オープンソースライセンスのGPL、14年ぶりに改定へ



 現在のオープンソースを支える最も重要な基盤となっているライセンス「GPL」(The GNU General Public License)が改定される。14年ぶりの改定となるバージョン3では、知的所有権問題や国際化など、ソフトウェア業界の発達・変化を反映し、今日にふさわしい内容を目指す。最新版は2007年春に登場する予定だ。


 GPLは、Linuxカーネルをはじめ、最もよく利用されているオープンソースライセンスだ。そのGPLを1985年に起草したRichard M. Stallman氏が設立し、フリーソフトウェアとGPLの普及促進を目指す非営利団体Free Software Foundation(FSF)は11月30日、「GPL Version 3(GPLv3)」の改定作業ガイドラインを発表した。今回の改定作業は、オープンソース分野を専門に法的問題を取り扱うSoftware Freedom Law Center(SFLC)と共同で行い、これまでとは異なり、全員参加型のオープンプロセスをとる。

 Stallmann氏が現在のバージョン2を発表したのは1991年のことだ。当時と比べるとソフトウェア業界は拡大し、取り巻く環境も変わった。Linuxの躍進が他のオープンソースソフトウェアにもスポットライトを当て、現在、オープンソースは技術者・開発者だけでなく、さまざまなに人に広く関係するようになっている。また、オープンソースが利用される範囲も、携帯電話からスーパーコンピュータまで広がっている。Webサービスなどの登場により、ソフトウェアの提供方法も多様化している。


 このようにオープンソース・ソフトの用途が広がるにつれ、現行のGPLでは対処しきれない問題が生まれてきた。たとえば、国際化がある。米国の法律のみを参照した現在のGPLでは、各国で異なる著作権法や特許法に対応するには不十分だ。また、再配布の際に全ソースコードを提供しなければならないとするGPLを好まない企業ユーザーもいるし、GPLでライセンスされたソフトとGPL以外のライセンスを利用したソフトを組み合わせる場合はどうするのかというライセンス間の互換性の問題もある。これらが間接的に、GPL離れやライセンスの種類の増加につながっている。

 FSFとSELCでは、今回の改定のポイントとして、国際化への対応、既存ライセンスで保障されている自由の維持、なるべく多くの課題に対応できる内容とする、などの点を挙げている。また、米CNet Networksの報道によると、対ソフトウェア特許条項、著作権制限技術を用いた企業に対する罰則条項などが盛り込まれるという。

 FSFは今回、誰もが改定プロセスに参加し、意見を述べることができるオープンプロセスをとることで、これらのポイントを満たし、ユーザーの声に応える意向だ。これは、GPLはもちろん、オープンソースライセンスでも珍しい試みとなる。SFLCと共同で発表した報道資料によると、最大の目標は、「すべてのユーザーが関与する問題を認識すること」で、「ベストプラクティスに近いもの」を目指すという。パブリックコメントを吸収し、最終的に作成するのは、Stallmann氏とSFLC所長のEben Moglen氏となる。


 今後のステップとしては、2006年1月16~17日に米マサチューセッツ工科大学(MIT)でFSFが開催する「International Conference」で、最初のドラフトを発表する。その後、最低でも2回ディスカッションドラフトを発表して意見を募る。最後のディスカッションドラフトの発表は2006年10月で、その後は最新のドラフトをもとにラストコールドラフトを作成する。これがコメントを出す最後のチャンスとなり、最低45日間コメントを受け付ける。FSFではこの時期を「遅くても2007年1月15日まで」としている。最終的には、正式版のGPL v3は、2007年3月、早ければ1月に登場することになる。FSFでは現在、専用のWebサイトを立ち上げ、個人開発者から企業、政府まで幅広い参加を呼びかけている。

 オープンソースのすそ野が広がるにつれ、当初のStallmann氏の哲学は以前ほどの強力な力を持たなくなっている。まる1年を費やして改定されるGPLが、開発者にとって魅力あるライセンスとなるかどうかが注目される。

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(岡田陽子=Infostand)
2005/12/19 08:59