クラウド構築のベースとなるVMware vSphere5を試す【vCenter編】


 前回は、ESXi5.0のインストールを紹介した。今回は、ESXiをインストールした複数のサーバーを統合管理することができるvCenter Serverをインストールしていく。

 

vCenter Serverのおさらい

 vCenter Serverは、VMwareのクラウドを運用する上で、絶対に必要となるシステムソフトウェアだ。vCenter Serverを利用することで、例えば仮想マシンを別のサーバーに移動したり(vMotion)、仮想マシンのディスクを別のストレージシステムに移動したり、ハードウェアやOSの障害を検知して別のサーバーで仮想マシンの再起動を行ったり(High Availability)、仮想マシンを2つのサーバー上に用意して二重化して耐障害性を高めたり(Fault Tolerance)、といった使い方が可能になる。

 vCenter Server5.0では、1つのvCenter Serverで最大1000台のホストと1万台の仮想マシン(実行中)を管理できる。さらに、複数のvCenter Serverを接続するリンクモードを利用すれば、10個のvCenter Serverで、最大3万台の仮想マシンが管理可能。また、VMware HAクラスタとDRSクラスタは、最大32台のホストと3000台の仮想マシンに対応する。

 

vCenter Serverの動作環境

 以前の記事で紹介したように、vCenter ServerはWindows Serverにインストールして使用するようになっている。vCenter Server 5.0は、仮想マシン上を使っても問題ない。

 vCenter ServerがインストールできるOSとしては、Windows Server 2003 SP2/R2、Windows Server 2008 SP1/SP2/R2などになっている。注意が必要なのは、Windows Server 2003環境においては、64ビット版OSが必須となる点だ。

 また以前のバージョンでは、Windows XPなどで動作したが、最新のvCenter Server 5.0では、Windows Serverが対応OSとしてVMwareの互換性ガイドに紹介されている。

 Windows 7/VistaなどのクライアントOSで動作するかは明示されていない。もし動作するとしても、クライアントOSはvCenter Serverの動作環境としては正式にサポートされていない。信頼性を考ると、クラウドを一括管理するソフトウェアを動かすのは、やはりサーバーOS上になるだろう。

 またvCenter Server 5.0では、Microsoftの.NET Framework 3.5 SP1が必要になる。vCenter Server 5.0のインストーラでは、英語版の.NET Framework 3.5 SP1をインストールするため、日本語環境で利用するには、事前に.NET Framework 3.5 SP1と.NET Framework 3.5 言語パックをWindows Updateでインストールしておく必要がある。

 さらに、Windows Server環境で動作するデータベースが必要になる。vCenter Server 5.0のインストール時に、Microsoftが無償エディションとして提供しているデータベースのSQL Server 2008 R2 Expressがインストールされる。ただし、SQL Server 2008 R2 Expressは、1つの物理プロセッサ、1GBのメモリ、データベース容量4GBまでという制限がある。このため、最大5台のホスト、50台の仮想マシンまでしか管理できない。

 多数のサーバーや仮想マシンなどを管理するクラウドを構築する場合は、SQL Server 2005/2008/2008 R2やOracle Database 10g R2/11g、IBM DB2 9.5/9.7などの商用(有償)データベースを使用することになる(64ビットDSNを利用)。

 

Windows Serverを必要としないvCenter Server Appliance

 vCenter Server 5.0をWindows Server環境にインストールするのは、以前の記事とあまり変わりはない。このため、今回はvSphere5で初めて登場した、vCenter Server Appliance(以下、vCSA)のインストールを紹介する。

 vCSAは、vCenter Serverの機能をLinuxベースの仮想アプライアンスとして構築している。具体的には、OSとしてはSUSE Linux、データベースとしてはEmbedded DB2が搭載されている。このため、仮想アプライアンスを導入インストールするだけで、複雑な設定や追加のソフトウェアをインストールしなくても簡単に動作する。

 ただし、vCSAにはいくつか制限がある。組み込まれているデータベースを使用する場合は、管理できるサーバーとしては5つまで、管理できる仮想マシンは50台までとなっている。別途、Oracle Databaseを使用することもできるので、組み込みデータベースの制限もクリアできる(インストールや設定は管理者が自分で行う必要がある)。

 また、リンクモードがサポートされていないため、複数のvCSAを接続して利用することができない。さらに、Linuxの仮想アプライアンスのため、Active Directoryに対応していない。このほか、IPv6に対応していないし、vCenter Heartbeatにも対応しておらず、vSphere HAを使う必要がある。

 なお、vCSAは仮想アプライアンスとして提供されているため、OSをほかのLinuxディストリビューションに変更することはできない。

 もう一つ、これはvCSAの制限というよりも、仮想マシンでvCenter Serverを動かしたときの注意点になるが、本番環境で使用する時は、サーバーを複数台用意し、vCenter ServerもしくはvCSAをインストールした仮想マシンはHA構成にする必要がある。HA構成で、耐障害性を高めておかないと、vCenter ServerもしくはvCSAが動作しているサーバーをシャットダウンしたり、システムダウンしたりしたときには、クラウド全体が管理できなくなる。

 ここまで紹介してきたように、vCSA自体は仮想アプライアンスとなっているため、導入や環境設定などが容易だ。しかし、OSやハイパーバイザーのアップデートを管理するVMware vSphere Update Managerなどは、Windows Server環境で動作している。このため、vSphere5を管理する上で別途Windows Serverが必要となる。しかしVMwareでは、vCSAの機能向上を図ることで、Windows Server上で動作しているvCenter Serverと同じ機能をvCSAでも実現しようと計画している。

 

vCSAのインストール

 さて前回は、ESXi 5.0のインストールを行った後、iSCSIの設定を行い、共有ディスクを設定した。今回はここから、その続きとして、導入作業をステップバイステップで紹介していこう。


