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【SAP TechEd 2013基調講演】すべてのアプリケーションをHANAとクラウドへ収束させる (HANA SP7は“美しく、強く、シンプルに”)

HANA SP7は“美しく、強く、シンプルに”

シッカ氏はFioriをHANAだけでなくSAP製品をラップするに共通のUXとして位置づけたいようだ
HANA SP7には開発の起点となるWebベースのIDEが付属する

 SAPは今回のTechEdにあわせていくつかの新発表を行っている。その中でももっとも注目すべきはHANAの新バージョン「SAP HANA SP7」が11月に一般提供開始(General Available)となることだろう。HANA SP7の特徴は大きく3つ、アプリケーションをより「美しく」「強く」「シンプルに」開発するというものだ。

 まずは“美しさ”について。これはここ1、2年、SAPとシッカ氏が強く主張する“デザインシンキング(Design Thinking)”を意識した機能強化となる。具体的には、5月に行われた年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW 2013」で発表された「SAP Fiori」のアプローチを踏襲し、ユーザーエクスペリエンス(UX)を強く意識した使いやすく、見た目にもすぐれたアプリケーションを開発するためのサービスを提供するとしている。Fioriは"HTML5ベースのビジネスアプリケーション群"と紹介されることが多いが、今回の基調講演においてシッカ氏はFioriをSAP製品全体に共通するUX/UIに発展させたい意向を示しており、HANA SP7がその試金石となるといえるだろう。

 「Fioriは提供開始から半年で200社以上のユーザーに購入された。年末までにはさらに100社以上増えるだろう。このことはエンタープライズの世界にも、インタラクティブで美しく機能的なアプリケーション、コンシューマライクでユーザーセントリックなアプリケーションを求める声が強くなってきていることを示す。アプリケーション開発におけるデザインスキルは今後ますます重要になる」(シッカ氏)。

 また機能的なアプリケーション開発の支援の一環として、HANA SP7ではWebベースのIDEが新たに提供される。これはPaaSの「SAP HANA Cloud Platform」用のワークスペースで、開発者がクラウドアプリケーション開発における最初の"足場"のように利用することを想定しているという。

 2つめの“強さ”は、HANAが多くのデータソースと連携できるようになり、プラットフォームとしてより強力になったことを指している。OracleやSQL Server、Terradataといった競合製品のデータベースにアクセスできるようになったことに加え、Hadoopインテグレーションが強化されており、SAPはこの機能を"Smart Data Access"と呼んでいる。

 データソースの多様化、そして分析すべき非構造化データの劇的な増加に対応するためのエンハンスメントだが、やはり注目されるのはHadoopとの連携強化だろう。シッカ氏は基調講演後のプレスセッションで「HANAとHadoopは非常に相性が良いベストフレンドだ。いわばHadoopというゾウにHANAという象使いが乗っているイメージ」と話しているが、HANA SP7においてその関係をさらに密にしたといえる。SAPはHANAにおけるHadoopパートナーとしてHortonworksとIntel(IDH)と提携してるが、HANA SP7ではこの2つのディストリビューションとの連携が優先して強化されることになる。

 なお基調講演では、Intelのデータベース部門シニアバイスプレジデントであるダイアン・ブライアント(Diane Bryant)氏による「Intelの次世代Xeon E7はHANAおよびHadoopのパフォーマンスと信頼性の向上を強く意識した製品となる」というビデオメッセージが上映され、あらためてHANAビジネスにおけるIntelとSAPのパートナーシップが強調された形となった。

 3つめの“シンプリシティ”は、ミッションクリティカルなアプリケーションをシンプルにデータセンターにデプロイすることにフォーカスしており、高可用性とディザスタリカバリを実現するための機能(スナップショットやログによるリプレイ、複数サイトにまたがるレプリケーションなど)をサポートする。またアプリケーションのパッチやインストールを容易にするツールも提供される予定だ。

(五味 明子)