「Longhorn」vs「Tiger」 模倣はどっちか?



 次期OSをめぐってMicrosoftとApple Computerが火花を散らしている。Microsoftのプラットフォーム部門担当副社長Jim Allchin氏と、AppleのCEO、Steve Jobs氏が、互いに相手の次期製品が自社の製品を模倣したものだとアピールしている。問題になっている最新機能は「デスクトップ検索」のようだ。

 「彼らは臆面もなくわれわれのまねをしている」。Jobs氏は4月21日に開催されたAppleの年次株主総会の席上、こう述べて次期Windowsの「Longhorn」が、「Mac OS X 10.4」(Tiger)を模倣したと決めつけた。

 両OSは、その概要が明らかになるにつれ、機能が似ているという指摘をコンピュータメディアから受けている。Jobs氏の発言は、これを取り上げた株主の質問に答えたものだ。さらにJobs氏は、Longhornのリリースが来年の予定になることをあげ、「彼らは素早くまねすることさえできない」と皮肉った。

 その前の週、Allchin氏も両OSの類似の話に触れ、「MicrosoftがAppleのまねをしているのではなく、逆に、AppleがMicrosoftのコピーをしているのだ」と発言している。Allchin氏は「Microsoftが2003年に最初にLonghornの要素を公開したのに対し、Appleが10.4(Tiger)を初めて公表したのは約1年前のことだ」と述べ、Longhornこそが“元祖”であると強調した。


 Longhornは、2003年10月に初めて紹介され、その後1年あまりの間にさまざまな変更が行われてきた。4月15日、米国で報道関係者を対象としたデモが行われ、最新情報が公開された。Mac OSとの類似の話は、そのなかでクローズアップされたものだ。

 Longhornについては以前から、GUIの半透明ウィンドウや動きが、Mac OS Xのユーザーインターフェイスに似ているという指摘があった。だが、今回注目を集めたのは検索機能の「quick search pane」だ。これがTigerの目玉である検索機能「Spotlight」に非常によく似ているというのである。動作をデモして見せたことから、とくに外観の類似に注目が集まったようだ。

 「quick search pane」ではウィンドウに瞬時に候補が表示され、1文字打ちこむごと絞り込みが進む。また検索結果はフォルダに保存して置いておける。該当するファイルがあれば、自動的にフォルダに追加されてゆくという。こうした機能はSpotlightでも同じだ。Spotlightでは、検索結果を保存するフォルダを「SmartFolder」と呼んでいる。

 両OSの新しい検索機能は「HDDのなかにある情報をくまなく探して、ほしいものを瞬時に示す」ことを目的としている。Spotlightは、コンタクト情報、画像、カレンダー、アプリケーションまでを対象とする。quick search paneも詳細はまだ明らかでないが、かなりの種類の検索ができると考えられる。Allchin氏はTigerを評して「さまざまな場所を検索する機能を備えており、その点でよくできたOSだ。しかし、Longhornではもっと多くの場所の検索ができる」と述べている。


 こうしたデスクトップ検索機能は、もともとサーチエンジン企業によって脚光を浴びたものだ。Google、Yahooなどがデスクトップ検索ソフトを提供して争っており、Microsoft自身もMSNサーチで戦いに参戦している。

 しかし、デスクトップ検索でWebとローカルディスクをシームレスに検索するツールが、OSとは別に存在することになれば、OSの相対的重要性は低下する。OSベンダーとしては、それは困るわけだ。MicrosoftもAppleも最高のデスクトップ検索をOSの標準機能として取り込もうとするのは、必然だろう。

 両OSの新機能は、外部ツールに侵食されてきた分野を取り戻すためのものだといえる。デスクトップ検索の争いはユーザーインターフェイスの覇権争いでもある。

 とこかくTigerは4月29日発売で、Longhornよりも大きく先行する。Longhornは2006年のリリース予定だが、いまだ全貌を現してはいない。現在のスケジュールでは今夏に最初のベータ版が出荷される予定で、これに先だって4月25日から始まる「WinHEC」(Windows Hardware Engineering Conference)では、さらに詳細が明らかにされるという。

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(行宮翔太=Infostand)
2005/4/25 10:21