週刊海外テックWatch

Appleも値上げ AI需要が引き起こした「メモリの終末」

AI需要とHBMがDRAM市場を塗り替える

 メモリ危機の根本には、AI向け特殊メモリ「HBM(High Bandwidth Memory)」の台頭がある。

 HBMは、帯域幅を拡張した高密度の積層メモリで、GPUや他のAIアクセラレーターに必須のパーツだ。IEEE Spectrumが紹介するSemiAnalysisの試算では、通常メモリの3倍のコストがかかり、GPU製造コストの50%以上を占める。

 HBMを量産できるのは、Micron、Samsung、SK Hynixの3社に限られ、急拡大する需要に対応している。このDRAM市場を寡占する3社が、そろって生産能力をHBM優先に転換しているため、既存のDRAMの供給が圧迫されているのだ。

 そしてHBMの勢いは衰えを見せない。Micronの最高経営責任者Sanjay Mehrotra氏は2025年12月のアナリスト説明会で、HBMの世界市場が2025年の350億ドルから2028年には1000億ドルへ拡大すると述べた。この規模は、2024年のDRAM市場全体をも上回る。しかも同社の従来予測より2年早い到達とIEEE Spectrumは指摘している。

 とりわけ目立つのがHBM市場で6割(2025年)のシェアを持つSK Hynixだ。同社は6月22日、時価総額が2080兆ウォン(約1兆3500億ドル)を超え、Samsungを抜いて韓国のトップに立った。2002年には過剰債務でMicronへの身売り寸前まで追い込まれた同社が、劇的に復活した。

 IEEE Spectrumは、DRAMは巨大な好況と壊滅的な不況を繰り返す業界と指摘する。メモリ専門家でCoughlin Associates代表のThomas Coughlin氏によると、DRAM工場は投資額が巨大で工場建設に何年もかかるため好況期に間に合わず、不況に転じた時の損失が大きいためメーカーは拡張に消極的なのだという。

 前回2022~2023年の不況では、Samsungが生産を半減させるなど、各社は生産や人員の大幅削減まで追い詰められた。その後、業界は新たな設備投資をほとんど行わなかった。今の状況は、干上がった貯水池にAI需要の濁流が流れ込んだようなものだ。

 AI需要の波はさらにNANDにまで及んでいる。同じくTrendForceの6月16日の発表によると、不揮発性メモリの「NOR Flash」と「SLC NAND」の契約価格も2026年上半期にそれぞれ100~120%、130~150%上昇したという。車載、産業用などで広く使われているが、特に高密度NOR Flashは代替製品がなく、2026年下半期以降も深刻な不足が続くという。こちらの値上げがエンドユーザーに影響するのは、これからだ。