「垂直統合のクラウドの世界でこそ強みが生きる」
富士通・山本正已社長

クラウド Watch新装刊記念・特別インタビュー


 「クラウドは、富士通の成長基盤のひとつであるだけでなく、富士通の強みを最も発揮できる領域である」。富士通の山本正已社長は、同社のクラウド事業への取り組みをこう位置づける。2010年4月1日の社長就任から約2カ月。山本社長は、社内外に向けて「元気で、明るい富士通」の実現を目指すと公言。その源泉がクラウド事業になるとも語る。

 富士通は、今後、クラウド事業にどう取り組むのか。そして、富士通はどんな方向性を打ち出すのか。クラウドWatchリニューアル特別企画第1弾として、富士通・山本正已社長に独占インタビューを行った。


富士通を「元気で、明るい会社にしたい」

――2010年4月1日に社長に就任して以降、ご自身の活動のなかで、特に意識している点はありますか。

富士通の山本正已社長

山本社長:いま一番強く思っていることは、富士通を「元気で、明るい会社にしたい」ということです。経済環境の悪化に伴い、社会全体に元気がない。そうしたなかでも、富士通は明るく、元気な会社でなくてはならない。いや、むしろいまこそ富士通が元気でなくてはならないんです。

 例えば、クラウド・コンピューティングという新たな時代が到来したことで、富士通にとって大きなビジネスチャンスが生まれているだけでなく、お客さまに貢献し、社会を元気にできるテクノロジーを提案できる時代が訪れたともいえる。もちろん、クラウドは手段でしかない。目的は、お客さまの価値を創出することにあります。

 しかし、これまでのICTの環境では、気軽に使える手段がなく、プラットフォームを用意して、ソフトウェアを用意して、それでようやくICTを使う環境ができていました。また、これだけ投資したから投資回収はどうするのか、という大きなサイクルでとらえる必要もあったのです。

 ところが、クラウドになったことで、ICTのとらえ方が、所有から利活用に移行し、さらに自分が使いたい環境がすぐに整うようになりました。誰でもが優れたコンピューティングパワーを使い、誰でもがすぐに自らのアイデアを成果につなげることができますし、駄目だったら次のことに挑戦するというように、小さい投資で始められるというメリットもあります。

 クラウドは、お客さまのチャンスを広げることができ、富士通もビジネスを拡大でき、そして、クラウドを活用することで、富士通の全社員も、新たなことにチャレンジできるようになる。いま富士通は、主役としてクラウドの潮流にどう乗っていくことができるかを追求していかなくてはならないところにいます。


――山本社長の考える「明るく、元気な富士通」とはどんな状態ですか?

 社員一人一人が高いモチベーションを持ち、さまざまなことにチャレンジしていく状態。これも駄目、あれも駄目ではなく、あれもこれもやってみようという風土のなかで、攻めていく意識を持ちながら、社員全員が働ける環境を作りたい。これは富士通が持つ「ともかく、やってみろ」というDNAにもつながるものだといえます。


――富士通の8代目社長、小林大祐氏が語られた言葉ですね。

 「ともかく」という言葉は、言い換えれば「スピード」です。「やってみる」というのは「チャレンジ」。つまり、「ともかく、やってみろ」というのは、スピードを持って、チャレンジしてみろということなんです。

 クラウドは、スピードを持って、チャレンジする基盤としては、最適な手段です。クラウド環境になればなるほど、富士通のDNAが発揮できる。明るく元気な富士通を実現する上で、クラウドは大きな武器になるわけです。一方で、「ひらめき」ということも大切にしていきたいと考えています。

 いま、世の中で成功しているビジネスを見ると、「ひらめき」によって生まれたものが多い。新たな価値とは、じっくりと考えて創出できるものではありません。これまでの延長線上で考えていても、創造的なものは生まれない。さまざまな情報を得て、そのなかで、ひらめいたことこそが、成功するビジネスにつながるのです。

 社員に向けては、ひらめきを大切にしてほしいということを言っていますし、お客さまに対しても、「もし、ひらめきがあれば、富士通は、それを形にするためのお手伝いをしたい」ということを言っています。

 富士通が明るく、元気な会社になるには、社長である私自らが率先して実践しなくてはならない。4月に社長に就任してから、1カ月間で約70社の企業の方々にお会いしました。机にかじりついているのでなく、とにかく現場を回る。5月もこの勢いで企業の方々とお会いしていますから、すでに100社は超えていますよ。私が目指しているのは「働く社長」(笑)。体力が続く限り、自ら動きまわるつもりですし、日本国内にとどまらず、海外にも積極的に出ていきたい。

