インタビュー

ティントリCEO、「仮想マシン単位で管理できることが強み」

Tintri 会長 兼 最高経営責任者(CEO)のKen Klein氏

 米Tintriは、仮想化環境に特化したストレージアプライアンスを開発するというミッションを掲げ、2008年に創業した企業だ。現在世界で約300人の社員を抱え、顧客数は約500社。日本でもユニアデックスやNTTコムウェアなど約50社の顧客が存在し、その大半がすでに本番環境で製品を稼働させているという。同社は2013年から2014年にかけての1年で2倍以上の成長を遂げており、2015年には株式公開(IPO)を予定している。

 Tintriの製品は、約40%がサーバー仮想化環境、約30%がデスクトップ仮想化環境、残り約30%がプライベートクラウド環境で利用されているという。中でも特に「クラウド環境におけるビジネスが急成長中だ」とTintri 会長 兼 最高経営責任者(CEO)のKen Klein氏は話す。「Tintriの製品は、クラウドで必要とされる性能、自動化機能、スピード、スケール、経済性をすべて備えている」と語るKlein氏に、同社の強みや今後の方向性を聞いた。

仮想マシン単位での管理が可能

 Klein氏は、従来のストレージベンダーと比べて同社が優れている点として「他社の製品のようにLUNベースで管理していないことだ」と話す。複雑なLUNマネジメントが必要ないため、管理が大幅に簡素化されるのだという。また、Tintri製品は他社製品に比べるとコストメリットも大きいそうで、「われわれの製品は、EMCやNetAppのような伝統的なストレージベンダーと比較して、設備投資面で約10倍のコストが削減でき、運用面では約60倍のコストが削減できる」と、Klein氏は説明する。

 さらには、仮想マシン単位で運用管理の自動化ができることも大きな利点だとKlein氏。「他社製品は、ブロック単位での管理は可能でも、仮想マシン単位では何も見えない。仮想マシン単位で管理ができなくては、アプリケーションが最適に動くよう各仮想マシンにリソースをあてがうことができない」。

 また、クラウド環境ではさまざまなハイパーバイザーが利用されているが、「すべてのハイパーバイザー上の仮想マシンが見えている必要がある」とKlein氏は話す。そこでTintriでは、これまでのVMware ESXのサポートに加え、今回新たにRed Hat製品もサポートするようになった。12月には、MicrosoftのHyper-Vもサポートするという。これで主要な仮想化環境にすべて対応し、「クラウドユーザーのほとんどがサポートできるようになる」としている。

Red Hat Enterprise Virtualizationに新たに対応。Hyper-Vの対応も予定する

IPOを目指す背景とは

 すでにTintriには1億3500万ドルの資本金があり、新たな資金は必要ないとしているが、2015年にはIPOを目指している。その理由についてKlein氏は、「会社の認知度と信頼性を高めるためだ」と話す。今後のビジネスの成長に向けては、規模の大きな取引が不可欠となる。その際、上場していることにこだわる顧客もいるためだという。

 一方、ユニークな技術を持つ同社であれば、これまでに買収のオファーもあったに違いない。買収ではなくIPOを選んだ理由については、「買収されて大手企業の一部となるよりも、独立した企業でいることの方が株主価値が上がると考えた」としている。また、Klein氏はこれまでにも企業を売却した経験があり、その経験から「あまり買収されるのは好きではない。できれば買収されない企業を作りたかった」と述べた。

 「一部の企業は買収されるべくして存在している。しかしTintriでは、すばらしい製品を開発し、非常に優秀な人材を雇い、ユニークな企業カルチャーを作り上げている。独立した企業でいるための環境がそろっているのだ。他社とは明確に差別化できる要素があり、独立した企業を作り上げる責任があると考えている。1企業として次世代のすばらしいストレージ企業を作ること、これが私の目標だ」(Klein氏)。

 Klein氏は、「投資家への価値提案は3つある」としている。それは、粗利益、成長率、顧客満足度のすべてが非常に高いということだ。

 成長率に関しては、2013年から2014年の1年で115%、2013年第1四半期と2014年第1四半期では140%の成長を遂げているという。また、顧客満足度は100%で、返品は一度もなくリピート率も高い。ほとんどの顧客が最初に製品を購入してから1年半以内に、初期購入時の2.7倍の投資をするという。

顧客満足度が高く、リピート率も高いのが特徴という

 粗利益が高いのは、「ソフトウェアの知的財産を数多く持っているためだ」とKlein氏。ハードウェアは差別化が困難な上、粗利益も低くなりがちだ。ソフトウェアに差別化要素を持つことこそ、会社の強みにつながるとKlein氏は説明する。「競合が強みとして挙げているような重複排除や圧縮技術などは、当たり前の技術で差別化にはつながらない。仮想マシンをそのまま管理できることがわれわれの差別化ポイントで、それが高い粗利益につながっている」(Klein氏)。

 事実、同社の粗利益は約70%にのぼるという。「上場している企業は粗利益が60%以上あることが求められる。われわれはこの基準を十分にクリアしており、一般の投資家が興味を持つようなビジネスモデルも持っている。だからこそIPOするにふさわしいと考えている」とKlein氏は言う。

今後の成長に向けて

 成長著しいTintriだが、さらなる成長に向けては今後どのような戦略があるのだろうか。Klein氏は、「まず製品ロードマップに今後も投資を続ける」としている。その詳細は明かさなかったものの、「ソフトウェアの差別化に向けて、今後1年~1年半の間にすばらしいロードマップを用意している。サービスグループ機能はそのひとつだ」と話す。

 また、チャネルの拡大も予定しているという。同社は、8月27日に富士通とのパートナーシップを発表したばかりだが、「日本でも今後さらに新しいパートナーシップを発表する予定だ」とした。

 そして、「従業員と企業カルチャーにも投資する」とKlein氏は話す。同社が企業カルチャーとして挙げているのは、「CEE-IT」。つまり、C=Customer(顧客中心の製品を作ること)、E=Excution Driven(やると言ったら100%やり遂げること)、E=Excellence Fueled(優秀な人材で優秀な製品を作ること)、I=Innovation Obsessed(イノベーションを繰り返すこと)、T=Team Oriented(チームワークがとれていること)である。

 Klein氏は、「良い企業を作り、成長させるには、強い企業文化が必要だ。そのためには優秀な人材が必要で、今後もグローバルで優秀な人材の採用を進める。すばらしい人がすばらしい企業を作るのだから」と述べた。

Klein氏氏が企業カルチャーとして挙げたCEE-IT

沙倉 芽生