Microsoft、OSSとの相互運用性確保に乗り出す



 Microsoftとオープンソースソフト(OSS)と言われると、“競合”“対立”さらには“敵対”といった言葉が浮かぶことが多いだろう。だが、Microsoftは、「Microsoft Open Source Lab」という研究所の下でOSSとの相互運用性の検証などに取り組んでいる。4月6日に一般にオープンした同ラボのブログサイト「Port 25」で公開されている情報をもとに、このラボの取り組みと狙いを探る。


 Microsoft Open Source Labは、Microsoftが米ワシントン州シアトルの本社敷地内に設置したオープンソースソフトウェア専門の研究所だ。ここには、Gentoo Linuxの創始者、Daniel Robbins氏をはじめとするトップレベルのオープンソース開発者が勤務してきた(Robbins氏は2005年12月で退社)。設備面でも、米Dell、米Sun Microsystemsなど300台以上のサーバーの上で15種以上のUNIXバージョン、30種以上のLinuxディストリビューションが動いているという。「世界でも有数のオープンソースラボ」とPort 25は説明している。

 このラボを率いているのが、プラットフォーム戦略担当リードプログラムマネージャのBill Hilf氏だ。Hilf氏は2004年にMicrosoftに入社し、このラボの立ち上げと運営、Microsoftのオープンソース戦略を統括している。それ以前は米IBMでLinux担当上級アーキテクトを務めていた。

 Hilf氏の説明によると、Microsoftがこのラボを設立した目的は、「オープンソースの世界を理解すること」と「Microsoft製品と各種OSSとの相互運用性の確保」―の2つだという。

 たとえば、先にリリースした「Windows Server 2003 R2」では、Network File Systems(NFS)やNetwork Information Service(NIS)などのUNIXベースの機能の検証のほか、データセンターでの他のオープンソースソフトウェアとの相互運用性を調べた。また、「Microsoft Systems Management Server」や「Microsoft Operations Manager」を利用する顧客向けに、LinuxやUNIXを搭載したサーバーも管理したい場合はどのサードパーティのツールが適しているかの検証なども行っているという。

 ラボではさまざまな組み合わせや状況を想定したテストができることから、「このラボを通過したMicrosoft製品は、90%程度の確率で、UNIX、Linux、OSSとの相互運用性を確保できる」としている。


 Hilf氏はPort 25の開設にあわせ、4月6日、米ボストン州で開催されたLinuxイベント「LinuxWorld&Expo 2006」で基調講演を行った。そこでは、MicrosoftがOSSとの相互運用性を重視していることについて語ったという。Port 25でも、「Microsoftはアンチオープンソースと考えられているが、実際には白黒はっきりできるものではない」と述べ、オープンソースへの歩み寄りを見せている。そして、「Windowsもオープンソースソフトウェアも共存する。競合するソフトウェアとでも、相互運用性を検証し、分析しておくことは重要だ」としている。

 この「相互運用性」は、同社が欧州連合(EU)と3年以上繰り広げている独占禁止法違反のキーワードでもある。EUはMicrosoftの示す是正措置順守のための対応策を何度も「不十分」とし、一貫して厳しい姿勢を示している。また、Microsoftは「Shared Source Initiative」などを展開してきたが、これらの取り組みが開発者から高い評価を受けているとは言い難い。

 Port 25という名前の由来は、電子メールの送受信に使われるプロトコル、SMTPのポート番号だ。それが示す通り、外部への扉を開き、提案を受け入れる場所となることを目指すようだ。コミュニティ活動を強化したいMicrosoftにしてみれば、このPort 25をコミュニケーションチャネルとしてうまく軌道に乗せたいところだ。エントリーをみると、ラボの紹介のほか、「ラボの管理について、SMSとの混在環境」などのタイトルが並んでおり、コメントも集まっているようだ。

 Port 25のスタッフ自身はこのラボを「Microsoftの海に浮かぶオープンソースの泡」と呼んでいる。泡が波を起こすことができるのか、注目したい。

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(岡田陽子=Infostand)
2006/4/17 08:51