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【GitHub Universe 2026】AIエージェント急増に伴うGitインフラ全面刷新の舞台裏と、人とAIが対等に協調する開発の未来

 米GitHubの年次イベント「GitHub Universe 2026」が、10月28日~29日(米国時間)に開催された。場所は、米国サンフランシスコのFort Mason Center for Arts & Culture。

 初日基調講演のレポートに続いて、本稿では、2日目の基調講演や個別セッション、プロダクト担当者へのインタビュー、展示会場での催しなどをレポートする。

GitHub Universe 2026
メインホールなどがあるFestival Plazaの入り口

2日目基調講演は、ソフトウェア開発の現状やOSSなどを語る

 2日目である10月29日の会期最終枠に開催された基調講演「Closing Keynote」では、GitHubのMartin Woodward氏(VP, Developer Relations)が、オープンソースソフトウェア(OSS)などソフトウェア開発の現状や、AI時代のOSS活動などについて語った。

GitHub Universe 2026のClosing Keynote
GitHubのMartin Woodward氏(VP, Developer Relations)

GitHubを使っている開発者は2億2500万人以上、プッシュ数はAIコーディングエージェントで急増

 Woodward氏はまず、GitHub上のソフトウェア開発の動向について、GitHub Universe開催に合わせて発表されたレポート「Octoverse 2026」のハイライトを紹介した。

 GitHubを使っている開発者の数は、9月発行時点で2億2500万人以上。国別に見ると、米国(3830万人と)インド(3200万人)がトップとなっている。さらにWoodward氏は、ブラジルが328万人を増やし計1020万人(4位)に躍進したことを紹介した。

GitHubを使っている開発者の数

 なお、日本は715万人で、ブラジルの次の5位につけた。

 別途、筆者がWoodward氏にインタビューした際には、同氏は、日本からは2026年第2四半期に1500万回、パブリックリポジトリへのプッシュ(コードのアップロード)を行って9位につけ、トップ10に入っていると紹介。「日本はAIやAIベースのコーディングにおいて非常に強い」と同氏は語った。

GitHub Innovation Graphより、日本からのプッシュ数

 基調講演に話を戻すと、GitHubへのプッシュ(コードの変更のアップロード)数は、179億件と、2025年の67億件から急増した。プルリクエスト(変更提案)のマージ(反映)数も13億件と、2025年の5億3800万件から急増している。これはAIコーディングエージェントの普及によるものと思われる。

 「時代は非常に速く動いていて、毎週のように新しいコーディングモデルが出ている。そこで、私にとっては、やってみることが学ぶ方法だ」とWoodward氏は語った。

GitHubへのプッシュ数とプルリクエストのマージ数

シングルボードコンピューターになっている参加者バッジを、バイブコーディングでハック

 その「やってみる」の例として、GitHub Universe 2026の参加者バッジをWoodward氏は取り上げた。

 このバッジは、シングルボードコンピューターになっていて、液晶ディスプレイも付いている。そして、上下左右ボタンで項目を選んで、ゲームなどのミニアプリケーションを実行できる。そして、USB-CでPCと接続すると、ミニアプリケーションなどの各種機能を書き換えられるようになっているという「ハッカブルバッジ」だ。

 ここ数年のGitHub Universeの参加者バッジは、シングルボードコンピューターになっている。最初はE Inkベースのデバイスに始まり、毎年機能をアップ。GitHub Universe 2026のものは、CPUがRaspberry PiのRP2350 Dual ARM(Cortex-M33 200MHz)、液晶ディスプレイが320×240ピクセルとなり、Wi-FiやBluetooth、センサーも装備しているという、バッジとしては非常にパワフルな仕様だ。

 ちなみに、2025年には、台湾にある液晶ディスプレイの製造元が台風により稼働停止したため、スケジュールが遅れ、最後はGitHubのオフィスにおいて手作業でバッジを組み立てたこともWoodward氏は紹介した。

筆者の参加者バッジ。名札の下に液晶ディスプレイがあり、その裏にシングルボードコンピューターがある
歴代の参加者バッジ
2026年の参加者バッジのスペック
バッジをハックした例
オフィスにおいて手作業でバッジを組み立てる様子

 バッジについては、Webで動くシミュレーターも用意されており、書いたプログラムの動作確認ができる。Woodward氏は、シミュレーターでゲームを動かし、さらにコードを書き換えると表示が変わるところをデモした。

