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Google Cloud、AIプラットフォーム「Gemini Enterprise」を発表 Microsoft 365などさまざまなアプリと連携

 米Google Cloudは9日(米国時間)、AIの包括的なプラットフォームとなる「Gemini Enterprise」を発表した。「Google AIの最高水準の機能を、オフィスワーカーからフロントラインワーカーまで、すべての従業員のあらゆるワークフローで提供するプラットフォームだ」と、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 テクノロジー部門 執行役員の寳野雄太氏は述べている。

 「これまでの生成AIは個別のアプリ内で機能していたが、実際の業務は複数のアプリケーションにまたがるエンドトゥエンドのプロセスであるため、AIエージェントはすべてのワークフローを統合し、業務全体をサポートする必要がある。その支援をするのがGemini Enterpriseだ」と寳野氏は語る。

グーグル・クラウド・ジャパン テクノロジー部門 執行役員 寳野雄太氏

 Gemini Enterpriseは、頭脳にあたる部分のGeminiと、ワークベンチとなる開発ツール、そしてエージェント群で構成されている。「エージェントが自律的に、誰に何を依頼するかを判断するために必要なのが、頭脳となるGeminiだ。AIエージェントを簡単に構築するための開発ツールも組み込まれている。エージェント群の中には、専門性の高いGoogleのエージェントとともに、パートナーのエージェントも含まれているほか、ワークベンチで開発した顧客のエージェントと連携させることも可能だ」と寳野氏は説明する。

Gemini Enterprise

 また寳野氏は、人間が行動を決定する際にコンテキストが必要なように、エージェントにも適切なコンテキストが不可欠だとして、「企業のコンテキストはあらゆる場所に存在するため、Gemini EnterpriseではMicrosoft 365やGoogleのサービスを含め多様なサービスと接続し、それらを認識した状態でエージェントが適切に行動できるようにする」という。

 Gemini Enterpriseは、ユーザーや企業ごとに最適化されたパーソナライゼーション機能を兼ね備えている。これはナレッジグラフという技術を活用したもので、企業内のコンテキストをベースにした専用のナレッジグラフを自動生成したうえで、そのコンテキストを利用して企業や個人ごとにパーソナライズした結果を提供する。パーソナライゼーションは、業界や肩書、最近のメールやチャットなどのやり取りから判断する。

Gemini Enterpriseパーソナライゼーション

 Gemini Enterpriseでは、データサイエンスエージェントもプレビューとして提供される。データサイエンスエージェントにより、ビジネスユーザーが自然言語でデータドリブンな洞察を呼び出すことが可能だ。接続されたデータソースだけでなく、企業内のコンテキストも踏まえて動作するという。

Gemini Enterpriseデータサイエンスエージェント

 さらに、Gemini Enterpriseにはコーディングエージェントも含まれている。同エージェントを使用することで、社内の設計図や業務のコンテキストを自動的に理解し、それをもとに開発プロセスを支援する。自動化されたQAプロセスにより、バグや侵害のリスクを最小限に抑えるほか、複雑なレガシーコードをより簡単にリファクタリングし、技術的負債を減らしてスケーラビリティを向上させるという。

Gemini Enterpriseコーディングエージェント

 こうした機能を企業が安心して使用できるよう、Gemini Enterpriseはエージェントの動作に対するガバナンスも備えている。エージェントの利用権限や共有設定を管理し、コンテキストデータに安全に接続するほか、マルチエージェントシステム全体にわたるAI固有の組み込みガードレールにより、すべてのエージェントのやり取りを保護する。単一のダッシュボードでエージェントを集中管理できるため、エージェントが完全に可視化され、制御できるという。

 最後に寳野氏は、Googleのエージェントに対する考えがクローズドな環境に閉じるものではなく、オープンスタンダードであることを重視していると強調。Gemini EnterpriseもAgent2Agent Protocol(A2A)に対応しており、異なるエージェント同士が連携し、協調して動作することが可能だ。また、Agent Development Kit(ADK)を使って開発されたエージェントは、使用するAIモデルやクラウド環境に関係なく、Gemini Enterprise上で一元的に管理し運用できるとしている。

包括的プラットフォームとオープンなエコシステム

 Gemini Enterpriseは、中小企業やスタートアップなどに向けた「Gemini Business」エディションと、大企業向けの「Gemini Enterprise Standard」および「Gemini Enterprise Plus」エディションとして提供される。年間プランの価格は、Gemini Businessが1ユーザーあたり月額21ドルからで、Gemini Enterprise StandardおよびPlusが1ユーザーあたり月額30ドルからとなる。