 自らが「ひらめく」ためには、いろんな人の話を聞き、世の中の変化を自分で見ないと駄目ですからね。富士通は、テクノロジーをベースとした会社です。テクノロジーをベースに、ひらめきを生かし、新たなビジネスモデルを作り、社会に役に立つことに挑戦していきたいと考えています。


日本発の「真のグローバルICTカンパニー」を目指す

――2010年6月で、富士通は創立75周年を迎えます。4分の3世紀を迎える富士通が、いま掲げる目指す企業像とはなんですか。

 ひとことに集約するならば、目指すのは、日本発の「真のグローバルICTカンパニー」です。本当は、真のグローバルICT「エクセレント」カンパニーといいたい(笑)。ただし、これは五合目に到達した段階。まだ道半ばという状況で、これから10年をかけて、挑戦していかなくてはならないテーマです。

 グローバルICTカンパニーを目指す上で重要な要素のひとつに、日本を基軸にしているという点があります。日本が持つ技術の良さ、日本人そのものが持つ良さをベースに、グローバルに展開していく。富士通は、この点について、ようやく自信がついてきたところで、この数年の間に、それを実績という形で実証していきたいですね。


――自信の理由はどこにありますか

 戦うための武器がそろい、そして、戦うためのビジョンや、考え方も整ってきました。問題は、実戦経験。ただ、実戦で成果を上げれば、一気に攻めあがることができる。もちろん、苦しく、困難な道となるでしょう。しかし、それに挑戦し、厳しい競合環境のなかでも戦っていかなくてはなりません。富士通は、現在、37%の海外売上比率を、2011年度には40%以上とする目標を掲げています。

 これまでは、グローバルに展開しているといっても、日本からプロダクトを出すという仕組みだったり、海外といっても、欧州を中心にした現地向けサービスが主軸だったりしました。しかし、クラウド時代の到来とともに、これらをベースにして、クラウドサービスという形で海外に展開していくことができるようになる。その基盤となる技術は、日本で実証し、お客さまから評価を得た上で、受け入れられた実績を持つサービスとなります。

 つまり、日本発のクラウドサービスを、グローバルで展開する仕組みができあがり、同時に、日本のお客さまがグローバルに展開する場合にも支援ができるということにつながります。

富士通とFTSとで「One PRIMERGY」体制を実現

 もうひとつの理由は、富士通と、ドイツの富士通テクノロジー・ソリューションズ(Fujitsu Technology Solutions:FTS)とが、「One FUJITSU」という意味で完成系に近づき、それが機能するようになってきたことが挙げられます。例えば、x86サーバーの「PRIMERGY」は、全世界で50万台という出荷計画を掲げています。これを実現するには、グローバルで「One PRIMERGY」にする必要がありますが、これまではローカル仕様が入り、地域別に別々の目的で製品が作られていました。

 それが、ようやくグローバル仕様としてひとつにまとまり、企画や開発が一本化し、そしてマインドも「One FUJITSU」となってきたのです。もともと富士通の生い立ちを考えると、日本の富士通本社と、ICLをベースとした英国の富士通サービス(Fujitsu Services)、富士通シーメンス・コンピューターズ(Fujitsu Siemens Computers)を100%子会社化したドイツのFTSは、まったく異なる会社からスタートし、それが融合してきました。日本の多くの企業が、日本の支店として自ら拠点を設置して、欧州市場に進出していった経緯とは異なるのです。

 これまでは、それぞれの会社の持ち味を生かして成長してきましたが、オープンなクラウドの世界になると、地域に密着したローカル展開を強化する一方で、グローバルに一貫性を持った形でやり方を強めていった方が効果が出やすい。Think Global, Act Localという手法です。いま、ようやく製品が一体化してきた。今度は、サービスを一体化していく時期に入ってきたと考えています。


――欧州以外の地域においてはどうですか。北米市場に関しては、山本社長自身、アウェーと表現していた時期もありましたが。

 富士通サービスやFTSといった地盤を持つ欧州に比べると、北米市場は、富士通にとって、アウェーの市場であることには変わりはありません。しかし、クラウドの時代になると標準化が進み、富士通にとっても大きなチャンスが生まれます。この4月から北米市場における経営体制を一新し、2010年度中には、北米に新たなデータセンターを作り、日本で培ったプロダクトやミドルウェア、プラットフォームといった成果を北米市場に展開することができるようになります。

