大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

富士通エフサスが非ICT領域を攻める理由とは?~今井社長に新たな事業への挑戦を聞く (新事業創出の場となるInnovation & Future Center)

新事業創出の場となるInnovation & Future Center

 フューチャーセンターと研修センターの役割を持つ「みなとみらいInnovation & Future Center」は、富士通エフサスの新事業創出の場ともなる。

 同社では、2010年に次世代ビジネス企画推進本部を設立し、新たなビジネス領域の開拓に取り組んできた経緯がある。また、2011年からは、社内外の企業家や研究者との知識創造の場となる「サービス・イノベーション・フォーラム」をスタートしている。

 今井社長は、「富士通エフサスでは、全社員一人ひとりが現場起点でイノベーションを実践できる組織を目指してきた。その活動を具現化する場が、みなとみらいInnovation & Future Center。富士通エフサスの人材教育の場として、また将来に向けた新たなビジネス創出の場としても活用していく」と語り、「2015年度までには新たなビジネスで売り上げ構成比の10%を目指す。そうした成果がここから生まれることを目指したい」と宣言する。

 富士通エフサスにとって、ICT領域以外のサービスも含めた「トータルサービス」を実現する企業への変革がこれからの課題であり、みなとみらいInnovation & Future Centerは、その役割を担うことになる。

非ICT領域への展開をスタート

 実は、富士通エフサスのICT領域以外への挑戦はすでに始まっている。

 それは、同社が8月からスタートした「FUJITSU Infrastructure System Integrationオフィスまるごとイノベーション」である。

 オフィスまるごとイノベーションは、オフィスリニューアルにおける「ICTの効果的な利活用」に、「快適なオフィス空間デザイン」を融合。新たなワークスタイルソリューションを提案するものだ。

 今井社長は次のように語る。

 「大都市圏ではオフィス需要が堅調となっている。その背景には、事業継続の観点で耐震および防災性能が優れたビルへの移転や、業務効率向上のための首都圏への事業所集約といった動きがある。だが、従来のオフィスのリニューアルは、入居者数に応じたフロアのゾーニング、デスクの配置、ミーティングエリアの確保などが優先され、ワークスタイルを変えるタイミングを逃してしまうことがほとんどであった。昨今では、BYODによるスマートデバイスの活用、テレビ会議やWeb会議による遠隔ミーティングなどのワークスタイル革新といった動きがある。富士通エフサスでは、これまでのICTでの実績を背景として視点から、安心、安全で、スピーディーな業務を可能とする新たなワークスタイルを提案するオフィスビジネスに参入することで、オフィスにおけるトータルサービスを提案する。その第1弾となるのが、オフィスまるごとイノベーションとなる」。

 こうした市場ニーズの顕在化とともに、富士通エフサスにとっても、ICT領域以外への取り組みを踏み出す理由がある。

 それは、クラウド・コンピューティングの広がりによって、所有から使用へと環境が移行。自社所有のサーバーを、データセンターへと移行するといった動きが広がっていることだ。また、ICT機器のコモディティ化によって価格が下落するといった動きも加速している。これらの市場変化は、ICT機器の保守を主力とする富士通エフサスにとって、メンテナンス機会の減少や、メンテナンス料金の低減といった動きにつながる。

 こうした取り巻く環境の変化を見ているだけでは事業規模は縮小するだけだ。

 「ITインフラサービスだけにとどまらず、お客さまのワークプレイス全般を視野に入れたトータルサービスへの転換が必要である」というわけだ。

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