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Google、セキュリティをはじめとするGoogle Cloudのテクノロジーを紹介
Google Cloud Next'17 in Tokyoレポート
2017年6月27日 06:00
グーグルは2017年6月14日と15日、Google Cloudのイベント「Google Cloud Next'17 in Tokyo」を都内で開催した。基調講演では「セキュリティ」「インテリジェント」「オープン」「カスタマーフレンドリー」というカテゴリで、Googleのセキュリティ対策やテクノロジーが紹介された。
Googleのクラウドはセキュリティが中心にある
Google Cloudのセキュリティについて、基調講演の1日目に登場した米GoogleのGoogle Cloud エンジニアリング部門バイスプレジデント、ブラッド・カルダー氏は、「これまでクラウドはセキュリティを心配と言われてきたが、今ではセキュリティのためにGoogle Cloud Platform(GCP)を利用する人が増えている」と述べた。
Googleのセキュリティを「世界でも最高レベル」とアピールするカルダー氏は、その理由として「Google自身がグローバルなネットワークを持っている」「セキュリティチップ『Titan』によるハードウェアの認証がパーツレベルで実施されている」「データの暗号化」など多層防御によるセキュリティの徹底を挙げている。また、G Suiteにおけるユーザーデータの保護機能や、AndroidやChromebookといったモバイルデバイスのセキュリティ対策についても触れ、「エンドtoエンドで常にセキュリティ対策を実施している」と説明した。
さらに、セキュリティの新機能である「Data Loss Prevention(DLP)」が、デモを交えて紹介された。セキュリティの観点からみた場合、個人情報などの機密情報は、必要最低限のみを管理し、その他の不必要な機密情報は持たないようにすることが重要になる。DLPは、企業が余計な機密情報を持たないようコントロールすることができる。
カスタマーサポートに利用しているチャット画面で、顧客の電話番号やマイナンバーカードのデータや画像が送られてきたという想定で行われたデモでは、画面上に表示された電話番号やマイナンバーの番号が自動的に伏せ字にされたり、画像の中の番号に該当する個所が塗りつぶされる模様が紹介された。さらに、会場のライブカメラでデモ用に用意されたクレジットカードを撮影したところ、リアルタイムでクレジットカードの番号部分が赤く塗りつぶされた。
カルダー氏は、Googleの中心にはセキュリティがあり、これからも継続的なセキュリティ向上にコミットメントしていくとした。
インテリジェントはより身近なサービスとして利用可能に
GCPの「インテリジェント」についてもカルダー氏が、リレーショナルデータベース(RDBMS)、ビッグデータ分析、AIを紹介している。
分散型RDBMSの「Cloud Spanner」は、もともとGoogle自身がAdWordsサービスを提供するために2007年から利用していた内部向けのサービスだったが、外部向けサービスとして2017年5月から正式に運用が開始されている。
データベースのしくみとして、RDBMSはスケーラビリティが問題になり、NoSQLではデータの一貫性が問題になるという問題を提起したカルダー氏は、Cloud Spannerであれば、世界中に分散し、データの一貫性を担保しながら、高いパフォーマンスを実現すると説明した。その理由としてカルダー氏は、Cloud Spannerが分散コンセンサスアルゴリズムによって開発されている点、各データセンターに電子時計とGPSを設置して時刻を同期する「TrueTime」によってデータの一貫性を担保する点、Googleの高速なネットワークを理由に挙げている。
ビッグデータ分析の基盤「BigQuery」についてカルダー氏は、「多くの企業がデータを活用し、データ駆動のビジネスを行いたいと考えている。BigQueryを利用すれば、ペタバイト級のビッグデータであっても、高速に分析することができる」と述べた。また、分析対象となるデータは必ずしもGCPに保存されるとは限らないが、BigQuery Data Transfer Serviceを利用すれば、他のベンダー製品やクラウドサービスからでも、容易にデータを取り込むことができるという。