 ようやくサービス指向の体制を北米市場に持ち込むことができるようになるのです。その地盤を使って、まずはやってみて、最初の成果は1年かけて見極める。2010年度に基盤が確立できれば、2011年度、2012年度と、北米における事業を一気に加速させることができるでしょう。

 一方で、新興国については、日本の企業が進出する中国、ASEANが重点地域となりますので、ここに向けて、お客さまと一緒に成長していくための基盤を作っていきます。富士通の一番の強みは、お客さまと一緒にビジネスを展開していくこと、お客さまと一緒に成長していくということです。これを全世界で展開していきます。今年から「Shaping tomorrow with you」というブランドプロミスを展開していますが、これは、お客さまと一緒にグローバルに成長するという姿勢を明らかにしたものです。


2011年度の必達目標、営業利益2500億円はすでに「見えている」

――山本社長は、今年7月に新たな中期経営計画を発表することを明らかにしています。その方向感を教えてください。

 新たな中期経営計画では、真のグローバルICTカンパニーに向けた具体的な施策を発表する考えです。5月に開催した「富士通フォーラム2010」では、クラウドへの取り組みや、富士通が目指すビジョンについてお話ししました。さらに、いくつかの事例も出しましたが、具体的なところにはまだなにも言及していません。より具体性のある施策を発表し、富士通の本気ぶりをみせたいと思っています。

 これまでのICT産業の変遷をたどると、生産性向上を目的としたコンピュータセントリックの時代から、ネットワーク技術の進化によって、コミュニケーションやコラボレーションが重視されるネットワークセントリックな時代へと変化してきた。それが、ここにきてICTが広く普及し、誰でもがICTが利用できるようになったことで、一人一人がICTの便利さ、使いやすさを体感する時代に入ってきました。

 富士通はそれをヒューマンセントリックな時代と定義しました。そうした時代に入ると、新しい価値観や新しい使い方が出てくる。例えば、農業を例に挙げると、さまざまなセンサー技術によって、土地、気候、水といった情報を収集し、そこに人の知識や、ノウハウとが重ね合わさり、「実践知」というものが生まれる。これを広く展開することで、一人に蓄積されていた最適な農業の手法が、多くの人で共有できるようになり、農業というビジネスが変わっていくことになります。

 これからのICTの役割は、膨大な情報を、クラウド上の高性能なCPUパワーを活用しながら、マイニングをかけ、有効なデータだけを取り出して、実践知として使えるようにしていくというものになる。ICTが広く浸透することで、いままで気がつかなかったような新たなビジネスモデル、価値を提供できるのです。

 これは、農業以外にもさまざまな領域で可能性を広げることになるでしょう。むしろ、いまは、どの分野で、どんな成果があるのかを特定することができないほどです。こうした、明日やってくる新たな社会に対して、富士通はひらめきを持って取り組み、お客さま、パートナー、社会に、価値として提案していきたい。これが富士通が目指す「インテリジェント社会」の姿でもあります。


2009年7月の経営方針説明会で示された資料。2011年度に売上高5兆円、営業利益2500億円を目指すとしている

――これまで富士通では、2011年度の業績見通しとして、売上高で5兆円、営業利益が2500億円、営業利益率では5%という数字を目標に掲げてきました。この計画はどうなりますか。

 その目標は降ろしません。そして、これは必達目標とします。


――2010年度の計画では、営業利益2000億円の当初見通しを、1850億円としましたね。その時点で計画がすでにずれているのでは?

 2010年度には、1000億円規模のクラウド関連投資を行うことを優先します。そのため、慎重にみて、営業利益計画を1850億円としました。しかし、営業利益2000億円という数字については、私自身、「見えている」という感覚を持っています。2010年度に2000億円が見えれば、次にどう手を打てば、2011年度に2500億円に到達するかもわかる。つまり、売上高で5兆円、営業利益2500億円、営業利益率5%はすでに射程圏内に入っている。そう理解してもらって構いません。


――その先の2012年度はどういった計画になりますか?

