仮想化道場

ワークロードに最適化されたComputeを提供、ProLiant Gen9の1Uモデル「DL360」を試す

DL360 Gen9を試してみた

 今回お借りしたDL360 Gen9は、Xeon E5-2650(10コア/20スレッド、2.3GHz)×2ソケットのサーバーだった。メモリに関しては、DDR4-2133を32GB搭載しており、インメモリデータベースやビッグデータなどを動かすには少ないが、必要なベンチマークをテストするには問題ない(使用したOSは、Windows Server 2012 R2)。

 HDDは、2.5インチの12Gbps SAS(15K)モデルが2台搭載されていた(シャーシとしては最大8台搭載可能)。

 なお、実際にサーバーを導入する時には、できるだけ多くのDDR4メモリを搭載する方がいいだろう。DDR4メモリに関してはコスト面が気になるものの、コンシューマ用のノートPCやデスクトップPCでも使用されるようになるため、2015年後半には価格が下がってくるだろう。そうなれば、サーバーでも大容量のメモリを安価に搭載できるようになる。

DL360 Gen9は、1Uサーバーでありながら高い性能を持つサーバーだ
DL360では、2.5インチHDDが最大10台まで搭載可能。今回お借りしたモデルはHDDが8台搭載可能なモデルだった。右上の空きスロットはDVDドライブ用
2.5インチの12Gbps SASドライブ。2.5インチでありながら15Kという高速回転のHDDだ
DL360 Gen9の内部。プロセッサを挟むようにDD4メモリスロットが用意されている
プロセッサやメモリに直接エアーフローが流れるように、小さなファンが7台並べられている
800Wをサポートする80Plus Platinumの電源モジュールでありながら、非常にコンパクト

 まずはプロセッサ自体のパフォーマンスをチェックするため、PassmarkのPerformance Testを使用した。

 CPU Markとしては、Xeon E5 v3と同じアーキテクチャを使用したIntel Core i7-5820K(6コア/12スレッド、3.3GHz)を凌駕するパフォーマンスを示している。注目すべきは、暗号化のパフォーマンスが大幅に向上していること。これは、AES-NIなど新しい命令を使用しているため。SSLなどのソフトウェアがAES-NIに対応してくれば、暗号/復号化に対するCPUの負荷が小さくなり、1台のサーバーで多数のSSLセッションをさばくことができるようになるだろう。

Performance TestのCPU Markでも高い性能を示している
暗号/復号化機能は、Xeon E5 v3のAES-NI命令によって高い性能を示している

 マルチスレッドのパフォーマンスをテストするCINEBENCH R15でも、2つのプロセッサ合計20コア/40スレッドという膨大なCPUパワーを利用して、高い性能を示している。

CINEBENCH R15でも高いマルチスレッド性能を示している

 なおXeon E5 v3には、18コア/36スレッドのXeon E5-2699 v3(2.3GHz、TDP145W)が用意されているため、このプロセッサを使用したモデルなら、より高い性能を示すだろう。Xeon E5 v3では、コア数が増えるとプロセッサの消費電力と放熱の関係から、動作クロックを低く抑えることになる。もう少しプロセッサの成熟がすすめば、多数のCPUコアを内蔵しても高クロックで稼働するプロセッサも登場してくるだろう。DL360 Gen9のシャーシは、TDP 160Wのプロセッサに対応しているため、将来的に性能の高いXeon E5 v3プロセッサが登場しても、対応することが可能だ。

 ストレージに関しては、CrystalDiskMarkを使用してテストした。2.5インチの12Gbps SAS HDD(15K)を使用しているため、SSDやNVMeストレージを使用したサーバーに比べるとずばぬけて速いというわけではない。たださすがに、以前の6Gbps SAS HDDよりは高い性能を示している。

 サーバーの用途に合わせて、SSDを中心にするのか、HDDを中心にするのかを考えた方がいいだろう。仮想化やクラウドのComputeに使用するというなら、SSDだけにして、ストレージに関しては、HDDを多数搭載できる2Uや4Uサーバーをストレージ サーバーにして、1UのDL360 Gen9は、高速なプロセッサと大容量のメモリ、高速ネットワークを搭載したComputeサーバーとして台数を並べるのがいいのかもしれない。

CrystalDiskMarkの結果。12Gbps SASの高速HDDのため、HDDとしては高い性能が出ているが、やはりSSDやNVMeに比べると物足りない

 最後に、サーバーとしてのパフォーマンスを測るため、デルソフトウェアのBenchmark FactoryでScalable Hardwareのベンチマークを行ってみた。ただ、今回お借りしたサーバーは、メモリやディスクなどに十分なリソースがないため、目を見張るほどの高性能というわけではなかった。十分なメモリとSSDなどを使用すれば、もっと高い性能を示すだろう。大容量のストレージが必要になるなら、SSDをHDDのキャッシュとして利用するSmartCahceを使えば、より高い性能とストレージの大容量化という2つの問題も解決できる。

 ただ、Scalable Hardwareのレスポンスタイムやトランザクションタイムは、ユーザーロードが増えていっても短い時間で済んでいる。このあたりは、CPUの性能とDDR4メモリの性能に支えられているのだろう。

 こうした話は、1UのComputeサーバーのローカルに大容量ストレージを用意するのか、といったデータセンター自体のデザインにもかかわってくるが、個人的には、Computeサーバーは1Uサーバーを利用して、大容量のストレージは別に用意する方が、SDDCというコンセプトにはマッチするのでは、と思う。

 あるいは、SSDやHDDの台数が収容できる2Uサーバーを使用して、分散型の仮想ストレージソフトウェアを使い、複数のサーバーを組み合わせて仮想ストレージを構成するというやり方もあるだろう。

 少し話は逸れたが、HP ProLiant DL360 Gen9は、1Uサーバーでありながら高いパフォーマンスを持つサーバーといえる。今後は1Uサーバーであっても、汎用アプリケーションを動作させるインフラとして、検討に対象になってきそうだ。

ユーザーロードが増えいくとリニアにトランザクションタイムが増えていく
レスポンスタイムは非常に短く、一つ一つのユーザーに対するトランザクションタイムも短い。ユーザーロードが増えれば、リニアにトランザクションタイムが増えている。このあたりは、より負荷をかけテストすべきだったかもしれない
Scalable Hardwareの時間軸におけるトランザクションタイムとレスポンスタイムの変化

山本 雅史