大河原克行のキーマンウォッチ
「保守サービス」から「ソリューション」への変革を実現~キヤノンS&S・神野明彦社長 (「特需の反動で収益が減った」は通用しない)
過去最高の経常利益を達成した要因を聞く
(2014/3/26 06:00)
「特需の反動で収益が減った」は通用しない
――2014年度の事業計画はどうなりますか。
今年度の事業計画のなかで重視したいのは、経常利益ですね。2013年度は、経常利益で31億円3000万円と30億円を突破し、過去最高を記録した。これをさらに更新したい。
2014年度は増収増益の計画とはしていますが、売上高の方向から数字を追うつもりはありません。MFP(マルチファンクションプリンタ)のTMG(カウンター保守)は、単価下落に伴ってマイナス成長となることが見込まれていますし、また、Windows XPのサポート終了に伴う需要の反動もありますから、ここで売上高を追うと、物販で無理な積み方をするしかなくなる。積めども積めども、さらに積まなくてはならないという可能性も出てくる。社員が疲れるような数字にはしたくない。
だが、収益性の向上は、知恵を使って、やり方を変え、コストダウンに取り組めば実現できる。収益が減ったということは通用しない。だからこそ、経常利益、営業利益を重視していきたいと考えています。
――Windows XPのサポート終了に伴う需要の反動はどれぐらい出てきますか。
4月以降、バタっと止まるというわけではないでしょうが、今年後半にはその反動が大きくなると考えています。
ただ、われわれの立場からいえば、「顧客攻略のツール」としての役割を担う製品がなくなるということの方が影響が大きい。Windows XPからの買い換えで、PCが売れたとしても利益はそれほど大きくはない。むしろ、Windows XPをきっかけにして、お客さまの課題について話し合うことができた点が大きかった。
Windows XPをきっかけにして、「セキュリティの課題はどうですか」、「バックアップについてはなにか対策を行われていますか」という提案ができた。また、新規顧客に対しても、「Windows XPをお使いですか?」といって入っていくことができた。
「Windows XPをどうしようか困っていてね」という話に加えて、「実はこんなことにも困っているんだ」という話も出てくることが多い。社員が兼務でサポートをしていたが、それじゃあ限界だからなんとかしてほしいというような話も出てくる。業種によっては、タブレットを利用した新たな利用提案などにもつながるわけです。
Windows XPに関する買い換え需要が終了することで、このきっかけがなくなることが痛い。ドアオープナーとしてのオールマイティなカードがなくなるわけですからね(笑)。これに代わる会話のきっかけとなる提案を行うためには、われわれが、これまで以上に幅広いソリューションを持っていなくてはならない。
また、細かいカスタマイズやキッティングにも対応できるようにしなくてはならない。Windows XP以外に、お客さまとつながるためのツールを2つ、3つ持つことが必要ですね。例えば、情報セキュリティはそのための重要なツールのひとつになります。
セキュリティという点では、ネットワークカメラによる監視ソリューションの提案、ペットや家畜などの見守りソリューションの提案なども活発化させたいと考えています。
――ソリューションの観点では、なにか新たな取り組みは考えていますか。
これまでのキヤノンMJグループではあまり手をつけていない市場領域があります。現時点では、詳細はあまりいえませんが、ここに成長戦略の柱を置いていきたい。ここを攻める切り口は複写機ではなく、もちろんITソリューションになります。独自のノウハウや付加価値を持って切り込んでいきたいと考えています。
また2015年度には、Windows Server 2003のサポート終了が控えていますし、クライアントPCだけで運用してきた企業が、大量のデータ運用に対して限界が生じ、仮想化を含めたサーバー利用に関心を寄せているという動きもあります。
中小企業向けにもクラウドサービスが浸透し、これもひとつの切り口になる。さらに、ITソリューションのビジネスの拡大に加えて、独自のIT保守サービスを拡大させていきたいですから、それに向けた陣容も強化していく必要があると考えています。まずは、中途採用も含めて、主要な拠点において体制を強化していきたいですね。
そして、オフィスにまつわる商品とサービスも新たなビジネスとして力を注ぎたいです。オフィスの内装や、アロマを活用した香りによる空間デザインサービスにも乗り出しています。ここにも当社ならではの新たな提案がある。
いま、社員には、iPhoneとUltrabookを持たせて、「IT二重武装化」を進めています。外出先から基幹システムに接続し、さまざまな情報を得たり、簡易見積書を作成したりといったことも可能になっている。
また、当社ではSalesforceを活用しているわけですが、お客さまへの訪問情報の入力も、いちいち営業所に戻って行うのではなく、外出先から行えるようになっている。社員同士や上司とのコミュニケーションもChatterを活用しながらモバイル環境で行えるようになっています。
これによって、お客さまのところに訪問する時間が増え、しかもその場で質の濃い商談ができるようになる。また余った時間は新規顧客開拓に使うことができる。
実際、訪問件数は増加傾向にありますし、訪問件数は2013年上期に比べて5割増になっています。月4万件の新規顧客訪問はもっと増やしていきたいですね。そこは社員に踏ん張ってもらいたいと思っています。そうした意味でも、2014年度は重要な1年になると考えています。