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SAPジャパン、HANAの最新リリース「SPS12」 ミッションクリティカルシステム向けに機能を強化
2016年6月2日 11:27
SAPジャパン株式会社は5月31日、SAP HANAプラットフォームの最新リリース「SPS12(サポート・パッケージ・スタック12)」を発表した。同社ではSPS12を「ミッションクリティカルシステムのための強固な基盤」と位置付けており、「キャプチャ&リプレイ」などの機能追加や、Hadoopなどのオープン技術との連携をより深める機能拡張を実施している。
SAPジャパン プラットフォーム事業本部 エバンジェリストの松舘学氏は、「ITのシンプル化」「インサイトの獲得」「イノベーションの実現」を軸にしたSPS12の特徴を解説した。
これらの主要なイノベーションの中でも、キャプチャ&リプレイが最大の特徴と松舘氏は述べている。キャプチャ&リプレイは、運用中の本稼働システムのワークロード(SQL クエリ)をキャプチャし、別のシステム上で実行することができる機能だ。
システムをアップグレードする際には、事前に実際のワークロードをシミュレーションし、稼働に問題が発生しないことをテストする必要がある。しかし、このテスト環境の準備は運用によってカバーされていることが多く、システム管理者の負担になっている。ここで、今回提供されるキャプチャ&リプレイの機能を利用すると、システムの機能追加や変更を行う際のテスト環境を、簡単に準備することができるようになるという。なお、キャプチャ&リプレイはクラウドでベータプログラムを実施している。
オープンソース技術との連携については、Sparkの管理ツール「Ambari」との機能統合の拡張、分散メッセージ基盤「Apache Kafka」との統合などを実施。さらにHadoop向けの機能も新たに追加されている。また、グラフ処理機能も拡張されている。これまでもベータ版として提供されていたグラフエンジンだが、今回のSPS12から正式に採用されている。
クラウドへの対応も拡張された。Amazon Web Services(AWS)の新しいX1インスタンスを利用し、2TBまでの大規模インメモリシステムの本番稼働運用をサポート。さらに、これまでテスト環境での利用のみのサポートだったMicrosoft Azureでも、448GBまでのインスタンスで、本番稼働環境での利用をサポートするようになるという。
SAPジャパン バイスプレジデント プラットフォーム事業本部長の鈴木正敏氏は、「HANAの発表から5年以上が経過し、いまやHANAはSAPのソリューションの基盤の技術になっている」と述べ、すでに同社のポートフォリオの50%以上はERP以外の分野となっていることを明らかにした。
また、さらに多くのユーザーを獲得するため、小規模なシステム向けにメモリ容量を32Gバイトに抑えた「Edge Edition」が、間接チャネルを通じて提供を開始するという。Edge Editionについて鈴木氏は、「中堅中小規模の企業のほか、大企業の部門導入のニーズもある」と述べている。
なお、リリースおよびメンテナンス戦略についても、変更が発表されている。HANAの環境を最大3年間運用するか、もしくは従来通り最新のSPSを年に2回の頻度で適用するか選択することができるようになる。ミッションクリティカルな基幹システムにおいては、頻繁なソフトウェアアップデートを実施するよりも、長期的に安定した稼働環境を望む声が多いことから、今回の変更に至ったという。