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エコで涼しい海中データセンター Microsoftの「Project Natcik」

 世界中のクラウド事業者の大きな悩みの種がデータセンターの熱対策だ。サーバー群の発熱、排熱、冷却のあらゆる角度から工夫と研究が行われているが、そんな中で、Microsoftは海中にデータセンターを構築するプロジェクトを進めていることを明らかにした。同社の「Project Natcik」は、100日間の海中での実験を終えており、その成果と今後の課題を報告している。奇想天外なようだが、メリットは非常に多いという。

デスクトップ300台分の処理能力をもつデータセンターを海中に構築

 Project NatickはプロジェクトのWebサイトによると、「海中でのデータセンターの構築と運用のためのリサーチプロジェクト」で、「実装にあたってのメリットと課題を理解することを目指す」としている。

 きっかけは3年前の2013年2月。米海軍で勤務経験のある社員が提出した論文だった。再生可能な海洋エネルギーを利用する海中データセンターの構想を提案したもので、2014年夏にProject NatickとしてMicrosoft Research内で正式に発足したという。

 最初のプロトタイプは、XBoxの人気ゲーム「Halo」のキャラクターの名をとって「Leona Philpot」とした。2015年8月にカリフォルニア湾岸から1kmの沖、海底約9メートルに白色の銅管を沈めた。銅管の直径は約2.5メートル。両側を金属板と大きなボルトで封印し、中にはデスクトップ約300台分に相当する能力をもつコンピューターラックを収めた。重さは約3万8000ポンド(約17トン)だ。

 システムには、発生する熱対策として超低温の加圧窒素を注入し、周囲は熱交換器で覆って、水圧、湿度などを計測する100以上のセンサーを取り付けた。

 研究チームは105日後にLeona Philpotを引き揚げ、現在、本社に戻して修理や分析をしているところだという。実験にあたって懸念されていた水漏れやシステムダウンなどはなく、New York Timesは「予想を上回る成功」と伝えている。

(岡田陽子=Infostand)