちする、わかりやすい言葉である。コグニティブという新たな概念を取り入れた新たなアプリケーションをクラウドで提供していくのがIBMの役割だと理解している」と切り出した。
続けて、日本IBMのクラウドの特徴を「真のハイブリッドクラウドを提供していること、実現を支援するサービスを提供していること、オープンテクノロジーを採用していること」とし、「IBMクラウドのポートフォリオは幅広く、顧客のクラウド導入を全方位でサポートすることができる唯一のベンダーである。数年前のIBMと大きく変化しているのは、オープンテクノロジーを全面的に採用している点」と語る。
さらに、「日本IBMの顧客基盤は堅牢であるが、そこに対してクラウドが入っているのかというと、まだまだ。言い換えれば大きな機会がある。その環境をモダナイズしていけば、日本IBMのクラウド事業は短期的には簡単に伸ばせる。中長期的には、コグニティブによる新たな概念を取り入れたアプリケーションがクラウド事業を成長させることができる。日本IBMは、いいポジションで戦える」と語った。
また三澤氏は、クラウドの環境変化について言及。「いまでは、クラウドが、便利で、安く、大量のデータを取り扱えるということが理解されてきている。また、クラウドネイティブの活用だけではなく、SoR(System of Record)といった従来のコンピューティング環境を、クラウドで利用するという動きが増え、ステップ2、ステップ3へと入り始めている。今後は、コグニティブを取り入れた新たなタイプのアプリケーションが増え、システム・オブ・イノベーション(SoI)の世界が訪れることになる」とする。
続けて、「こうした流れのなかで、SoftLayerによるIaaSを提供するクラウドサービスと、BluemixやWebSphereによるクラウドソフトウェアに分かれていたIBMの組織を、ひとつに統合。IBMクラウドとし、この体制を日本でも推進していくことになる。これを私が担当していくことになる」としたほか、「コンサルティングサービスを提供しているのは、日本IBMの強みのひとつ。コンサルティングサービスを生かして、いまのオンプレミス環境を、クラウドを活用したモダンな環境にシフトしていく」と述べた。
IBMクラウドにおける今後の重点取り組みは?
IBMクラウドの今後の重点的な取り組みとして、SoftLayerとBluemixをIBMクラウドの主軸とした事業推進に取り組むほか、グローバルパートナーシップの実現に加えて、業種、業界別の活用推進を図ることを挙げた。
SoftLayerについては、ベアメタルサービスにより、パフォーマンスの課題解決に強みを発揮できること、各社のライセンスにも柔軟に対応できること、SoftLayerが持つ10Gのグローバルネットワークを無償で活用できることなどを強調。
Bluemixについては、「130以上のサービスを提供。DB2やWebSphereなどのSoRを開発するためのソフトウェアへの対応や、Java Scriptなどの新たなアプリを開発するための対応、ブロックチェーンなどの新たな技術への対応のほか、Watsonによるコグニティブサービスも提供しており、パブリック、デディケート、ローカルといたさまざまな場面で活用できるサービスを提供している。多様なサービスをひとつのプラットフォーム上で展開できるのが特徴である」とした。
さらに、「これまでは、SoftLayerとBluemixが別々のサービスのように見えていた。これはIBMらしいところでもあるが、今後はBluemixの下にSoftLayerを統合し、BluemixからIaaSとPaaSも制御していく」などと語った。
IBMクラウドにおけるグローバルパートナーシップの推進強化では、1)2016年2月にはVMwareとの連携を発表し、vSphereやNSXなどのすべてのライセンスを、IBMクラウドからワンストップで、CPU単位の月額課金を可能にしていること、2)コンバージョンレスの環境を活用しVMwareの環境をハイブリッドでも実現していること、3)SAPとの連携では、IBM Cloud for SAP Applicationスタートアップバンドルによって、S4/HANA Simple Financeなどの最新製品において、あらかじめ構築された環境を利用し、3~5営業日で開発・テスト環境を提供していることなどを紹介した。
またフォーチュン500社のうち、85%の企業でIBMクラウドプラットフォームが採用されていることをアピールしたほか、グローバルに48拠点のクラウドデータセンターを開設し、直近では韓国・ソウルやノルウェー・オスロにもデータセンターを展開。オンプレミスで動いていたものをすべてクラウド上に展開している、といった強みも示した。
Bluemixにおいては、毎週2万の新規アカウントが増加しており、PaaSの標準なサービスに位置付けられていることを強調する一方、日本においては、フィンテックやブロックチェーンに対する期待値もあり、金融業界での採用が進んでいることや、製造・自動車、通信・メディア、公共などの日本の名だたる企業で採用されていることを紹介している。
また、SoftLayerデータセンターのダイレクト接続サービスを拡充することで、顧客およびパートナーのデータセンターを接続し、全世界のデーセンターバックボーンを活用できる環境を提供。年間1000回を超えるIBMクラウドのイベントが開催されていること、5000人以上がIBMクラウドコミュニティに参加していることなどを示した。
なお日本IBMでは、IBM Connectシリーズの一部を、2016年12月まで無償提供すると発表した。
無償提供するのは、API管理・運用ソフトウェアのIBM API Connect、WebSphereユーザーのAPI公開を支援するIBM WebSphere Connect、業務ユーザー向けアプリ連携ソリューションのIBM App Connectのほか、Business Orerations Connect、IBM DB2 Connect、IBM DataWorks、IBM z/OS Connectの7つのAPI。
オンプレミス環境にあるアプリケーションやデータなどの既存資産と、IBMクラウドの円滑な連携、APIの公開により、新たなクラウドサービスの開発を支援する。
「いまのオンプレミス環境を、クラウド時代に活用できるようにするためのサービスになる」とした。