【BT APAC メディア デー】アジア・太平洋地域の多国籍企業にビジネス照準を合わせたBT


 英BT(British Telecommunications Group)は、9月9、10日の両日、香港で「BT アジア・パシフィック アナリスト・メディア デー」を開催。この中で同社は今後、アジア・太平洋地域において展開するビジネスに最大限注力していくことを明らかにした。

総売り上げ安定の中で確信をもった将来投資

BT アジア・パシフィック アナリスト・メディア デーが開催された会場。参加者たちの熱心な質問が続く

 BTは1896年にロンドンで産声をあげてから、すでに100年を超える歴史に支えられた企業だ。この間、これまで世界中いずこの大手電信電話会社も経験した幾多の苦節をもふまえ今日に至るが、現在では、世界170カ国でコミュニケーション・ツールやサービスを提供するプロバイダーにまで成長、変ぼうを遂げている。

 現在同社は、英国内外のグローバル企業にブロードバンドおよび国際通信ソリューションを提供するBT Global Servicesをはじめ、英国内の政府および公共団体へサービスを提供するBT Retail、通信事業者にネットワーク・キャパシティとコール・ターミネーション・サービスを提供するBT Wholesale、通信事業者にラストワンマイルのアクセスサービスを提供するOpenreachといった、基軸となる4事業グループを展開。

 さらに、BT Groupの研究やテクノロジー、ITオペレーションを担当するBT Exactを含めたBT Groupとして、グローバルに多角的な事業を展開している。

 それら事業は、市内・長距離・国際通信サービスをはじめブロードバンドおよびインターネット・サービス、FMC(固定/移動通信の融合)、IPTV、ネットワークITソリューションなどに集約されている。

 そうした中、2010年3月末現在のBTグループ総売り上げは、209億1100万ポンド(約2兆7200億円)で、対前年比マイナス2%と、わずかに前年を下回ったものの、同社ではこの実績に「成長への弾みがついた」と確かな手ごたえを感じとり、今後の投資を中核に据えた多彩な新戦略に足場を固めているところだ。

アジア・太平洋地域への投資で、グローバル多国籍企業の成功をバックアップ

 BTが将来に向けて投資すべき対象は、地元英国における光ファイバー・ネットワークの浸透をはじめ、IPTV事業、SME、ブロードバンド関連事業、新サービス/新製品/新プロポジション、ネットワーク関連の向上、そしてアジア・太平洋戦略などまで、幅広い。

 このためにBTでは、2010年度から2011年度にかけて、総額200万ポンドの投資を予定しているという。こうした投資対象の中でも、アジア・太平洋戦略が、同社のもっとも重要な柱に位置付けられているのだ。

 アジア・太平洋戦略に向けた先鞭(せんべん)は1985年につけられており、まず香港に初の事業所を設立した。次いで同年、東京にも設立、これまでに17都市に及んでいる。現在5000人以上のBT従業員がこの地域に配置されているほか、間接雇用契約の従業員は2万5000人に達している。また事業は、香港はじめ豪州、中国、インド、日本ほか18カ国にわたっている。

 加えて、顧客サービスのために、約1億ドルを投資して、24時間365日のBT地域サービスセンターやセキュリティ・オペレーション・センター、リサーチ・センターなどを設置し、支援体制を固めた。

 なおCisco SystemsやAvayaとのテクニカルパートナー提携では、常時、最新ネットワーク技術投入によるサポートを目標に掲げる。日本でのパートナーシップも、KDDIとのジョイントベンチャーのほか、ITホールディングス、日立製作所が注目されている。

300人の人材投入などでアジア・太平洋地域における戦略を強化

 BTのアジア・太平洋地域におけるビジョンは、同地域でビジネス展開を目指すグローバル多国籍企業たちが成功をおさめるために、いついかなる場所で運用しても、常に同様な効果を生み出しうる提案やプロフェッショナル・サービスを提供し続けること。そして、その結果、この分野でナンバーワンのプロバイダーを目指すという点にある。