カルダー氏はBigQueryにかかわる多くのパートナー企業を紹介し、「エコシステムは急速に拡大している」と述べ、すでに日本においてもBigQueryを利用してデータ分析を実施している企業は多いことをアピールした。
なお、基調講演ではメルカリ、ソニーネットワークコミュニケーションズ、プレイドといった企業によるBigQueryの活用事例が紹介されている。
AIについてカルダー氏は、「GoogleはAIを民主化しようとしている。機械学習は特別なものではなく、誰でも利用できるものにすることがGoogleのミッション」と述べ、深層学習のフレームワーク「TensorFlow」や、フルマネージドの機械学習プラットフォーム「Cloud Machine Learning Engine」を紹介した。
さらに、Googleは「アルゴリズムも民主化する」として、音声認識、画像や動画の認識、自然言語、翻訳といったすでにGoogleが学習させたAPIを提供していると説明。このうち、動画認識APIである「Video Intelligence API」のデモでは、動画の中に映っているものをリスト化し、動画のどの時間帯に登場しているのかについても表示する様子を紹介した。
オープン性こそがGoogleの基本戦略
「オープン」について説明したのは、米GoogleのGoogle Cloudプロダクトデベロップメント部門バイスプレジデント、サム・ラムジ氏。「イノベーションは一人ではなく、コラボレーションによっておこる」と述べるラムジ氏は、「オープン性こそがGoogleの基本戦略」と説明した。
「Googleは、オープンソースをけん引するリーダーの1社。これまでGoogleは、オープンソースコミュニティに多くの貢献をしてきた」と述べるラムジ氏は、Google社員はGitHubのオープンソースプロジェクトへのコミット数は、昨年だけでも28万7024件あったことを紹介する。
また、Googleのオープンデベロップメントの実例として、コンテナクラスタ管理システムの「Kubernetes」や深層学習の「TensorFlow」を紹介し、これらのプロジェクトはGoogle社員だけではなく、世界中のコントリビューター(寄稿者)によって支えられていると説明した。
「ヴァーナー ヴィンジという作家のSF小説が好き」と語るラムジ氏は、その小説の中で1万年前のコードを修正するエンジニアが「考古学者」と呼ばれていることを紹介し、「このような未来の考古学者のためにオープンは必要。最終的にオープン性によって勝者となるのはユーザーだ」と述べた。
ユーザーにやさしいクラウドサービスを目指す
「カスタマーフレンドリー」について説明したのは、米GoogleのGoogle Cloud グローバルヘッドソリューションズ マイルズ・ワード氏だ。GCPの料金体系、既存資産の活用、サポートなどの面から、Googleがユーザーにとってどのように「フレンドリー」であるのかを説明したワード氏は、以前AWSのソリューションアーキテクトだったことでも知られており、非常に説得力のある説明となった。
料金体系についてワード氏は、「クラウドユーザーは支出の45%を無駄にしている」というショッキングな統計データを紹介し、GCP以外のクラウドサービスの課金体系には無駄があることを指摘。GCPの課金は分単位で無駄がなく、継続利用割引が自動で適用されると説明。さらに、VMのCPUやメモリ構成の選択肢が多く、自分たちに最適なVMのサイズを提案する機能を提供していることについても言及した。
既存資産の活用についてワード氏は、「既存のWindowsプラットフォームには、非常に多くの資産がある」と述べ、GCPはこれらの資産を活用するため、さまざまなバージョンのWindows Serverが用意されていると説明した。また、Active Directoryによるアクセスコントロール、SQL Server、PowerShellによるGCPのコントロールといった機能も紹介し、WindowsプラットフォームからGCPへの移行が容易であることをアピールした。
さらにワード氏は「餅は餅屋」という日本のことわざを引用し、GCPではGoogleのエンジニアによる高度なテクニカルサポートが受けられると説明した。2017年の第3四半期からは、新しいエンジニアリングサポートのプログラムとして、月額料金制で必要なテクニカルサポートを受けられるサービスを提供する予定であることを発表した。
なお、Googleの公認プロフェッショナル「クラウドアーキテクト」試験についても、日本語で受験できるようになったことも発表された。