 2012年度は、増収増益を前提とします。しかし、営業利益が2011年度までの延長線上で、右肩上がりとする計画にはしません。むしろ、2012年度には、どうやってビジネスを広げるか、どうやって売り上げを増やすかを優先したいですね。キーになるのは、クラウド環境をベースにした価値創造型ビジネスの創出と、グローバル展開の強化による海外比率40%以上ということになります。

 利益を伸ばすことは、富士通社内のコスト削減でも実現することができます。だが、売り上げを上げるということは、富士通がやっていることをお客さまに理解してもらわなければ実現しません。富士通が新たなことに挑戦して、それが価値のあることだと認識してもらわなくては成しえない。その点が重要になっていくるのが2012年度ということになります。

 中期経営計画において、成長の柱は、グローバル展開とクラウド事業です。クラウドの世界が広がれば、顧客単価は下がることになるでしょう。

 ですから重要なのは、“n”(ビジネスの領域)を増やすことなんです。“n”の増やし方は2つある。ひとつはテリトリーを増やすこと、もうひとつは、新たなビジネスを創出し、いままでICTが入っていなかったところに展開する。これは端的にいえば、グローバル展開とクラウド事業ということになるのです。


2009年3月の説明会で、2010年度にx86サーバーを全世界で50万台出荷するとの目標が示された

――一方で、2010年度におけるx86サーバーの出荷目標として全世界50万台、そのうち国内20万台を計画していますね。ところが2009年度の実績はグローバルで20万台、日本で10万台。この目標はどうなりますか。

 50万台という旗も、絶対に降ろさない。ただ問題は、その時期だといえます。2009年度を見ると、国内のx86サーバー市場は前年比80%強とマイナス成長であったのに対して、富士通は125%という成長を遂げました。市場よりも40%以上の伸びを達成しているわけです。もし今年、市場全体が前年並という成長率になったとしても、富士通はさらに大きな成長が見込めると考えています。

 そうなると、日本国内の目標として掲げた年間20万台という目標は、2011年度には達成が見えてくる。逆算すれば、その時に、日本以外の地域であと30万台を出荷すればいいという計算になります。欧州では2010年度には、20万台強の実績が見込めますから、欧州での成長と、これまで実績がなかった米国での成長を考えれば、2011年度には50万台という数字が射程圏内に入ることになります。


――話は変わりますが、グローバル戦略を今後加速していく上で、日本の政府などに対する要望はありますか?

 日本の企業の海外シフトが始まっているなかで、政府のサポートは重要だと感じています。いまの延長線上でいけば、日本に本社が残らないという状況が生まれかねない。法人税の見直しを含めて、世界で戦うための環境を作ってもらいたいですね。

 製品、サービスを世界共通にしようとしているわけですから、それを支える日本の環境もグローバルで戦えるものとし、日本だけが特別であるという状況を作ってはいけません。

 一方で、モノづくりで強みを発揮する日本において、最近は理系の学生が少なくなっているという問題が浮上してきています。これは長い目で見れば大きな問題になってくるでしょう。官民が一緒になって解決していかなくてはならない課題のひとつだといえるでしょう。


富士通のクラウドの強みは、垂直統合型のビジネスモデルとお客さまとの関係

――富士通の中期的な成長戦略の一翼を担うクラウド事業ですが、クラウドにおける富士通の強みとはなんでしょうか。

 クラウドの世界というのは垂直統合の世界です。ネットワークサービスであるNaaSや、サーバーやストレージによる仮想クラウド基盤および物理クラウド基盤であるIaaS、OSやミドルウェアといったアプリケーションプラットフォームであるPaaS、アプリケーションサービスであるSaaSといったようにいくつかのレイヤーがありますが、これらを一気通貫で、1社で提案できるところはほかにありません。

 しかも、この垂直統合のすべての領域において、富士通は基幹技術を持ち、それに対応することができる。また、足りないところがあっても、富士通は他社と組むことができやすいポジションにいます。オープンであり、しかも、富士通には数多くの基幹技術がありますから、クロスライセンスといった形でのアライアンスもやりやすいのです。

 世界のトップベンダーと手を組みながら、富士通グループ全体で垂直統合のクラウド・コンピューティング基盤を提供できる。これが富士通の強みです。この基盤をさらに強めていきたいですね。


――2010年度だけで、クラウド関連分野に1000億円を投資する狙いとはなんですか?