サーバーとして、Dell PowerEdge R805を使用した。AMD Opteronのデュアルソケットのサーバー。Shanghai世代のOpteronを採用しているため、6コア×2ソケット(12コア)のサーバーと少し古いモノだが、テストを行うには十分なパフォーマンスを持っている今回は、iSCSIドライブにバッファローのiSCSI TS-IXTLを使用した。Raid5をサポートしながらも、コストパフォーマンスに優れた製品だ

【1】ESXiをインストールしたサーバーにvSphere Clientを使ってアクセスする。サーバーとiSCSIドライブを接続するネットワーク設定を行う【2】ストレージアダプタで、TS-IXTLを接続しているNICを選択する。今回「ストレージ」を選択して、ストレージの追加を行う。今回は、iSCSIにより直接ドライブを接続するため、ディスク/LUNを選択【3】バッファローのTS-IXTLのIPアドレスなどが正しく設定されていれば、自動的にターゲットとして認識される
【4】ストレージを選択して、ストレージの追加を行う【5】ストレージの追加でストレージタイプを選択する。今回は、iSCSIディスクを使用するため、ディスク/LUNを選択【6】正しくiSCSIディスクが認識されていれば、名前やパスIDが正しく表示される
【7】vSphere5から、新しいファイルシステムVMFS-5がサポートされた。VMFS-5は、2TB以上のドライブをサポートするなど、新しい機能が追加されている。今回は、VMFS-5を使用した【8】iSCSIディスクのTS-IXTLは、フォーマットが行われていないため、フォーマットを行う【9】iSCSIディスクのデータストア名(ドライブ名)を入力する
【10】vSphere5のディスクとして使用する容量を指定。今回は、最大容量を選択【11】各種設定の確認画面【12】これで、iSCSIディスクのTS-IXTLがESXiのドライブとして接続された
【13】VMwareのWebサイトでは、vSphere 5の試用版を提供している。ESXiやvCenter Serverなど、vSphere5を構成するソフトウェアが数多く提供されている。試用版は、60日間フル機能がテストできる【14】vCSAを利用するためには、vCSAのOVFファイル、System Disk、Data Diskの3つのファイルをダウンロードしておく。3つのファイルは同じディレクトリに保存しておく【15】vSphere Clientのファイル→OVFテンプレートのデプロイを選択
【16】ローカルPCに保存されたOVFファイルを指定。ダウンロードした試用版のvCSAのOVFファイルを指定【17】指定したOVFファイルの情報を表示【18】指定したOVFファイルの名前を入力。デフォルトでOK
【19】データストアの指定と容量の指定。デフォルトでOK【20】各種設定の確認画面【21】自動的に、ローカルPCのOVFファイルやシステムファイルをESXiのデータストアにアップロードし、仮想マシンを作成してくれる
【22】OVFファイルのアップロードが終了すると、自動的に仮想マシンが動作する。vSphere Clientで仮想マシンのコンソールにアクセスする。vCSAの設定画面が表示される。IPアドレスは、DCHPから配布されたIPアドレスを使用。ユーザーが静的IPアドレスを設定することも可能【23】vCSAのタイムゾーンを設定。5のASIAを選択【24】19のJapanを選択

 

vCSAにアクセスする


【25】vSphere Clientを使って、vCSAにアクセス。接続するIPアドレスは、コンソールで設定したIPアドレス。アクセスする場合、SSLを使用して、5480ポートを指定。セキュリティ証明書のアラートが表示されるが、今回はこのままアクセスする。実運用を行う場合は、正しく証明書をインポートして、アラートが表示されないようにする【26】vCSAのログイン画面。User Nameはroot、Passwordはvmware(デフォルト)でアクセスする【27】vCSAの使用許諾が表示される。右側にあるAccept EULAで承認する
【28】vCSAを利用するためには、初期設定としてデータベースなどを設定する必要がある。vCenter Server→Databaseから、Database Typeを設定。今回は、vCSAに内蔵されている組み込みデータベースを使用する。それ以外に、Oracle Databaseも使用可能【29】右側にあるActionsでTest Settingをクリックして、データベースの初期設定を行う【30】Operation was Successfulと表示されれば、正しく初期設定が行えた
【31】右側にあるActionsでSave Settingをクリックして、設定を保存する【32】vCenter Server→StatusからvCenter Serverを起動する。右側にあるActionsでStart vCenterをクリックして、vCSAを起動する。今回は、テストのため、デフォルトのパスワードをそのまま利用した。実運用時には、セキュリティ上から、Administrationでパスワードを変更しておく必要がある【33】vSphere Clientを使って、vCSAにアクセス。今回は、ポート5480を指定せずにアクセス。データセンターの作成を行う
【34】データセンターに含めるホストを追加する【35】vCSAが動作しているサーバーをデータセンターに追加【36】ライセンスは、評価モードで使うため、期限限定だがフル機能が利用できる。ロックダウンモード、仮想マシンの場所などの設定を行い追加するホストの設定を終了する
【37】データセンターにホストが追加されている【38】vCenter Server/vCSAをインストールすると、PCにvSphere Clientソフトをインストールしなくても、ブラウザからアクセスできるvSphere Web Clientが利用可能になる【39】vSphere Web Clientでデータセンターにアクセスする。ブラウザにプラグインをインストールすることで、vSphere Clientと同じ使い勝手でvSphere Web Clientは利用できる
【40】証明書に関する警告が表示される。今回は、このまま無視でアクセスする【41】vSphere Web Clientの操作画面。ヘルプが表示されている【42】vSphere Web Clientは、若干vSphere ClientとUIは異なるが、使い勝手はほとんど変わらない。HTML5やAJAX、Flashなどを使って構築されている
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