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ISへの宣戦布告 Anonymousの“サイバー戦争”

変化する匿名ハッカー集団

 国際関係評論誌のForeign Policyは「Anonymous対イスラム国」というタイトルで分析。これまで欧米などの政府にとってはやっかいな存在だったAnonymousだが、今回のISに対するオペレーションについては「これは新しい局面だ」と評価する。

 Anonymousの歴史は10年程度だ。これまで「現実世界の戦争でどちらかを支持するのではなく、悪さをすることを目的に生まれた地下のWebフォーラム」だったのが、2008年のサイエントロジーへの攻撃から政治的要素が強まっていると指摘する。

 同じくAnonymousの変遷をレポートしたSC Magazineは、パリのテロ事件は「感情で動く若い“Anonymous”を大勢生み出した。だがサイバー調査は感情主導であってはならない」と警告するセキュリティブロガーOlivier Laurelli氏の意見を紹介。そしてサイエントロジーに対する攻撃が成功したのは「ターゲットを熟知しているハックティビストが展開する長期的なキャンペーン」だったから、と対比させた。

 Laurelli氏はこれに加えて、活動が別の危険もはらんでいると警告する。すなわちAnonymousのような拡散的な組織は、テロリストに同情する人や、逆にイスラム教徒や移民を排斥しようとする極右活動家にハイジャックされかねないというのだ。

 Foreign PolicyはAnonymousのISへのサイバー攻撃がどれくらい重要かについては、「インターネット上の戦争は小さい。Twitterアカウントを閉鎖し、Webサイトの数を減らし、職業ではない戦闘員を識別することは、ISを撲滅することにはならない」とする。だが同時に「その必要はない」とも言う。「ISに反対するデジタルキャンペーンのポイントは、後退させることにある」からだ。

 11月26日には、GhostSecがダークWebにあるIS関連のサイトを乗っ取り、バイアグラの広告を表示させたと報じられた。International Business Timesによると、このサイトはパリの攻撃を行った過激派グループのメインのWebサイトのミラーサイトで、グループの公式メディアのAl-Hayat Media Centerのテキスト、動画、写真などを掲載していたとのことだ。

岡田陽子=Infostand