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新しいビジネスを指向するSIerは、なぜGMOインターネットグループのクラウドサービスを選んだのか?

 スタートアップから伝統的な企業までクラウドの導入が進み、現在はどのように新たなビジネスモデルを創出していくのかを検討するフェーズに移りつつある。

 そうした中でGMOインターネットグループが注力しているのが、パートナー企業の拡大だ。

 クラウド・ホスティング事業を運営するGMOインターネットグループ4社が主催する今回の「GMO Hosting Conference(略称:GMO HosCon)」のトークセッションには、実際にパートナーシップを結んだパートナー企業も登壇。この提携にいたった理由や期待、本音を赤裸々に語り合った。

【登壇者】

・モデレーター
株式会社BCN
週刊BCN編集委員
谷畑良胤氏

・パネリスト
NECネッツエスアイ株式会社
キャリアパブリックソリューション事業本部
IoTビジネス推進室
事業戦略グループマネージャー
有川洋平氏

株式会社アールワークス
取締役
佐藤淳一氏

GMOインターネット株式会社
事業本部 クラウド事業部 第1法人営業チーム
マネージャー
刀根一之氏

GMOクラウド株式会社
営業部
プリセールスG チーフ
吉田博之氏

クラウドに対するニーズは本当に拡大しているのか?

 情報システムを検討する際にクラウドを最優先とする、クラウドファーストの考え方が国内企業でも当たり前になってきたと言われる。ビジネスのグローバル化やオープンイノベーションの進展、そして「モノからコトへ」といった時代の変化の中で企業が生き残っていくために、今まで以上に積極的な「攻めのIT投資」が求められていることが、その背景となっているようだ。

 だが、個々の企業がクラウドにどのように乗り出しているのか、具体的な動きをつかむことは難しい。今回のGMO HosConでトークセッションのモデレーターを務めた週刊BCN編集委員の谷畑良胤氏は、パネラー各氏に対して「実際のところクラウドに対するニーズは本当に増えているのでしょうか?」と問いかけた。

週刊BCN編集委員の谷畑良胤氏

 NECネッツエスアイでIoTビジネスを推進している有川洋平氏は、「確実にニーズは高まっており、当社としてもクラウドをデフォルトで提案しています。中堅・中小規模のお客さまもクラウドを活用することで、ビジネスのクイックスタートを目指すようになりました」と答える。

 ただ、一口にクラウドといってもさまざまな形態がある。海外企業とは少し事情が違って、一気にパブリッククラウドには踏み出せない悩みもあるようだ。

 「特に国内企業は、『外部に漏らしたくないデータはプライベートクラウドに置いておきたい』という思いを強く持っているようです。そこで多くのお客さまは、データの重要度によってパブリッククラウドとプライベートクラウドを使いわけるハイブリッド型を選択することになります」と有川氏は語る。

NECネッツエスアイの有川洋平氏

 一方、「これまでクラウド利用を先行してきたベンチャーやWeb系企業のみならず、昔ながらの企業の間にもクラウド化の動きが顕著になってきました」と見ているのが、24時間365日体制のマネージドサービスを提供している、アールワークス取締役の佐藤淳一氏だ。

 「有川さんがおっしゃるとおり、伝統的な企業にとって機密情報を外に出したくないという抵抗があるのは事実です。ただ、それらの企業では、いまだにメインフレームやオフコンで情報システムを運用しているケースが珍しくありません。いよいよ避けて通れなくなったオープン化に対応するため、いっそのことクラウドはどうかと考え始めています。次のリプレースのタイミングで、コストの見直しとあわせてクラウドに移行したいと具体的に検討を進める企業が増えています」と佐藤氏は語る。

アールワークス取締役の佐藤淳一氏

クラウド活用する上で企業が抱えている課題とは何か?

 実際にこうしたクラウド活用を進めていく上で何が必要なのか。谷畑氏は「企業はどんな課題を抱えているのでしょうか?」と問いかけた。

 まず挙げられるのは、クラウドに対する認識と現実のギャップだ。

 「多くの企業はオンプレミスで培ってきたシステム構築や運用の経験が、そのままクラウドでも生かせると思いがちです。実はそうではないということに、あとで気づくことになるのです」と吉田氏は強調する。

GMOクラウドの吉田博之氏

 この吉田氏の意見に、ほかのパネリストも大きくうなずく。「その点を十分に理解していないために、よくあるのがオンプレミスで運用してきたシステムをそのまま単純にイメージ化し、クラウド上のインフラに乗せ換えようとするケースです。そのほとんどが失敗に終わっています」と佐藤氏は語る。

 GMOインターネットの刀根一之氏も、「オンプレミスからクラウドに移行しようとしても、そのシステムを運用するために必要なパフォーマンスや機能など、サービスのスペックを見極めるのが非常に困難なのです。オンデマンドでリソースを拡縮できるといった、IaaSの機能だけでは解決できないことがあります」と語る。

GMOインターネットの刀根一之氏

 また、クラウド活用で直面する課題はなにもオンプレミスからの移行時に限られるわけではなく、新規システムの実装時にも発生する。

 例えばIoTシステムなどは、これまでオンプレミスで実践していなかったまったく新しいチャレンジであるため、既存の業務とのしがらみがなくスムーズにクラウドに実装できると考えられがちだ。そして実際にIoTシステムをクラウド上に構築すること自体に、それほど大きな困難はない。問題はそのあとなのだ。