 さらに、GitHub Copilotアプリにバイブコーディングで「GitHubのコミットグラフを使ったブロック崩し」のコードを書かせて実行するところも見せた。

バッジのシミュレーターでゲームを動かす
バイブコーディングで「GitHubのコミットグラフを使ったブロック崩し」を作って実行

 実機の例としては、加速度計をBluetoothでバッジに接続し、振動パターンから機械学習モデルにより歩数をカウントする歩数計を、ステージ上で実演してみせた。

加速度計からのデータで歩数をカウントする歩数計の実演

開発者とAIエージェントが設計文書とチャットで対等に共同作業する「Chopin」プロジェクト

 このように、GitHub CopilotなどのAIコーディングエージェントにより、アイデアをコードにする時間が短くできるようになった。再びOctoverse 2026から、40%以上のプルリクエストでAIエージェントが使われ、1億1000万件のプルリクエストが最初からAIエージェントによりスタートしているというデータをWoodward氏は紹介した。

 「ただし正直なところ、すべてが高品質というわけではなく、多くは善意からとはいえ、低品質な貢献も増えている」とWoodward氏は言い、プロジェクトがプルリクエストを制限する機能を2026年に追加したことを紹介した。

AIによるプルリクエストについてのデータ
プルリクエストを制限する機能

 そのうえでWoodward氏は「コーディングエージェントとはチャットでやり取りしているが、2026年にはチャットを超えてきている」と語り、また「ソフトウェア開発はチームスポーツ」として、開発者のチームがエージェントのチームと共同作業すると述べた。

 この分野の試作プロジェクトについて、GitHubの研究開発部門であるGitHub Nextから、Maggie Appleton氏(Staff Research Engineer)が登場。「Chopin」というプロジェクトを紹介した。

 Chopinでは、設計ドキュメントの横にチャット画面があり、人間がドキュメントに入力したりチャットでメッセージを送り合ったりする。そして、そこにChopinのエージェントも参加していて、チャットでアイデアを出したり、文書に複数のデザイン案を書き込んでどの案がよいか尋ねたりしてくる。さらに、同期プロトコルのようなテキストでは伝わりにくい内容を、視覚的な図にしてくれるところも見せた。そして、Chopinに実際にコードを書くことを指示して作成する。

 このデモでの内容は、2つのバッジをタッチして同期する機能を実装するものだった。ステージでは作られた同期機能が実際にデモされた。

「Chopin」プロジェクト
Chopinで人とAIエージェントが共同作業
同期プロトコルを図に
バッジの同期機能のデモ

研究や教育の分野でのGitHub利用

 次にWoodward氏は、研究や教育の分野について語った。

 Woodward氏は「科学技術分野でのGitHub利用は5倍に成長し、いまやテック系以外の利用をリードしている」と言う。GitHubのリポジトリは、発表された研究の証拠書類(paper trail)となっており、研究者を一意に識別する「ORCID iD」にも対応している。

科学技術分野でのGitHub

 また教育分野では、60か国以上、約2500の教育機関がGitHubのキャンパスプログラムに参加し、100人以上のGitHub Campus Expertがいるという。「GitHub Campus Expertは積極的に活動しており、大学生がGitや、GitHub、Copilotを学んでAIの世界を進む手助けをしている」(Woodward氏)。

教育分野でのGitHub

 ステージにはGitHub Campus Expertである、メキシコのモンテレイ工科大学で神経義肢を研究しているJocelyn Velarde氏が登場した。小学校のときにレゴマインドストームでロボットに興味を持ち、大人になったら人を助けるロボットを作りたいと思っていたとのこと。

 高校の卒業研究ではブレイン・コンピューター・インターフェイス(BCI)を選び、面識のない大学教授にメールで教えを請い、機械学習を用いて、手を開こうと考えると開く義手を開発した。現在はBCIによる発話を開発しているとのことだった。

 これから始める学生へのアドバイスをWoodward氏に尋ねられると、Velarde氏は「短期・中期・長期の目標を明確にし、その過程で支援してくれるコミュニティを見つけること」と回答した。

GitHub Campus ExpertのJocelyn Velarde氏

GitHubの新しいGitインフラについて解説したセッション

 既報のとおり、初日の基調講演では、GitHubのコードホスティングの基盤であるGitインフラのアーキテクチャをリニューアルし、ボトルネックを解消することがアナウンスされた。

 この新アーキテクチャについて、個別セッション「Scaling GitHub's infrastructure for how developers build today」で、GitHubのBrian Celenza氏(Principal Software Engineer)が解説した。ここではその概要を紹介する。

 まずCelenza氏は背景となる要件を説明。現在の「エージェントスケール」時代のGitHubの負荷として、1カ月にGitイベントが4733億件、プッシュが335億件ある。また、2026年8月に最も活発なGitHubリポジトリでは約10億のリクエストがあったという。

GitHubのBrian Celenza氏(Principal Software Engineer)
エージェントスケール時代の負荷

現在のアーキテクチャと課題

 さて現在のGitインフラのアーキテクチャでは、GitやWeb、APIなどユーザー側の口から、GitHubのデータの間には「Spoke」という層があり、保存するGitオブジェクトの、データセンターをまたいだ分散とレプリケーションを管理している。この分散レプリケーションにおける3相コミットが、書き込みを少し遅くしているとCelenza氏は説明した。

