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「データセンターに電力が届かない」 Amazonが電力会社と対立

データセンターの電力確保は国家戦略に

 Goldman Sachsの予測では、米国内のデータセンターの全電力使用量は2022年の約3%から、2030年には8%へと増加する見込みだ。また、Gartnerは2024年11月の予測で、「2027年までにAIデータセンターの40%が電力不足により制限される」と警告している。

 テック大手は、既存の電力網だけでは賄えないと判断して、それぞれ独自の電力源確保にも力を入れている。

 Microsoftは、ペンシルベニア州のスリーマイル島原発を再稼働させる契約を発表した。AmazonはX-energyおよびEnergy Northwestへの出資を通じてSMR(小型モジュール炉)を開発すると表明。Googleも10月、NextEraと提携して2020年に閉鎖されたアイオワ州の原発を再稼働させると発表している。

 連邦政府も対応し始めた。Trump大統領は10月31日、AIデータセンターへの電力供給体制を国家戦略に格上げして、原子力発電の再稼働・拡張を促す大統領令に署名した。Reutersによると、現在の米国の原子力発電容量は約100ギガワットだが、2050年までに400ギガワットにまで拡張する計画だ。

 米国とAI覇権を争う中国でも、データセンター向け電源を重視している。11月23日付のFinancial Timesは、中国政府が、国内テクノロジー企業のエネルギー料金削減を支援するため補助金を引き上げたと報じた。中国内の大規模データセンターの一部では電力料金を最大で半減するという。

 AIやクラウドなど次世代産業を支える電力は、今や「公共財」から、企業間・国家間で争奪戦が繰り広げられる「戦略資源」になりつつある。オレゴン州で起きたテック企業と電力会社の対立、そして住民とのあつれきのような問題は、今後も続きそうだ。