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シャープがAIサーバー事業に参入、2030年度までに売上高2500億円を目指す 鴻海グループの調達・製造力を活用
2026年9月16日 06:15
シャープ株式会社は15日、AIサーバー事業への参入を正式に発表。同日から受注活動を開始した。2030年度までに売上高で2500億円を目指す。
シャープの河村哲治社長 CEOは、「AIが社会インフラになるという大きな変化が、シャープにとっての新たな成長機会となる。AIサーバーの生産で世界4割のシェアを持つ鴻海グループの製造力および調達力を活用するとともに、さまざまなパートナー企業の協力を得て、サーバー事業への参入を決定した。受注活動を開始する9月15日は、シャープの創業記念日であり、その日に新たな事業をスタートする。AIサーバー事業と既存事業を融合した新たな価値創造に挑戦し、シャープ全体の進化へとつなげていく。シャープにとっては、新規事業の立ち上げの第一歩であると同時に、シャープの変革の第一歩である」との考えを示した。
また、河村社長 CEOは「AIサーバー事業は当初計画よりも前倒しし、8月16日付でスマートビジネスソリューション(SBS)事業本部に移管して、事業を推進できる体制を整えた。これまでのシャープのスピード感とは異なる速度で新規事業を立ち上げることができた」との手応えも示した。
受注を開始するのは、業務向けAIサーバー「AI-B43100」。GPUとしてNVIDIA RTX Pro 6000 Blackwell Server Editionを8基搭載し、32 PFLOPSの推論性能を発揮する4Uラック対応空冷サーバーである。GPUメモリは768GB、システムメモリは3TB、ストレージは30.72TBの構成だ。
今後、顧客ニーズと必要な推論処理の規模にあわせてラインアップを拡充するという。鴻海科技集団(Foxconn)が生産し、シャープブランドで国内販売することになる。今後は、シャープの設計によるAIサーバーの投入も検討する。
また、2027年度には、NVIDIA HGXプラットフォームに対応した大規模学習・推論向けAIサーバーの受注開始も計画している。これもシャープブランドで展開する予定だ。
河村社長 CEOは、「生成AI、Agentic AI、フィジカルAIへと進化するなかで、研究機関や自治体、一般企業が自らAI計算基盤を持ち、新たな価値創造へとつなげる動きが見られている。シャープは、『暮らす』と『働く』のあらゆるシーンに、AIを掛け合わせて、人の未来を開くことに取り組んでいる。その実現に向けて、多くの企業が安心して、利用できる計算基盤を整備し、AIの価値を社会全体に届けるための基盤の構築に力を注いでいく」とした。
シャープでは、AIサーバー事業における強みとして、鴻海グループの供給力を活用できる「供給側との近さ」、日本企業や現場との接点および理解をベースにした「お客さまとの近さ」、高いシェアを持つコンビニ向け複合機やガソリンスタンド向けPOSで培った全国サポート網および専門パートナーとの連携による「国内サポート体制」の3点を挙げる。
シャープ スマートビジネスソリューション事業本部 AIサーバー事業統轄部の宇徳浩二統轄部長は、「AIサーバーでは、世界の供給力を日本のお客さまが安心して使える形で提供するのがシャープの役割になる」とし、「AIサーバー需要の広がりにあわせて、機種の選定・導入・運用が複雑化し、自社に最適な形での導入や、導入後も安心して運用したいというニーズが高まっている」と前置き。
その上で、「シャープは、鴻海グループを中心としたグローバルな調達・製造能力を活用でき、供給側にも近い存在であるとともに、シャープが長年にわたって培ってきた日本のお客さまとの接点を生かして、最適な形でAIサーバーを提供できる立場にある。さらに、全国のサポート網と専門パートナーとの共創を通じて、サーバーの保守および運用の知見を蓄積しながら、日本のお客さまのAIインフラを支える体制を構築する」と述べた。
シャープがAIサーバー事業において中核に据えるのは、企業や研究機関、自治体などを対象にした推論用途での導入だ。4Uラック対応で空冷方式のため、既存のデータセンターや企業内の設備にも導入しやすい特長を生かす。その一方で、学習用途を目的としたAIデータセンターなどへの大規模導入提案は、2027年度以降にHGXプラットフォーム対応AIサーバーを投入した時点で開始することになる。
