「企業のグローバル展開を共同で支援」、ITHDと英BTの提携の意図
ITホールディングス株式会社(以下、ITHD)と英British Telecommunications(以下、BT)は6月25日、次世代ITサービスの提供と開発、営業などに関する業務提携を発表した。国内でのアプリケーション事業などに強みを持つITHDと、テレコムキャリア出身のITサービスプロバイダとしてワールドワイドで事業を進めるBTの提携には、どういう意図があったのか。ITHD 事業推進本部 事業企画部長兼国際部担当部長の黛文彦氏と、BTジャパン株式会社 営業統括本部 ビジネス開発部 統括部長の平山貞元氏に話を聞いた。
提携の趣旨と背景 |
提携で取り組む領域 |
両社が提供するグローバルソリューションの例 |
提携の理由を、「海外事業を戦略的に進めていこうという中で、海外での日系企業を支援できる体制の整備を検討していた、というのが1つの理由。また、2011年に4000億円の売り上げという目標を達成するためには、新規事業を推進する必要があり、次世代のITサービス開発をともに手掛けられるパートナーを模索していた」と語るのは、ITHD 事業推進本部 事業企画部長兼国際部担当部長の黛文彦氏。一方のBT側は、BTジャパン株式会社 営業統括本部 ビジネス開発部 統括部長の平山貞元氏が、「当社ではITサービスプロバイダへ転換する中で、日本を含めてアジアを伸ばしたいという戦略があったが、日本において独自にビジネスをするにはコストも時間もかかる。それを補完するパートナーを探していた」と、提携の背景を説明する。
今回の提携では、具体的な領域として大きく3つにフォーカスしている。1つ目は、日系企業の海外進出の支援。黛氏は、「当社ではネットワークインテグレーションやデータセンターの提供、アプリケーション開発などをトータルで提供したが、海外というキーワードが出ると、お客さまご自身で、となってしまっていた」と、これまでの問題点を指摘。今回の提携で、BTが日本国外での展開を支援することにより、ワールドワイドで同様のサポートを展開していけるようになったと説明する。
また、BTが持つサービスも、積極的に活用する。例えば、日本企業の場合はガバナンスが弱く、ITの導入・契約なども、海外の現地法人に任せっきりで管理されていないケースがよくあるという。こうした際に、すべてのIT機器やソフトウェアを棚卸しし、分類して最適化するBTのコンサルパッケージ「IT Audit」を適用することで、状況を的確に整理可能。平山氏は、「海外拠点があまりにも把握されていないケースが、日本企業には多いのが現状だ。現地法人ごとにバラバラだった契約を一元化するだけで、劇的にコストが削減できたケースもあった」と、提携で得られる顧客企業のメリットを説明した。
さらに、整理されたIT環境を仮想化の技術を用いて整理するコンサルサービス「CMP」や、各国でバラバラに配置されているERPアプリケーションを最適化するサービスなどもBTは有しており、こうしたサービスを活用すると、ROIの大幅な向上が見込めるとのこと。「企業でも、海外拠点をサポートするための人材リソースが足りないのが現状。現地は現地のローカルなITベンダーはいるが、ネットワークからアプリケーションまですべてをカバーできるベンダーはなかなかいない。当社はそれを目指しており、トータルにサポート可能だ。また、ほとんどのサービスは当社内でノウハウを重ねてきた、実証済みのサービスであるため、安心してお使いいただけるメリットもある」(平山氏)。
注力分野の2つ目は、この逆のアプローチで、海外企業の日本進出を支援すること。BTがサービスを提供している企業が日本へ上陸する際に、ITHDがその展開を支援する役割を担う。これは単にITHDがデータセンターを提供するということにとどまらず、例えば日本の制度上、それらの企業のアプリケーション改修が必要になった場合に、開発力のあるITHDがBTに代わって開発を請け負う、といった支援も考えられるという。
また3つ目としては、先端技術の共同研究・開発により、新しい市場開拓を狙うという。ここでは、クラウドコンピューティングや仮想化といった最新のトレンドを踏まえるほか、さまざまな分野への適応を考えていくとのこと。BTでは、次世代ネットワークプラットフォームの「21CN」について、SDK「Web 21C」を公開しており、ITHDはこれを積極的に活用しながら、サービスを連携させていく考え。現在、具体的なサービスとして、世界各地のBTのデータセンターやITHDが持つ日本やアジアのデータセンターを高速ネットワークで結ぶ「仮想データセンター(VDC)」構想を検討中とした。
これが実現すると、「必要に応じて最寄りのデータセンターから提供を受けることもできるし、場所を気にせずに仮想的にサービスを提供できる」(平山氏)メリットがある。また黛氏は、具体的な利用シーンを「当社のアプリケーション開発環境をVDCに載せられれば、海外に同じ仕様のVDCが展開されているので、簡単に海外へ持って行き、BTのネットワークに展開できる。加えて、足回りとしてBTの回線を一緒に提案することもできるだろう」といった例を挙げて解説した。
また、黛氏は提携発表から1カ月以上が経過し、すでに顧客からも上々の反応が出ているとアピールする。「大企業のお客さまのネットワークを作り替えることになるため、商談に時間はかかるだろうが、思った以上に、ガバナンスなどにおいて、お客さまの課題が複雑に何層もあることがわかり、ワンストップでの提供という当社のメッセージがフィットしているようだ。あまり数字に追われるよりも、きっちりと実績を作りたいと思っているので、3年で2けたにのるくらいを目標に勧めていきたい。目の前に課題をお持ちのお客さまがいるので、実績ができれば、広がっていくだろう」(黛氏)。
なお、それぞれがなぜ提携相手としてお互いを選んだかについては、ITHD側は「日本で構築したサービスを、アジアや米国のみならず、グローバルで展開・運用できる、包括的なアウトソーシングの能力を持っているから。また、日本で20年以上ビジネスをしていて、日本に求められることを理解している点も魅力があった」(黛氏)、BT側は「1つは独立系であることで、TISとインテックが組んだことでそれぞれの利点が相乗効果を生んでいる。またもう1つは、当社が展開するWeb 21Cについて、先進的なテクノロジーを一番評価してもらったことだ」(平山氏)と、その理由を説明している。
2009/8/10 12:58