大河原克行のキーマンウォッチ
「保守サービス」から「ソリューション」への変革を実現~キヤノンS&S・神野明彦社長 (競合から脅威に思われることも評価のひとつ)
過去最高の経常利益を達成した要因を聞く
(2014/3/26 06:00)
競合から脅威に思われることも評価のひとつ
――キヤノンS&Sにとって、2014年度はどんな1年になりますか。
私は、社長就任時に、「エクセレントカンパニーを目指す」ということを掲げました。キヤノンS&Sは、もともと予算必達型の企業です。誤解を恐れずにいえば、自分たちが予算を達成することに大きな価値を感じていたところがあった。
だが、これにこだわりすぎると、小さな予算を掲げて、それを超えれば評価されるだろう、というようなつまらない声も出てくる。それで本当にいいのか。予算達成だけを求めていてはエクセレントカンパニーにはなれません。マーケットと相対したときに、マーケットからどう評価されるかが大切です。今年はその点を社員に対して、徹底していきたい。
確かにキヤノンMJグループのなかではいい業績をあげ、キヤノンS&Sはよくやったと言われている。だが、それは「親せきのおじさん」から褒められているようなものじゃないですか(笑)。それに満足していてはだめなんですよ。マーケットから褒められる存在になること、そして、競合から脅威に思われることも評価のひとつだと思うんです。そこに力を注ぎたい。
――エクセレントカンパニーの構成要素はなんでしょうか。
キヤノンS&Sが目指すエクセレントカンパニーとは、「事業品質」と「業績の拡大」の2つで構成されます。
「事業品質」とは、顧客満足度であったり、営業品質やサービス品質などを含めた事業にかかわるすべての品質をあげていくということです。
もうひとつの「業績拡大」は、営業利益率を高める、在庫回転率をあげるといったようなさまざまな指標がありますが、実は、ここでは具体的な目標数値は掲げていません。それは、市場環境は刻一刻と変化をしていくからです。もちろん目指すべきマイルストーンはあります。だが、エクセレントカンパニーとしての数字ははるか先にある。頂上ではなくて、まずは6合目の山小屋を目指そうと(笑)。目標は常に出すが、それはローリングしていくことになります。
最初の数値目標を出すのは今年の後半ということになりそうですね。Windows XPのサポート終了や、消費増税前の駆け込み需要の反動もありますから、いま数字を出すと経営のわがままでしかなくなる。状況をしっかりととらえた上で、良ければ良いなりに、悪ければ悪いなりに、数値目標を出していきたいですね。
また、その一方で、エクセレントカンパニーの実現に向けた経営の着眼点として、5つの項目をあげました。これは、社員が事業品質と業績の拡大に取り組む一方で、経営層はなにをするのかということを示したものです。
「わかりやすい方針を明示すること」、「働きやすい環境を実現すること」、「公平な評価を目指すこと」、「徹底した実力主義を採用すること」、そして、「モチベーションの維持を図ること」が、その5つの項目です。「事業品質」と「業績の拡大」、それに「経営の努力」の3つが組み合わさることでエクセレントカンパニーを実現することになります。