 このたびの「BT アジア・パシフィック アナリスト・メディア デー」では、新たに、同地域における約300人の人材投入およびインフラ構築、サービス・ポートフォリオの拡充などを、投資プランの第1フェーズとして明らかにした。

 それによると、約300人の人材投入の目的は、これまで全世界の同社顧客に提供してきたキーポートフォリオやネットワークITサービスを、この地域の顧客に対しても提供できるようにするため。具体的なサービスとしては、まず、同社が力点をおくコンサルティング・サービスがあげられる。

 これを提供することにより、顧客サイドの事業環境最適化への支援を強化。加えて、このコンサルティングをふまえて、トレーディング・システムやグローバル・イントラネットなどファイナンス・サービス、グローバル・マネージメントを可能にするモビリティ・サービス、グローバルでの統合を可能とするアプリケーション・サービス、人材や資産譲渡、セキュリティ、ヘルプデスクなど経営効率の改善サービス、パートナーと提携したグローバル調達を可能とする最新通信機器サービス、ワンストップでシンプルな管理が可能なテレフォニー・サービスなどを提供するという。

 これらネットワークITサービスは、BTの豊富な知識とその歴史で培ってきた経験を踏まえ、グローバルネットワーク環境のもとで展開されているところに特徴がある。

 特に第1フェーズでは、音声IPサービスやマネージド・セキュリティ、ユニファイド・コミュニケーション、コンタクト・センター向けサービス、モビリティ、データセンター・サポートなど各地域マネージド・ネットワークITソリューションが強化されることになっている。

 また、BTでは顧客向けに、より最先端テクノロジーや提案などネットワークITサービスを体感できるよう、新規カスタマー・テクノロジー・ショーケース・センターを北京はじめデリー、香港、シンガポール、シドニーに開設するとした。

ケビン・テイラー氏
トッド・ハンコック氏

 この地域で15年にわたりビジネスをし、香港の英国商工会議所でも活躍する、BT グローバル・サービス アジア・太平洋地域マネジング・ディレクターのケビン・テイラー氏によると、「当社顧客の80%以上が、アジア・太平洋地域に重要な意思決定者を配置し、投資をしている」と、この地域における市場性を、確信をもって語る。

 特に人材確保には重点をおいており、その第1フェーズとして、前述のように300人の人材確保を行うことにしたが、「これは、最近顧客の増大が著しいインドや中国、あるいは次世代ネットワークに取り組むオーストラリアに向けた戦略のため」と説明する。

 また、同地域 ビジネス・オペレーション バイス・プレジデント兼BT グローバル・サービス BT中国社長(代理)のトッド・ハンコック氏は、この地域の戦略を進めるにあたって3つのキーポイントを指摘する。「第一がまずは顧客ありき。彼らの声をしっかり聞かねばならない。第二が、競合との差別化のためにプロフェッショナル・サービス提供や優れた人材でポートフォリオを拡充させなければならない。そして第三がオペレーショナルはグローバルに行うが、デリバリーは現地でしっかり行わねばならない」。

 こうした取り組みは容易ではないが、「当社は、これまでビジネスを行ってきた各国によって、異なる規制関係に学ぶことができた。すなわち有利な展開もあったが数々のつらいビジネスに遭遇した経験もある。また多国籍企業の場合、買収などに伴うネットワークの複雑化が引き起こす問題が発生する。これに対処することも大変な作業が伴う。こうした痛みをBTは十二分に経験済みだ」と、同社の経験値から培うことができた今後の戦略に自信を示す。

 BTのアジア・太平洋地域に対する戦略スタンスはいま、本格化するクラウド戦略をも見据えながら、プロフェッショナル・サービス提供能力を強化、現地人材や新しいスキルセットの提供などで、顧客のビジネス・インフラを、さらにネットワーク中心型環境へ移行させていくための支援を促進させることとしている。

 同時に、アジア・太平洋地域で利用可能なコストあるいは品質などのメリットを生かしたグローバル・サービス・モデルも構築し、チャネルへの投資や現地パートナーとの密な連携のもと、この地域での営業活動に最大限注力していくかまえだ。

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