Javaをオープンソース化 だが「いつ」「どうやって」



 米Sun Microsystemsが、Javaのオープンソース化を宣言した。長らく開発者の期待を集めてきた一歩だが、アナリストからは必ずしも評価は得られていない。トップ交代したSunだが、なかなか一気に変わることは難しいようだ。


 「問題は、われわれがJavaをオープンソース化するか否か、ではなく、『どうやって』かだ」。

 5月16日(米国時間)、米サンフランシスコで開催されたJava開発者会議「JavaOne」のオープニングを飾る基調講演で、ソフトウェア部門副社長のRich Green氏は、こう述べた。Green氏を壇上に招いたJonathan Schwartz CEOも、同じ言葉を繰り返して、Javaのオープンソース化を正式に表明した。会場からは歓声があがった。

 Sunは、ますますオープンソースへの傾倒を強めている、今年のJavaOneでは、このほか、(1)Javaと.NetのWebサービス相互運用性を推進するWebサービス技術「Web Services Interoperability Technology」(WSIT)のオープンソース化、(2)LinuxディストリビューションとOpen Solarisで、Java SE 5.0を再配布するための新しいライセンス「DLJ」(Operating System Distributor's License for Java)―などが発表された。

 Javaのオープンソース化は、このなかの目玉であり、新CEOに就任したばかりのSchwartz氏が、初めて臨んだ公式の場での“手みやげ”ともとれる。

 だが、その内容は、いまのところ具体性に乏しい。

 米CNETなどによると、基調講演のあと、そろって会見に臨んだSchwartz、Greenの両氏は、実際のJavaオープンソース化のスケジュールやバージョンなどを明らかにしなかったという。

 このなかで、Schwartz氏は「Sunは、ソフトウェアの互換性を確保するという、相当な難題に依然として直面している」と述べ、今の段階では、Javaのオープンソース化を約束したという形になっている。OSI認定のライセンスに基づいて公開する考えを示したが、時期については「早くなるよう努力する」(Schwartz氏)と述べるにとどまったという。


 Sunは厳しい経営環境で、Javaという資産を収入に結びつけていくことを迫られている。

 翌17日に開かれた米Gartnerのシンポジウム「ITxpo」で、「Javaをオープンソース化して、どう収益をあげるのか」とアナリストに質問されたSchwartz氏は、Open Solarisの例をあげ、「今、われわれの目の前にある成功へ先行指標は、開発者と顧客が戻ってきているということだ。これこそが、われわれの前に大きな市場機会があることの証明になる」と述べ、開発者を呼び込むことが第一であるという認識を改めて示した。

 Sunの将来がソフトやハードの販売ではなく、サービスと基幹技術ツールにかかっているという同氏の従来の主張に沿ったものだ。

 Javaのオープンソース化は、ここ数年来、ずっと話題になってきた。とくに大きく盛り上がったのは。2年前のJavaOneの時である。一部メディアでSunがJavaをオープンソース化すると報じられたが、Sunは社内議論が続いているとして、これを否定した。最大のネックは、やはり互換性の確保だ、との説明だった。

 この時、Eric Raymond氏や、IBMエマージングテクノロジー担当副社長のRod Smith氏がSunに公開書簡を送ってJavaのオープンソース化を迫っていたということもあり、動向が注視されていた。

 それから1年後の昨年のJavaOneでは流れが変わり、Schwartz氏が「Sunが持つソフトウェア資産を可能な限りオープンソース化する」と表明した。その後、Sunは確実にオープンソース化に向けて動いている。が、その歩みは、決して迅速とは言えない。

 今回のJavaオープンソース化はエポックのはずなのだが、肝心の「どうやって」、「いつ」という答えがないため、インパクトの弱いものになってしまった。「せっかくのチャンスを生かしていない」という厳しい見方もある。

 2年前、オープンソース化推進の立場で積極的に発言したITアナリストのJames Governor氏は、17日のブログに「Sunはチャンスを台無しにしたのか?」という題で次のように書いている。

 「JavaOneでのJavaのオープンソース化ができなかったことで、Schwartz氏は自ら述べたJavaをユニバーサルにするという目標を台無しにしてしまった」「Sunは方向転換しようとしている巨大な船で、Schwartz氏が可能な限り早くかじを切ろうとしていると信じる」「だが、その真っ正面にはなお氷山が待っているのだ」。

 相当な、いらだちのようである。

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(行宮翔太=Infostand)
2006/5/22 09:04