仮想化道場

サーバー向けにチューンナップされた新しいAtom「C2000シリーズ」 (来年リリースされるサーバー向け64ビットARMがライバル?)

来年リリースされるサーバー向け64ビットARMがライバル?

8コアのAtom C2750は、Haswell世代のXeon E3-1230 V3に匹敵する性能を示している。サーバー向けのARMとなりAppliedMicro X-Genよりも2倍の性能を持つ

 Atom C2000のパフォーマンスは、以前のAtom S1200と比べて4倍ほどの性能を示している。SPECintだけを見れば、Xeon E3-1230v3(Haswell世代)に匹敵しているほどだ。

 ただ、現在のマイクロサーバーの用途としては、プロセッサのパワーを生かすよりも、単純で、比較的軽い処理を行うWebのフロントサーバー、ビッグデータの解析を行うHadoopサーバーなどに利用されている。このため、マイクロサーバーはニッチなサーバーとして、一般的にはならないのではと分析しているアナリストもいる。

 しかし、低消費電力で多数のプロセッサを搭載するマイクロサーバーは、10年後にはサーバーのメインストリームになっているかもしれない。これは、Intelの共同創設者のゴードン・ムーア博士が提唱した、いわゆるムーアの法則が終焉に近付き始めているためだ。

 半導体のテクニカルカンファレンス「Hot Chips25」において、米国防高等研究計画局(DARPA)でマイクロシステムズ技術研究室のディレクターを務めるロバート コールウェル氏は、「2020年にはムーアの法則は終焉を迎える」と語っている。

 この理由としては、現状の半導体製造テクノロジーにおいて、7nmもしくは5nmが限界とされていることが大きい。技術的には、5nm以下の半導体を製造することは可能だが、半導体工場(製造マシンなど)にかかるコストが膨大になり、現実的には7nmもしくは5nm以下のプロセスは経済的に引き合わないだろう。

 しかしあと10年ほどで、半導体プロセスにとって大きなブレークスルーが見つかるかといえば、非常に悲観的だ。今までの半導体と異なる量子半導体など、さまざまな研究が行われているが、経済的に量産できるレベルには10年では到達しないだろう。

 したがって、10年後には、現在のサーバープロセッサのメインストリームであるXeonなども、性能的に頭打ちになってくることが予想される。当面の間はアーキテクチャの改良などにより、性能は何とか向上していくだろうが、2年で半導体の数が2倍になるという大きなメリットがなくなると、サーバーの性能も倍々ゲームを続けられなくなる。

 そういった背景を考慮すると、多くの省電力のプロセッサをクラスターで接続して動かすサーバーは、20年後のサーバーアーキテクチャなのかもしれない。

 この分野はIntelだけでなく、ARM陣営も虎視眈々(たんたん)と狙っている。実際、HPのMoonshotは、ARMプロセッサ版も開発されている。

 ARMとIntelの戦いが本格的に始まるのは、64ビットARMプロセッサとなるCortex-A57/A53などのプロセッサがリリースされる2014年以降になるだろう。

 そのような中で今後は、SDDC(Software Defined Data Center)を実現するためのハードウェアとして、ユーザーのリクエストで自由に構成を変えられる“柔らかい”サーバーが必要になってくるのだろう。Atom C2000シリーズは、柔らかいサーバーを構築するためのキーパーツとなっていくのかもしれない。

山本 雅史