【Interop Tokyo 2010基調講演】
米Amazon Web Services幹部が語る「アマゾンクラウドの真実」
「Interop Tokyo 2010」で10日、米Amazon傘下のAmazon Web Servicesでシニア・ウェブサービス・エバンジェリストを務めるジェフ・バー氏が「アマゾンクラウドの真実」と題して講演を行い、「Amazon EC2」や「Amazon S3」などのクラウドサービスを提供する「Amazon Web Services(AWS)」のメリットや導入事例を紹介した。
■Amazon.comのシステムインフラを従量課金で貸し出す
米Amazonのシニア・ウェブサービス・エバンジェリストを務めるジェフ・バー氏 |
AWSは、「Amazon.com」のシステムインフラをWebアプリケーション開発者などに提供するサービス。仮想的なサーバーやストレージのリソースを従量課金で貸し出している。ユーザーは初期投資が不要で、ハードウェアやネットワークの運用・構築をAmazonに任せられるため、Webアプリケーションの開発に注力できるメリットがある。
また、自前でハードウェアを構築・運用する場合と比べて、Webアプリケーションのユーザーが急激に増えても、短期間でインフラを増強できるのも特徴だという。Facebook向けの農場育成ゲームとして人気を集める「FarmVille」もAWSを導入することで、急激なユーザー数の増加に対応したとバー氏は語る。
「Webアプリ開発者は、数千万人のユーザーを獲得することを夢見るものだ。しかし同時に、ユーザー数が急増した場合、どのようにリソースを確保すればよいかという不安も抱いている。AWSはリソースの必要に応じて、短期間でスケールアップしたりスケールアウトすることが可能だ。」
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■プライベートクラウドとの違いは「規模の経済」が働くかどうか
バー氏は、特定の企業や団体がデータセンターを専有する「プライベートクラウド」との違いついても言及。世界規模で展開するAWSには「規模の経済」が働くため、価格面での優位点が大きいと話す。「我々には非常に多数の顧客がいるため、例えばデータセンター建設のために土地やサーバーを購入する際には、売り手との交渉で優位に立てる」。
ユーザーが優れたインフラを自前で構築・運用するには、冗長化や負荷分散、セキュリティ面などを考慮する必要がある。しかしAWSでは、Amazonが実際に使っているインフラを利用できるため、ユーザーはこれらのことを意識しないで済むという。「こうした運用面のメリットは、いくら強調しても足りないぐらいだ」。
バー氏は「Amazonは博士号を持つエンジニアを多数抱えており、それぞれがハードウェア、オペレーション、セキュリティなどの専門家だ。一方、プライベートクラウドでは、これらのいくつかを1人が担当することが多い」と語り、「規模の経済」がサービスの品質面にも好影響を与えているとした。
「そもそも、AWSとプライベートクラウドは距離を置いて考える必要がある。クラウドとは、仮想化や自動化、サービス指向アーキテクチャーといったテクノロジーだけの話ではなく、財務面のメリットを融合したビジネスモデルこそが、本当のクラウドの姿といえるだろう。」
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■日本での導入事例
このほかバー氏は、日本でのAWS導入事例を紹介。料理レシピの投稿・検索サイト「クックパッド」を運営するクックパッド株式会社は、ユーザーの検索ログを解析する際にAmazon EC2を利用することで、自前のサーバーで処理すると7000時間はかかると見積もっていたものが、わずか30時間で実施できたという。
また、株式会社想創社を設立した藤川真一氏が開発した携帯電話向けのTwitterクライアント「モバツイ」でもAmazon EC2を利用していることを紹介し、「ユーザー数は50万人以上、PVは1日あたり1000万を超えるサービスでも、AWSを活用することで1人の開発者で運営できている」と話した。
今後の日本におけるAWSの展開としては、「開発者向けのサポートチームを作りたい」とコメント。現在、Amazonではデータセンターマネージャーやサポートエンジニア、セールススタッフ、私のようなAWSエバンジェリストも募集中だ」と話すなど、国内でのサービスを強化する考えを示した。
日本でのAmazon Web Services導入事例 | 日本でのAmazon Web Servicesスタッフの採用状況 |