 そのほか、最新情報の一貫性の保証がスケーリングを妨げていることや、スケールが大きくなるとコンパクションやガベージコレクションに注意が必要になることが挙げられた。

現在のアーキテクチャ
現在のアーキテクチャの課題

 これらの問題について、「漸進的な改善では十分ではない」とアーキテクチャ変更の必要性をCelenza氏は述べた。原則は、調整を最小にすることと、ストレージとコンピュートを分離することの2つだ。

まずAzure移行とロック方式の変更

 ただし、GitHubはメンテナンス期間を設けてサービスを止めることはできない。そこで、まず新旧の間に「橋を架ける」ことで、稼働中に、ユーザーに気づかれずに移行する必要がある。すでに実行した2つの「橋」について、Celenza氏は解説した。

 1つ目は、過去12か月間行った、米東海岸の独自データセンターから、広域分散されたAzureへの移行だ。すでに、99.99999%がAzureに移行したという。この移行は、Spokeで振り分け先をAzureに変えていくことで、ダウンタイムなしで行われた。

 2つ目は、リポジトリ単位のロックから、参照単位のロックへの変更。これにより、書き込み頻度が高いときに、書き込み待ちを減らせる。

独自データセンターからAzureへの移行
リポジトリ単位のロックから参照単位のロックへの変更

新しいアーキテクチャの詳細を解説

 そして、これからはまったく新しいデータプレーンに移行する。

 新しいアーキテクチャでは、従来のreplica(Gitオブジェクト)のかわりに、「Virtual replica」を設ける。これはキャッシュのようなもので、データの実体はAzure Blob Storageに置かれる。

 そしてこれらを、オブジェクトの参照を扱う「Ref-CAS」というノードが管理する。また、Azure Blob Storageの下には、コンパクションやガベージコレクションのためのノードも独立して置かれる。これによって、調整を最小限にして書き込みや読み出しを行えるようにする。

 セッションでは、書き込み時や読み出し時の動作や、それぞれの役割など、アーキテクチャが詳しく解説された。

新しいアーキテクチャの全体像

 この新しいアーキテクチャは、早期テスターの顧客のフィードバックを受け、今回の発表と同時にプライベートプレビューを開始した。

 今後については、最適化や改善のためのアイデアをいくつかCelenza氏は紹介し、「コミュニティと共にこれからも取り組むことに本当にワクワクしている。仕事のやりかたが変わる中で、GitHubも進化している」と語った。

今後の最適化や改善のためのアイデア
「仕事のやりかたが変わる中で、GitHubも進化している」

GitHub Copilot関連の新機能についてPierce Boggan氏に聞く

 今回の発表、特にGitHub Copilotアプリの新機能について、GitHubのPierce Boggan氏(Principal Mgr, Product)にインタビューで話を聞いた。

GitHubのPierce Boggan氏(Principal Mgr, Product)

 GitHub Copilotアプリはもともと、GitHub CopilotがVSCodeをはじめさまざまなサーフェイス(ユーザーとの接点)がある中で、複数のエージェントをオーケストレーションして結果に焦点を当てたレビューを簡単に行えるものが必要だと考えて作られたとBoggan氏は語った。

 Boggan氏はGitHub Copilotアプリについて「多くの人がコードを書く以上の目的で使い始めたことに驚いた」と言う。設計ドキュメント、プレゼンテーション、モックの作成などだ。そして、ソフトウェア開発以外の、エンジニアやデザイナー、PMなどがGitHubやGitHub Copilotアプリで共同作業している。

 今回発表された「GitHub Copilot Projects」機能も、「こうした状況でGitHub Copilotアプリをより良くするために導入しました」とBoggan氏は説明した。「ソフトウェア開発者ではなく、コードを書くために使っていない人は、リポジトリではない組織単位を必要としており、そうした用途に使われるGitHubのプロジェクトも見かけます」と同氏は言う。「例えば、GitHub Copilotアプリで『Pierce』プロジェクトを作り、経費を処理したり、今日の会議内容を教えてもらったりといった使い方もできます」(Boggan氏)

 GitHub Copilot Projectsでいう「プロジェクト」について尋ねると、「エージェントのチームです。エージェント用のフォルダーのようなものだと考えてください」とBoggan氏は答えた。「例えば、GitHub Copilotアプリで5つの異なる機能を実装したいときに、これまでは、各リポジトリに行ってそれぞれでエージェントを立ち上げ、自分でこれらのエージェントを確認しなければならなかった」とBoggan氏。

 それに対しProjectsでは、プロジェクトを0個以上のリポジトリにマッピングでき、それぞれにタスクを分解して指示するのではなく、「この機能を追加して」と指示するだけでいい、とBoggan氏は説明した。