 「IoTシステムが無事に稼働を開始したとしても、当然のことながらデータを収集・蓄積するだけでは意味がありません。それらのデータを読み解いて故障予測や生産ラインの監視、サプライチェーンの最適化といった形でビジネスに生かしていくためには、AIや機械学習などの分析基盤が必須となることを忘れてはなりません」と有川氏は語る。

 そして、「今後のクラウドに求められるのは、その上に乗るアプリケーションをいかに迅速に構築・展開できるのか。さまざまな機能を柔軟に組み合わせながらそれを実現していく、サービスの拡充にあると考えています」と強調する。

サービスを"売る"ための仕組みに注目した

 上記のようなクラウドで直面するさまざまな課題を見据えつつ、NECネッツエスアイやアールワークスをはじめとする国内サービスベンダーは、そのハードルを乗り越える高付加価値サービスを積極的に展開していこうとしているわけだ。

 谷畑氏は、「そうしたクラウド戦略を推進する中で、なぜGMOインターネットグループをパートナーに選んだのでしょうか?ぜひその理由を聞かせてください」と問いかけた。

モデレーターの谷畑氏は、「なぜGMOインターネットグループをパートナーに選んだのか?」と問いかけた

 そのひとつの答えとして、有川氏が特に注目したサービスとして挙げるのは、GMOインターネットが「Z.com Cloud」にて提供しているSaaS型販売課金プラットフォーム「KaKing(カキング)」である。

 GMOインターネットが長年にわたり手がけてきた、各種ITインフラサービス運用で培ったノウハウを凝縮し、顧客管理、商品管理、契約管理、請求管理など"売る"ための仕組みをオールインワンで提供するもので、経済産業省推進「IT導入補助金」の対象サービスにもなっている。

 「IoTシステムを運用するためには分析基盤が必須になると先に述べましたが、最近ではグローバルの大手クラウドベンダーも競うようにAIや機械学習といった機能をPaaSとして提供し始めたことから、調達は比較的容易になってきました。しかし、それらの機能をわれわれのようなSIerがインテグレーションを行い、ソリューションとしてお客さまに提供しようとしたとき、従量課金や請求などの仕組みをスクラッチで開発しなければならず、それには多大な時間とコストがかかります。こうしたわれわれの悩みに応えてくれたのがKaKingだったのです」と有川氏は語る。

 実際、新しいビジネスモデルをクラウド上で運用するにあたっては、「ストック型(サブスクリプション型)の課金モデルを導入し、高い収益性を確保したい」「ビジネスがドライブしたときに備えて、スケール可能な基盤を確保したい」「販売パートナーとの連携を強化し、パートナー経由での売上を最大化したい」といった多くの課題に直面する。

 KaKingは、これまでバラバラに管理されてきた顧客情報や契約情報などを一元化することで、これらの課題をすべて解決することができる。

 「KaKingは"売る"ために必要な機能のほか、メールの一括送信やAPI連携といった機能も備えています。これによって開発のコストと工数を削減し、導入期間を短縮することで、お客さまのビジネスを加速させます」と刀根氏は訴求する。

パートナーと一緒になってビジネスの成功に貢献する

 一方アールワークスは、24時間365日にマネージドサービスを提供するために自らが利用してきた統合システム監視ツール「Pandora FMS Enterprise」に独自開発した機能を加え、幅広い企業にSaaSとして提供するという新たな事業を開始した。このビジネスをともに推進していくパートナーとして、GMOクラウドを選んだのである。

 「Pandora FMS Enterprise SaaSが連携するインフラとしてGMOクラウドの『ALTUS(アルタス)』を採用することにより、技術者による手厚い運用と自動化によるコスト削減を両立する『IaaS+監視・運用』のシンプルなサービスメニューを実現することができました」と佐藤氏は語る。そして、GMOインターネットグループと手を組んだ最大の理由として挙げるのが、「ユーザーに近い立ち位置のビジネス姿勢」である。

 「グローバルな大手クラウドベンダーはサービスメニューを提供するだけで、それをどう使うのかといったユーザーの取り組みには一切関与しません。これに対してGMOクラウドの営業担当者は労をいとわずわれわれに同行し、お客さまの課題や要望をヒアリングしてくれています。アールワークスは技術者が常にコンサルタントでもありアカウントセールスでもあるという意識を持ってお客さまに接しているというスタンスを理解し、お客さまのビジネスを成功に導くために何ができるかを一緒に考えていく――。そんな日本流の価値観を共有できることからもGMOクラウドを信頼しています」と佐藤氏は語る。

 これを受けて吉田氏は、「GMOクラウドにとってもパートナーの先にいるユーザーは大切なお客さまであり、柔軟な座組みで対応することは当然のことです。今後、GMOインターネットグループとして単なるIaaSにとどまらないアプリケーションと統合した多様なサービスを展開していく上でも、最終的なお客さまであるユーザーとじかに接してニーズをうかがえるのは非常にありがたいことです」と語る。

 パートナービジネスとの密接な連携のもと、GMOインターネットグループが提供するさまざまなクラウドサービスは進化を続けているのである。