 われわれが思った以上にクラウドの進化は早く、富士通も、その分投資を早めて、時代の要請に対応するのが狙いです。1000億円の内訳は、既存の領域に500億円、新規の領域に500億円という表現をしていますが、富士通が、いまこれだけやりたいということを集めたら1000億円となった結果です。

 ここで知っておいていただきたいのは、今年初めて1000億円を投資するのではなく、昨年だけでも約500億円規模の投資しており、来年も、1000億円規模の投資をしていきたいという継続性を持った投資であるということです。

 昨年までは、研究開発やソフトウェアという領域への投資が目立ちましたが、2010年度は世界5カ所にデータセンターを新設するなど、グローバルな投資を本格的に開始する。これらによって、富士通が提案するパブリッククラウドサービスを、世界標準で提案できるようになる。基盤は、これでひとまず完成するとはいえますが、成長分野だけに、投資はこれからも継続します。

 研究開発にも投資するし、データセンターをお客さまの要望や需要の高まりにあわせてもっと増やしていかなくてはならない。いま90カ所のデータセンターがありますが、これが今年で95カ所になる。しかし、要望があれば、100にも、200にも増やしていかなくてはならないということになります。


――富士通のクラウドの強みは垂直統合型のビジネスモデルに尽きると。

 もうひとつ、富士通の強みを挙げるとすれば、お客さまとともに、ビジネスを拡大してきているため、なにをやりたいか、なにを提案したらいいのかをよく知っている。お客さまがどういうクラウドを使うと効率化できるか、価値を創出できるかを知っている。これも富士通が持つクラウドに対する強みです。

 クラウドは新しいテクノロジーです。すぐにはすべてが切り替わらないとしても、過去の新技術の変遷を見るとこの潮流がどんどん加速していくのは間違いありません。これがどんなスピードで展開していくのかは、お客さまのICT環境の進展や使い方によって変わる。ここに向けて、富士通は、いまのビジネスの継続性を保証しながら、お客さまと一緒になって取り組み、新たな提案していく考えです。

 重要なことは、富士通は、お客さまと一緒にビジネスをやってきたという経験です。これまで、さまざまな業種のお客さまにおいて実績を持っていますが、これは、お客さまとお客さまをコネクトする役割を担う、ということにもつながるのです。お客さま同士がつながっていきで、新たなビジネスを生む環境を確立していけることも、富士通ならではの特徴のひとつだといえます。

 富士通はなんの会社であるか。それは、ICTの会社であるということに尽きます。ある会社はITの会社であり、ある会社はCTの会社である。しかし、富士通はICTの会社なんです。富士通は75年の歴史によって、真のICTカンパニーとなり、その強みを最も発揮できるのがクラウドということになります。いままさに、そうした時代がやってきたのです。


――クラウドビジネスの事業規模はどれぐらいを見込んでいますか?

 これまで2010年度から2012年度までの3年間で、クラウドビジネスによる新規需要として、3000億円規模を想定していると言っていましたが、これは変えなくてはならないでしょうね。また、2012年度の売り上げ成長は一気に増加すると見ていますし、その成長がどの程度の勢いになるのかはなかなか予測がつかない。

 さらに、垂直統合モデルを前提としていますから、クラウドのなかに半導体のところまで入れてもいいのか、といった話も出てくる(笑)。具体的な数字は、なかなか算出しにくいが、大きな枠でとらえて、2015年度には少なくとも30%程度の構成比に引き上げなくてはならないと考えています。


発想の起点をグローバルに

――いま、富士通が持つ課題とはなんでしょうか。

 グローバルでいかに成功させるかが、いま富士通が抱える大きな課題だといえます。グローバルの売り上げを増やすことも大切ですが、日本にいる社員がもっとグローバル化していかなくてはならない。ここでいうグルーバル化とは、英語ができるできないではなく、すべての発想の起点をグローバルでとらえる必要があるということです。

 例えば、製品の開発や、製品のメンテナンスに至るまで、グローバルを常に意識する。競争相手はグローバルであり、お客さまもグローバルであると。製品の仕様はグローバルになっているか、サービスはグローバルマインドで考えられているか、物事を決めるにしても、それはグローバルに通用するのか、売れるのかということに立ち戻って議論しなくてはいけない。

 これを徹底していきたいですね。また、スピードとチャレンジの徹底も、明るい富士通、元気な富士通の源として、浸透させたい。


――富士通の1年後を評価する時にどこを見たらいいですか(笑)?

 会社の成績としては、営業利益や売り上げ、営業利益率といった指標もあるでしょう。また、株価も、富士通が元気になったかどうかの指標のひとつです。それと、大切なのは、富士通の社員にインタビューをした時に、元気なことを言っているかどうか、ということじゃないでしょうか(笑)。

 1年後に社員を通じて、元気な富士通、明るい富士通を感じてもらえることが、評価基準のひとつだと思っています。


関連情報
(大河原 克行)
2010/6/9 00:00