 そのほかの新機能について尋ねると、まずGitHub Copilotのコネクター機能をBoggan氏は紹介した。「多くのチームと仕事をしていて、組織内でのMCPの設定と展開が大きな問題の1つだと言われたため、作りました」と同氏は言う。「先ほどの話のように、ソフトウェア開発者ではない人がMCPサーバーを使う場合、教育が必要になります。コネクターを使えば、一度設定すれば、どこでも使えます」(Boggan氏)

 また、リモートエージェントの連携機能についてもBoggan氏は取り上げた。「初日の基調講演で、スマートフォンからクラウドでエージェントを立ち上げたのもこの機能だ。私個人としては、エージェントのループをもっとクラウドにプッシュすることで、ローカルマシンがすべてのワークロードを実際に動かすことから抜け出せることにとてもワクワクしている。また、複数のデバイス間で引き継いで同じセッションを継続できることも利点だ」(Boggan氏)。

セキュリティ関連の新機能についてPierre Tempel氏に聞く

 セキュリティ関連の新発表については、GitHubのPierre Tempel氏(Director, Product Management)に話を聞いた。

GitHubのPierre Tempel氏(Director, Product Management)

 GitHub Advanced Securityにおいては、まずコードスキャンでは、10月に発表された「AI Scan」(CodeQLによるルールベースの脆弱性検出に加えて、AIで検出するもの)において、プルリクエストのAI ScanがGA(一般提供開始)となった。また、AIアプリケーションの脆弱性をスキャンする機能もパブリックプレビューとしてリリースされた。

 「GitHub package firewall」もパブリックプレビューとしてリリースされた。ソフトウェアが依存するパッケージの信頼性が問われる中で、インストールできるパッケージをポリシーで絞ったり、バージョンアップされてから一定期間はインストールから除外したりする機能を提供する。まずJavaScript向けに展開し、その後はほかの言語やパッケージマネージャーにも展開していく。

GitHub package firewallの概要(個別セッションより)
GitHub package firewallのデモ(個別セッションより)

 依存ライブラリの脆弱性などを検出するDependabotにおいては、「reachability analysis」機能が、JavaScriptとTypeScript向けにパブリックプレビュー版としてリリースされた。ライブラリに脆弱性があっても、開発しているソフトウェアからその機能を呼び出していなければアラートから外すというもので、「90%のアラートをフィルタリングできる」とTempel氏は語った。「例えば、データベースライブラリを使って読み書きしているが、バックアップ機能は使っていない場合、バックアップ機能に脆弱性があっても、アップデートはするとしても優先度は高くない。その分ほかの重要な脆弱性の優先順位を上げられる」(Tempel氏)。

 そのほか「Agentic autofix for code scanning」も、パブリックプレビューから今回GAとなった。コードスキャンのアラートにAIエージェントを割り当てることで、自律的に修正するというものだ。「以前はセキュリティ問題のバックログは気にされていませんでしたが、Agentic autofixにより、バックログの修復速度が4倍に改善されている」(Tempel氏)

 最後にTempel氏は、「今回のGitHub Universeで私たちが主に強調しているのは、セキュリティを片隅から取り出し、SDLC(ソフトウェア開発ライフサイクル)に組み込むことです。多くの発表がありますが、すべてが連携して脆弱性の規模という新たな需要に応えます」と語った。

展示会場では体験コーナーが盛況、「OPEN SOURCE RECORDS」の展示も

 GitHub Universe会場となったFort Mason Center for Arts & Cultureのうち、一棟がスポンサー企業などの展示スペースとなっていた。

 展示スペースの中には、Closing Keynoteでも紹介されたように、参加者の参加者バッジ「ハッカブルバッジ」のハック(改造)を体験する「Hack Your Badge」コーナーが開設され、2日間とも参加希望者でいっぱいになっていた。

「Hack Your Badge」コーナー

 その隣には「Makerspace」コーナーも開設。機械式キーボードか、LED Octolamp(GitHubマスコットキャラクターであるOctcatのスマートLEDランプ)を題材に、DIYを体験できるようになっており、こちらも2日間中、参加希望者でいっぱいになっていた。

「Makerspace」コーナー

 異色の展示だったのが、GitHubによる「OPEN SOURCE RECORDS」コーナーだ。OSSのプロジェクトや概念などを基に、生成AIによってLPレコードのジャケットを作って並べていた。ジャケットの中には実物のLPレコードが入っており、筆者は確認していないが、実際に音楽が収録されていたようだ。

GitHubによる「OPEN SOURCE RECORDS」コーナー
OSSのプロジェクトや概念などを基に生成AIによって作られたLPレコードのジャケットが並ぶ
「VLC」を基にしたLPレコード