週刊海外テックWatch

GoogleのGeminiでSiriを強化 AI開発でAppleが方針大転換

戦略的勝利か、開発能力の敗北か

 今回の提携は、両社にとって戦略的に重要な意味を持つ。Appleは20億台以上のデバイスでAI機能を強化でき、Googleは消費者の間でAIモデルのデフォルト選択肢としてのブランドイメージを確立できる。

 Morningstarのシニアアナリスト、William Kerwin氏は「Appleから見れば、これは明らかに勝利だ。2024年夏以降、彼らはAI戦略で苦境に立たされてきた」と述べている(The Verge)。Reutersは、この契約がGoogleにとって「OpenAIとの競争におけるAlphabetの立場を強化する」重要な“信任投票”だと伝えている。

 しかし、提携には懸念もある。最も大きいのは独占禁止法上の問題だ。コーネル・ロースクールのJames Grimmelmann教授は、「数年後、Googleは検索プロバイダーとして独占禁止審査を受けたのと同じように、AppleへのAIプロバイダーとして新たな独占禁止訴訟に直面する可能性がある」と警告している。The Vergeが伝えている。

 Appleの自社開発能力への失望も広がっている。TechRadarはオピニオン記事で「Apple Newton以来、Appleから出てきた最も失望させるもの」と酷評。共同声明の「次世代Apple Foundation ModelsはGoogleのGeminiモデルに『基づく(based on)』」という表現を指摘し、「GeminiなしではAppleの重要なAIアーキテクチャは存在しない」としている。

 さらに、「エンジンを買って車のデザインに集中する方が良い」(Creative StrategiesのCarolina Milanesi氏)という肯定的な見方も紹介しながら、「これは寛大な見方」と退け、「Appleは約束を果たせなかった」と結論づけた。

 Appleは現在、2027年ごろの完成を目指して独自の1兆パラメータモデルを開発中で、今回の提携が過渡的な措置との見方もある。だがAppleInsiderは、そのモデルが完成した後も、Geminiを強化、比較、訓練のために使い続ける可能性が高いと分析する。

 Appleは2026年春にSiriの大型アップデートをリリースする予定だ。The Vergeは、この提携を「OpenAIなどの新興企業に対するAppleとGoogleの協力体制」と分析する。長年のライバルであり同時にパートナーでもある両社が、OpenAIなどのスタートアップの脅威に対抗するため、相互に有益な関係を深化させている。その成果はどう出るのだろう――。