“最後のWindows”ついに発売 「1つ時代の終わり」迎える?



 5年ぶりのWindowsの新バージョン「Windows Vista」の一般販売がついに始まった。Microsoftは、何としてでもVistaを成功させようと必死だ。開発の遅れによるたびたびのリリース延期と機能縮小でミソをつけた感のあるVistaだが、どう盛り返すのか―。Windows Vistaのローンチをめぐる動きをみる。

 発売前夜の29日、ニューヨークで大規模なローンチイベントが開催された。「世界経済フォーラム」参加のため訪れていたスイス・ダボスから駆けつけたBill Gates会長は、ここでVistaの発売を宣言。すぐ英ロンドンに飛んで、現地のイベントにも顔を出した。1年半後にチーフソフトウェアアーキテクト職を退くことが決まっているGates氏にとって、これが“最後のWindows”になるだろう。

 米Gartnerは年末に発表した「2007年 ITの10の予測」で、「VistaはWindows最後のメジャーリリースとなる」と予想している。同社のアナリストによると、次世代のOS環境は、よりモジュール構造を持ったものとなり、従来のようなモノリシックな構造のソフトウェアの時代が終わりつつあるという。Windowsも今後、柔軟なアップデートを採用することになるというのである。

 この5年の間にソフトウェア業界は大きく変わり、米Googleや米Salesforce.comに代表されるSaaSの波が押し寄せている。インターネット経由でアプリケーションを配信するSaaSでは、OSは入り口でしかない。従来のようなOSに機能を詰め込むアプローチは転換を迫られている。

 英Financial Times紙は、「VistaはMicrosoftの1つの時代の終わりを告げる」(Vista marks end of an era for Microsoft)というタイトルでVistaのローンチを報じた。このなかで、Michael Cusumano・マサチューセッツ工科大学教授の「Windowsで提供しているものと、Windows Liveで提供するものとの間でシフトが起こる」というコメントを紹介している。


 一方、目前の問題を指摘するメディアも多い。ハードウェア要件が高まり、旧型のグラフィックカードではVistaが使えないという問題だ。ユーザーは結局、Vistaをプリインストールした新しいPCへの買い替えを選ぶことになるというのである。

 英BBCは、Vista、Mac OS、Linuxの読者レビューを実施。これに参加したオーストラリアのVistaベータテスターは、Vistaの機能を絶賛しながらも、それをフル活用するには最新のハードウェアが必要だと指摘している。

 欧州を中心に活動する環境政党の緑の党は29日に発表した声明で、Vistaは旧型のPCで使えず、従来よりエネルギーを食うため「環境に優しくない」と非難した。「将来、考古学者は“Vistaアップグレード層”として捨てられたPCの山を発見することだろう」と皮肉っている。なお、同党はオープンソースソフトを旧型PCで代替にするよう推奨している。

 また、米PC World誌は、ハードウェア要件のほかにも、互換性、価格、Microsoft自身のWindows XPのサポート延長などの点から、「Vistaをいま買う必要はない」とする主張を展開した。同誌は、WindowsユーザーがMac OSに移行するチャンスになるとも述べている。Appleは今秋、Mac OSのアップグレードを予定している。

 辛口の切り口で知られるIT情報サイトの英The Inquirerも同様の見方だ。「Appleよ、チャンスの波に乗れ」(Apple, take a chance)という記事で、VistaがAppleにとって追い風になるとした。

 MicrosoftはVistaで「Windows 95」の5倍、XPの2倍の売り上げを目指している。また、Microsoftが築いたエコシステムに依存するパートナー企業の期待も大きい。米IDCは、Microsoftがソフトウェア/ハードウェアベンダーと築いているエコシステム全体で、Vista関連の2007年の製品・サービスの売り上げが700億ドルになると試算している。

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(岡田陽子=Infostand)
2007/2/5 10:49