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日本マイクロソフト、2017年度は「顧客のデジタルトランスフォーメーションを支援」
平野拓也社長が事業方針を説明
2016年7月5日 13:47
日本マイクロソフト株式会社は5日、2016年7月1日から同社2017年度(2017年6月期)がスタートしたのにあわせて、新年度経営方針を発表した。
日本マイクロソフトの平野拓也社長は、現在、32%のクラウド比率を2017年度末までに50%に引き上げる計画を改めて強調。
「クラウドユーザーが増加しており、日本においても、毎年1.5倍のスピードでデータセンターのキャパシティを増やしている。クラウドの構成比が2016年度第4四半期で32%となったのは、前年同期の2倍の規模。これをさらに加速させていく」としたほか、「クラウドの比率を高めることで、顧客のデジタルトランスフォーメーションに貢献できる。たとえば、ビッグデータを活用したビジネスへの貢献を考えた場合には、クラウドの活用が必要であり、これまでの製品やサービスの提供に留まらない提案が求められている」と、クラウドビジネスの強化が、同社の事業拡大につながる姿勢を示した。
だが、「オンプレミスが適した領域もあり、クラウド比率は100%を目指すものではない」とも語っている。
さらに、「2017年度は、デジタルトランスフォーメーションが重要な取り組みになる」とし、「コグニティブサービスにおけるイノベーションに注力。最先端の技術を生かし、コスト削減だけではなく、ビジネスの推進に、どう貢献するのかといったことを追求する。CEOの80%が、デジタルは経営にとって最重要テーマだとしている。ここに、もっと貢献していくことがわれわれにとってのテーマである。顧客のデジタルトランスフォーメーションのために、しっかりと支援を行い、労働生産性の向上、日本の競争力向上に貢献したい」と述べた。
コグニティブサービスでは、知識、言語、音声、視覚、検索といった5つの領域をカバーしていることを示しながら、「画像における誤認識は3.5%。それに対して人間は5%であり、マイクロソフトの技術は人間を上回っている。また、言語サービスでは、すでに50言語に対応することができる。これらをAPIで提供する形で市場に出していくことになる。日本でも大手金融機関が機械翻訳の活用を検討している」などと語った。
2017年度は6つの重点分野に注力
2017年度における重点分野としては、「お客様のデジタルトランスフォーメーションの推進」「クラウド利用率の増加」「データカルチャーの醸成とデータプラットフォーム(SQL Server)の拡大」「法人分野でのWindows 10の普及」「最新デバイスによる新たなエクスペリエンスの実現」「クラウド時代のパートナーシップ」の6点を挙げる。
「お客様のデジタルトランスフォーメーションの推進」では、マイクソロフトのユーザーとその先の顧客がつながり、顧客体験を提供する「お客様とつながる」、優れた人材の確保やスキル向上、生産性向上による「社員にパワーを」、オペレーティングモデルの変革による「業務を最適化」、新たなサービスや製品が受け入れられるためのビジネスモデルを活用した「製品を変革」の4つのキーワードを掲げた。
その上で、「ワークスタイル変革」「セキュリティ」「グローバルオペレーション」の3つの注力シナリオによる顧客支援のほか、「エンタープライズサービスを軸にした変革支援」「業種向けソリューションの拡充」を進めるとともに、これらの分野におけるパートナー連携の強化に取り組む考えを示した。
2つ目のワークスタイル変革では、「2016年度に開催したテレワークウイークにおいて、650社を超える賛同法人が参加。さらに、ワークスタイルにおける厚生労働大臣賞の受賞や、働きがいのある会社として1位になるといった実績も出ている。今後も、ワークスタイル変革を一歩ずつ進めていく考えであり、5月1日付けで就業規則を変更。テレワークの回数制限、場所の制約を取り払い、コアタイムを廃止した。社員の働きがいをあげるための取り組みを行っていく」などとした。
セキュリティに関しては、「セキュリティは、ITの課題ではなく、経営の課題である。今年、一番注力していくことになる」と前置き。すでに日本マイクロソフトとして70人の専任体制で対応していることや、米本社のセキュリティ専門部隊であるエンタープライズサイバーセキュリティグループに対応したビジネスユニットを新設する考えを表明した。
さら同組織を通じて、テクノロジーコンサルティングやインシデント対応などを行っていくという。また、グローバルオペレーションでは、マイクロソフトがグローバルで導入しているスコアカード制度などの仕組みを提供。すでに中部電力が導入することが決定しており、国内企業に対する提案を強化する。
またエンタープライズサービスでは、日本マイクロソフトのコンサルティング部門により、効果的にデジタルトランスフォーメーションが行える支援を構築。米本社と連携した最新テクノロジーの導入と展開、コグニティブサービスの提案などを通じて、顧客の経営変革を支援する。「米本社のリソースを活用するとともに、10人のデジタルアドバイザーにより、デジタルアドバイザリーサービスを提供。今後増員していくことになる」という。
