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「デバイスとサービス」に向け脱皮? Microsoftの意外な好決算

 Microsoftが好調だ。最新の四半期決算では増収増益を発表して、PC市場の低迷、さらには業務ソフトウェアの低成長時代に入る中、同社の将来に対する不安を吹き飛ばすかのようだ。しかも同四半期に世界のPC出荷台数が過去最大の減少率を記録した一方でのこと。不振と言われたWindows 8の効果なのか、非PCへの改革が奏功したのか――。

全部門で売り上げアップ

 Microsoftが4月24日に報告した会計年度2013年第3四半期(2014年1月-3月期)業績は、売上高が前年同期比18%増の204億8900万ドル、純利益は同19%増の60億5500万ドルとなった。1株当たり利益は72セント。事前のアナリスト予測では、売り上げは205億ドル、1株当たり利益は68セントで、予測を上回る好決算である。

 部門ごとに見ると、軒並み売り上げが増えている。Windows部門は23%増の57億ドル、「Office」を含むビジネス部門は8%増の63億1900万ドル、「Windows Server」「Windows Azure」「SQL Server」それに開発ツールなどで構成されるサーバー&ツール部門は11%増の50億3900万ドル。「Xbox」「Windows Phone」「Skype」などのエンターテインメント&デバイス部門は56%増の25億3100万ドル、そして「Bing」やネット広告などのオンラインサービス部門は18%増の8億3200万ドルだった。オンラインサービス部門で2億6200万ドルの営業損失を計上しているものの、売り上げだけなら全部門で増収を記録している。

 Bloombergは、堅調なMicrosoftの決算の背景に、厳しいコスト対策、好調なOfficeがPCの売り上げ減を埋め合わせたと分析している。UBSのアナリストはコスト対策による効果に触れながらも、「金融街はMicrosoftはPC企業と思っているが、PC以上のものを持っている。PC市場の縮小を補う戦略が機能していることは明らかだ」とコメントしている。MicrosoftのCFO、Peter Klein氏自身も「Windows以外の製品はまだまだ成長する可能性がある」と述べているという。なお、Klein氏は業績報告時に、6月末で退職することを明らかにしている。

好調な分野はどこか

 Microsoftの将来に向けられる厳しい目の背景には、同社が強いとされている市場の減速がある。

 PCでは、GartnerやIDCなどから市場縮小を裏付けるデータが出ている。例えばIDCが4月前半に出した2013年第1四半期(1月-3月期)の報告書では、出荷台数は前年同期比13.9%減少の7630万台となった。最大の要因はタブレット、それに大型化するスマートフォンなどの新しいモバイル端末の浸食だが、昨年秋に登場した「Windows 8」についても「弱い受け入れ」と評している。業務ソフトウェアについても、IDCは第1四半期の成長率を3.6%と発表した。これはここ数年の成長率の半分のレベルであり、「保守的な成長期に入った」とした。

 しかし、Microsoftの決算報告でWindows部門は23%増加している。Windowsの売り上げは横ばいで推移していると報告しており、PC市場は縮小していても、ほかの形でWindows部門が売り上げを出していることになる。

 Microsoftは、PCメーカーが支払うWindowsライセンスのほかに、企業のボリュームライセンス、個人ユーザーのアップグレードライセンスなどを売り上げ源としている。Windows部門の決算を詳しく分析したGuardianによると、この分野(OEM外からの売り上げ)は同期に40%成長したという。1年後に迫った「Windows XP」サポート終了なども後押ししたようだ。CFOのKlein氏は2014年も同じような売り上げ増が望めるのかという質問に対し、買い替えサイクルなどが後押しする、と楽観的だったという。

 Gurdianが「延命」効果を示唆した一方で、Microsoftの新戦略が軌道に乗り始めたと見るメディアもある。

 CEOのSteve Ballmer氏は2012年秋に公開した株主あての書簡で、「デバイスとサービス」企業を目指すことを打ち出した。この時期、MicrosoftはSurfaceで本格的なハードウェア事業参入を果たしたところだった。Surfaceが単発的な製品ではなく同社の長期的な方向であることを示した形だ。

 Windows ITProは、デバイスとサービスのそれぞれが軌道に乗り始めたと見ている。デバイスでは、SurfaceはPC市場縮小に代わる製品として成果が出始めており、サービスでは営業損失が縮小したことを指摘する。2011年の四半期には8億ドル単位での損失額だったのが、今期は2億ドル台に縮小している。着実にビジネスとして成果を上げているというのだ。

 一方、Forbesは、サーバー&ツール部門に着目する。Windows Serverなどのサーバー製品と開発ツールと、コンサル事業を抱える同部門は、今期だけでなくコンスタントに2ケタ成長を遂げており、粗利益率は40%に達している成長分野だという。

 中でも長期的に重要なAzureについては、次世代への“架け橋”になると見る。「OSがデバイスに性能をもたらす現在のパラダイムから、次のデジタルパラダイムへの唯一の架け橋になる。ここではデバイスは、クラウドを経由するビックデータとAI(人工知能)のプラットフォームになるのだ」と予想する。

 Microsoftというと、過去の独占的事業であるWindows OSやOfficeを新しい時代に即したものに改良しようとする一方で、BingやXbox、それにSurfaceタブレットなど新規事業で拡大を図るという並行戦略に目が奪われがちだ。しかし、Forbesは、Microsoftが別の成長分野を確立しており、将来への準備中と見る。

Ballmer氏は続投すべきか、退くべきか

 コンピューターの中心が、PCからモバイルデバイスになり、クラウドモデルに移行していることは明らかだ。Microsoftも、この方向に沿って進まねばならない中、旧モデルでMicrosoftを引っ張ってきたBallmer氏が引き続きリーダーにふさわしいかとの議論も浮上している。Ballmer氏がCEOに就任して、もう13年になる。

 BBCはBallmer氏のCEO続投に反対する元同社幹部(元OS販売担当シニアヴァイスプレジデント)と、トップ交代を急ぐ必要はないというアナリスト、と両方の意見を紹介している。元幹部が反対する理由は、Microsoftはソフトウェア企業であり、デバイスメーカーではない、と見るからだ。SurfaceによりHewlett-Packardなどの提携企業がタブレットでAndroidを選ぶなど関係にひびが入ったこと、OfficeをiOSやAndroid向けに展開していないことなどの“ミス”も指摘した。

 一方で、続投を支持するアナリストは、KinectやXboxの好調、買収戦略、ビジネス向け事業の拡大などを通じて業績を維持している点を評価している。

 とはいえ、これだけでMicrosoftが新しい時代に対応できているのかを判断するのは早計だろう。決算報告では、Surfaceの出荷台数も公表しておらず、苦戦が続く「Windows Phone」にも言及していない。ただ、好決算で、Ballmer氏の退任を求める声は沈静化するだろう。

(岡田陽子=Infostand)