販売戦略においても、まずは業務用AIサーバーを対象にした体制づくりを進めている。今回の受注開始にあわせて、販売代理店として、ダイワボウ情報システムおよびリョーサン菱洋との基本合意を発表。また、トゥモロー・ネットとの連携により、保守サポートを提供することも発表した。
シャープの宇徳統轄部長は、「NVIDIA RTX Proサーバーは、パートナーを通じた販売が主力となる。それぞれの販売パートナーが持つ得意分野への提案のほか、既存のシャープのお客さまに対して案件が発生した場合も、パートナーを通じた提案を行うことになる。販売パートナーが持つ全国規模の販売体制を活用するほか、販売パートナーが全国で実施する展示会などにもモックアップを展示して訴求することも考えたい。当面は、2社の販売パートナーにより、販売体制を確立することに力を注ぐ」と説明。
さらに、「これらのパートナーとの連携により、お客さまへの提案から導入、運用、保守までをワンストップで提供する体制を構築し、日本国内におけるAIインフラの整備と普及に取り組む」と述べた。
また、今後のAIサーバー事業の方向性についても触れた。
ステップ1として、2026年度にAIサーバーの販売を開始するとともに、運用保守体制を構築。2027年度からは、業績への貢献を見込んでいるという。
ステップ2では、シャープが持つ顧客や現場との接点を生かして、導入支援や構築支援を行う領域を拡大。鴻海グループと共同で、日本での生産体制の構築を進める。三重県亀山市の亀山工場内で、テレビ組立工場だった建屋を再利用することなどを視野に入れながら、AIサーバーの国内生産を開始する。また、シャープの既存事業との連携も進める考えであり、ここでは空調事業との連携などが想定される。
シャープの宇徳統轄部長は、「主戦場は推論用途になる。それにより、2030年度には売上高2500億円を目指す。今回のAIサーバーの販売開始を起点に、日本のAI活用を支える事業へと成長させる」と意気込みを語った。
さらに、2030年度以降となるステップ3では、フィジカルAIやAgentic AIの次世代インフラプラットフォームの構築に取り組むほか、グローバル展開も検討する。グローバル展開については、「シャープのB2B事業が強いエリアが対象になる」(シャープの河村社長 CEO)と述べた。
AIの社会実装を背景に、国内AIサーバー市場は急拡大しており、2025年度には9000億円だった国内AIサーバー市場は、2030年度には4兆円、2035年度には7兆円へと拡大するとの予測がある。
「こうした高い市場成長が見込まれる背景には、3つの要因がある」と、シャープの宇徳統轄部長は指摘する。
ひとつめは、「学習用途に加えて、推論用途が急拡大」する点である。
「AIの利用者が増え、用途が広がると、推論の処理に必要なAIサーバー需要が増加。これに伴い、大規模なクラウド事業者だけでなく、企業や自治体、大学、研究機関などにもAIサーバーが広がり、一部の大規模事業者だけの市場から、より多くの顧客が利用する市場へと構造が変化する」と見込む。
2つめが「フィジカルAI時代の到来」である。
「推論需要をさらに押し上げるのが、現実世界で動くフィジカルAIである。カメラやセンサーといった機器から大量のデータが生まれ、AIサーバーでの処理回数が増加する。また、AIモデルをAI導入後も学習したり、シミュレーションしたり、検証を繰り返して精度を改善するため、現場では継続的な計算需要が発生する。さらに、工場や倉庫、店舗などの現場へのAI導入が増えれば、そこでの推論処理が増加する。フィジカルAIの普及により、接続機器、データ量、推論回数が同時に増加し、AIサーバー需要が大きく拡大することになる」と述べた。
3つめが、「ソブリンなどを契機としたオンプレミスの加速」である。
政府や金融、医療などの分野では、国内にデータを保持するなど、データ主権に対する関心が高まり、ソブリンAIへの注目が集まっている。また、製造ラインの検査などにAIが活用されるようになり、リアルタイムでの処理が求められ、低遅延に対する要求が高まっている。さらに、都市部の受電容量のひっ迫により、AIの計算基盤を自社拠点などに、分散配置するといった動きが見込まれている。
「こうした動きを背景に、AI基盤は従来のクラウド一択から、最適な場所に配置する時代へと移行することが見込まれる。一般業務のAI基盤にはパブリッククラウドを利用する一方で、機密データやフィジカルAIは、オンプレミスやエッジを利用するハイブリッドでの活用が見込まれ、国内企業や現場へのAIサーバーの導入が進展する」と予測した。