業種向け展開では、「製造」「金融」「流通・小売」「政府・自治体」「先端研究」「医療」の6分野に重点をおいた取り組みを行い、「今後2~3カ月以内に、クラウドインダストリーソリューションを、15人体制で新設。パートナーとともに業種ごとのシナリオを提案していくことになる。特に政府向けの取り組みについては、2016年度にクラウドセキュリティゴールドマークを取得しており、政府が活用するためにパブリッククラウドに求める要件が揃ってきたと判断している。その点で、2016年はガバメントレディクラウド元年といえる。個人情報保護の国際標準に準拠している点も、政府向けの提案では強みになる。政府に対するソリューション提案を強化したい」と語った。
2017年度末までにクラウドの構成比率を50%へ
さらに、「クラウド利用率の増加」では、2017年度末までにクラウドの構成比率を50%に引き上げる計画を軸に、「喜んで、安心して、利用してもらえるクラウドを継続的に提供する」とコメント。
「データカルチャーの醸成とデータプラットフォーム(SQL Server)の拡大」では、「日本の企業はデータ活用が苦手である。業務効率化、事業継続性、業務の可視化といった点で、データ活用は重要であり、ビジネスを動かす原動力になる。Azureだけでなく、SQL Serverも提案し、ハイブリッド、オンプレミス、クラウドをしっかりと活用してもらたい」と述べた。
また「法人分野でのWindows 10の普及」に関しては、8月2日にWindows 10 Anniversary Updateを公開することに触れ、「これにより、さらにセキュリティが拡充され、法人に対しては大きなメリットが生まれる。法人での利活用を促進したい」としたほか、「最新デバイスによる新たなエクスペリエンスの実現」においては、PCやタブレットに加えて、Windows 10 Mobileによりフォームファクターを充実。選択肢を増やすことができる」と述べた。
そのほか「クラウド時代のパートナーシップ」としては、「デジタルトランスフォーメーションを念頭においてたパートナー連携を進める」とし、「2016年度には、CSP(クラウドソリューションプロバイダー)に参加した企業が600社に達した。これを2017年度には2倍にしたい」と語った。
2016年12月までを目標に、パートナーをリクルーティングする部門を立ち上げる計画も明らかにした。同部門では、クラウドプラットフォーム、データプラットフォーム、クラウドアプリケーション、セキュリティといった4つのシナリオごとに、パートナーをリクルーティングし、養成することになるという。
Windows 10の“無償アップグレード騒動”ではお詫びも
2016年6月30日までの同社2016年度の取り組みについても振り返った。平野社長は、日本マイクロソフトにとって創立30周年の節目を迎えたことに触れながら、「徹底した変革を推進してきた1年であった。PCを核とした考え方から、人を核とした考え方へ移行し、販売重視から利用価値重視へとシフト。変革を進めるパートナーとの協力関係を構築し、Windowsに留まらない新たなエコシステムへの取り組みと、過去にとらわれず、変革と挑戦に取り組むという基本方針に取り組んできた。これはこれからも変わらない。チャレンジャーのマインドセットを持って、社内から改革していく」と語る。
一方、SQL ServerのLinux対応、Surface Bookの投入、HoloLensによる新たなデバイスの提案、LinkedInの買収などの実績に触れながら、「プロダクティビティとビジネスプロセス、インテリジェントクラウド、革新的なパーソナルコンピューティングという3つのアンビションに取り組んでいく」と述べた。
さらに、Windows 10の無償アップグレードに関する一連の騒動についても言及。「Windows 10は、喜んで使ってもらえることを目指したものであり、セキュリティや機能でも高い評価を得ている。また主要な企業の8割が、Windows 10の導入検討を行っている」と前置きしながらも、「無償アップグレードに関しては、多くのご意見とともに、不満の声をもらった。通知内容のわかりにくさもあり、同時に自動アップグレードの仕組みによって、ご迷惑をおかけした。情報発信という点では、不十分であったという反省もある」と述べた。
また、その後の対策として、「コールセンターは4倍に増強することで、サポート体制を強化。私自身も個人的に、米本社にフィードバックを行い、7月1日から通知内容を変更した。消費者庁をはじめ、政府機関とも連携して、一般ユーザーへの告知を行い、われわれだけではカバーできない人たちにも告知できた。今後も政府機関と連携していく。今回の事態を真摯に受け止めて、迅速な対応を行い、情報発信の質向上を心がける」と語った。
そのほか、Windows 10 Mobileが国内市場において、11社から13機種が発売されていること、HoloLensでは、日本航空がアジア初の導入企業として取り組んでいること、日産自動車やトヨタ、ソフトバンクなどでは、IoTやAI、機械学習を活用して、コネクテッドカーやロボティクスで実績が上がっていることを示した。
「IoTにおいては、東京エレクトロンデバイスと共同で、ビジネス共創ラボを開設し、すでに130社以上が参加している」としたほか、ISVとの連携強化、3400社のスタートアップ企業にBizSparkを提供していることなども示した。
一方で、マイクロソフトが取り組んでいる「Growth mindset」による社内文化と人材育成についても言及。「顧客本位の姿勢とともに、前例や常識にとらわれない、常に挑戦する社内文化に徹底して改革する一方、人種や性別にとらわれず、助成が活躍できるダイバーシティ&インクルージョンの実現、中途入社が多いことから社外の文化を取り入れながら、縦割りにはならないOne Microsoftの実現を目指す」などと語った。